益田裕介著『精神科医の本音』(SB新書591、2022年8月15日SBクリエイティブ株式会社発行)を読んだ。
裏表紙にはこうある。
患者が知らない精神科医療の裏側を明かす!
精神科・心療内科に通うことは、もはや珍しくない時代になった一方で、何かと批判を受ける「精神科医療」。その根源には。「こころの病」を治療するというわかりにくさがある。「なぜ診断が変わるのか」「なぜ診察が短いのか」「薬やカウンセリングに効果はあるのか」……
現役精神科医が、建前抜きの本音で、精神科医療の現実を伝える。
精神科医師は「弱っている人に寄り添うのが大切」などいうくせに、ろくに話も聞かず、抱きしめもせず、診療は5分で終わる。などなどわかりにくい精神科治療の理解を少しでも進めようとする本。
私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め、 最大は五つ星)
題名に「本音」とあるが、暴露本でもなく、裏話でもなく、精神科医の正直な想いが書かれている、ごく常識的な本。本当は患者さんにこう言いたいが、制約のある医師としては冷たく聞こえても、こう言わざると得ないのだというたぐいの話が並ぶ。
あらためて精神科について、全般的にざっと眺める機会になる。
益田裕介(ますだ・ゆうすけ)
早稲田メンタルクリニック院長。精神保健指定医、精神科専門医・指導医。
防衛医大卒。防衛医大病院、自衛隊中央病院、自衛隊仙台病院(復職センター兼務)、埼玉県立精神神経医療センター、薫風会山田病院などを経て、早稲田メンタルクリニックを開業。
一般向けに、わかりやすく、精神科診療について解説するYouTubeチャンネル「精神科医がこころの病気を解説するCh」を運営し、登録者数は20万人を超える。
以下、私のメモ
・現代の医学レベルでは、うつ病の正確な診断は困難であり、最善策の仮置きの診断基準の9項目中5個の症状があればうつ病と診断される。
・ストレスが原因で抑うつ状態になることを「適応障害」と呼び、ストレスから解放されれば症状が回復する。
・うつ病はストレスが関連するかもしれないが、脳の病気であり、ストレスから離れてもすぐには回復しない。また、発症から5年以内に再発する可能性は40%以上といわれる。
・ストレスのもとになった問題や原因の一つ一つを解決し、レジリエンス(問題に屈服しない力)を、診療や治療で高めていくことが大切。
・学会認定によるのが(精神科)専門医で、厚労省が指定するのが(精神保健)指定医。
・精神科医療では相手の自立を促すためにも、医者はあえて患者との距離を縮めない努力も必要。
・初診は30分から1時間、再診は5分。これは診療報酬制度で決まっていて、これ以上長くなると医師側の持ち出しになる。400万人の精神科患者に対して医師は1.5万人しかいないことも治療時間が短い理由。
・初診以降の通院間隔は「月1~2回」が一般的で、多い人でも「週1回」。治療期間は年単位も珍しくない。
・精神疾患は治りかけが危ない。統合失調症から回復し冷静になったところで、現実的な問題に直面し「死んでしまおう」と思ったり、うつ病の患者が死ぬ元気もなかったのに、調子が戻ってきたときに自殺することがある。
・ほとんどの精神疾患は簡単には「治らない」もの、元の状態には戻らないもので、「受け入れる」「共存する」イメージ。
・精神科の患者は、ある種の弱さや、未熟さを抱えていることもあるが、症状がよくなってくるにつれて、元の人格をはるかに超えて成長していく。
・心理士によるカウンセリングは保険診療外で、1回30分~1時間で6千円~1万円(美容院程度)。
・出す薬の数が多いほど点数を多くもらえるわけではなく、むしろ減点される仕組みになっている。
・心の病とは脳の病気。しかし、それがわからない人がいる。うつ病は人口の1割がかかるとまで言われている。
・統合失調症や双極性障害は、遺伝的要因が強く関わっている。
・最近の若い患者さんを診ていて、モラトリアム(大人になることへの猶予)」が長くなって、なかなか自立できない若者が増えたと感じる。交際経験のない人は、男女ともに増えている。
・「お酒はドラッグの一つ」と考えて飲まない人が増えている。
・精神科は儲かるか? 一人の患者の診察で5,000円入り、医師一人で一日40人診ると、一日20万円、月20日で400万円、年4800万円。粗利として年3000万円。一人社長の企業とすると、極端に儲かるわけではない。一般的勤務医の平均年収は1500万円。
・2030年以降は、日本の人口減によって医師余りの時代が来るといわれている。
私的には益田先生が一番信頼して見ることができます。
動画の時間は長めなんですが、他の先生方みたいに、
短時間で言い切れるものではないと思うので。
要点を記載していただき、ありがとうございました。