hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

千早茜『マリエ』を読む

2023年11月17日 | 読書2

 

千早茜著『マリエ』(2023年8月30日文藝春秋発行、¥1,870、242p)を読んだ。

 

文藝春秋BOOKSの内容紹介

私の幸せも不幸も、私が決める。そう、決めた

「離婚って失敗なの?」「恋愛と結婚って別物?」
新直木賞作家が描く、おとなの女性の結婚と幸福をめぐる物語。

桐原まりえは40歳を手前に離婚した。夫の森崎に「恋愛がしたい」と切り出され、2年近い話し合いの時期を経て、7年半の結婚生活に終止符を打ったのだ。理由にはいまも納得がいかないまりえだったが、自分はもう誰にも属していない、そう思うと心は軽やかだった。離婚届を提出する朝、寂しさよりも、手放して一人になることの清々しさをこそ感じたのだ。


「あんたもこれから恋愛できるわね」、行きつけのワインバーでよく遭う年かさのかっこいいマキさんはそう言うが、まりえにはその気はない。駆け引きも探り合いも億劫だし、今のからだを見せる羞恥が性欲を上回る。なにより、すべて自分の自由にできる生活が一番大事でそれを危うくする欲望に呑み込まれたくはないのだ。でも、なにか不安で、なにか取りこぼしている気がする……。


ひょんなことで懐いてきた由井君が粉料理を教わりに訪ねてくるのを好ましくは思うが、物事の受け止め方に7つの歳の差を感じるばかりだ。そんな折、些細なきっかけと少しの興味から、まりえは結婚相談所に登録をした。そこで見聞きする世界は、思いもよらないものだった。マリッジコンサルタントに、紹介された男たちに、婚活仲間に、切実な「現実」や結婚に対する価値観を次々と突きつけられ、まりえは考え続ける。自分が人生に求める幸せとは何なのか。


若い頃のように無邪気に恋愛に飛び込んでいけなくなった眼にだからこそ捉えられる、おとなの女の幸せをめぐる長篇。

 

まりえ(Maie)は、フランス語で「結婚、嫁ぐこと」。この本では香水の名前。

 

 

初出:「オール読物」2022年2月号~12月号

 

 

私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで、最大は五つ星)

 

39歳のまりえは大手家電会社の課長職で、離婚しても経済的に安定し、むしろ自由な時間を楽しむ。
ワイン、こだわりの小麦粉料理、ちゃっちゃと作るブルーチーズ入り焼き油揚げ、選び抜いた中国茶、好みが厳しい香水、シンプルに片付いた部屋、女性の憧れる自立したオシャレな生活が描かれる。

 

年かさのマキさん、気の置けない友人など、女性同士の友情、嫌味、こだわりをにじませるやりとりや、年下の油井くんとの距離をさぐる会話に秀逸な描写力を見せつける。

悩みを楽しんでいると見えてしまう大人の恋愛小説。 

ちなみに、まりえが歳下の油井くんと結婚したとして、20年後にはどうなっているか想像がついてしまう。(人生二度結婚説

 

千早茜の略歴と既読本リスト

 

文春オンラインで千早さんは語っている

「私も、まりえと同じように何年間もかけて話し合ったうえで円満離婚しました。成立後はとてもスッキリした気持ちになったんですが、誰も『おめでとう』『おつかれさま』とは言ってくれないんですよね。直木賞を受賞したときや、結婚を報告したときには、多くの人がお祝いの言葉をくれたのに(笑)。結婚も離婚も幸せのためにする決断なのに、どうしてだろうと不思議に思いました。物語を通して、結婚って何? ということを考えたかった」

 

 

メモ

(髪は)ダメージ受けたら戻らないですよ。髪は死んだ細胞ですから。(p114)

「髪は女の命」とかいうのに、死んでるんだ。そういえば、皮膚の表面の数層は死んだ細胞だった。

 

「若い子はマッチングアプリとかで恋人を探すんじゃないの?」
「主語が大きいです」  (p129、このセリフはもっと前にも出てきた)

「主語が大きい」とは、主語となっている「若い子」全部がそうじゃないとの意味。

 

 

最後まで読んで、いや眺めてくれた貴女にジョークを一つプレゼント。

二人とも50歳の夫婦がいた。25回目の結婚記念日に魔法使いのおばあさんが二人の願いを叶えてやることにした。

奥さんの願いは、世界一周旅行。魔法使いのおばあさんが呪文を唱えると、奥様の手には世界一周の航空券と十分な額の銀行小切手が現れた。

次に旦那さんに望みを聞くと、旦那さんは、「25歳若い奥さんがほしい!」。
魔法使いのおばあさんがうなずいて呪文を唱えると、アラ不思議!


旦那さんは75歳のシワだらけのおじいさんになっていました。

コメント
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