上野千鶴子・樋口恵子著『最後はひとり 80歳からの人生のやめどき』(マガジンハウス新書017 2023年7月27日マガジンハウス発行)を読んだ。
上野千鶴子と樋口恵子の対談が行われ、『人生のやめどき しがらみを捨ててこれからを楽しむ』としてコロナ禍初期の2020年9月にマガジンハウス社から単行本として刊行された。本書はこれに2022年の対談「90歳の樋口VS. 74歳の上野」を加えて再構成したもの。
家族をやめてつきあいをやめて自分をおりて……
さいごは身ひとつで見果てぬ夢を見続ける。
これ、良き人生。
上野「74で人生初の腰椎圧迫骨折」
樋口「90で全身麻酔手術」
I 家族のやめどき
II つきあいのやめどき
III 自分のおりどき
90歳の樋口VS. 74歳の上野 2022年12月収録
・墓に入るか否かが最後の終活
・夫婦のやめどき
・二世代住宅のやめどき
・子どもへの依存のやめどき
・87歳のクラス会は人生の彩り
・悪口、恨み、つらみのやめどき
・自分の悪口を言いそうな人より長く生きる
・感謝は早めに伝える
・ふるまいじまい、義理じまい
・音楽会のやめどきは
・80歳で最後の海外、北欧ツアー
・白髪染め・メイク・おしゃれのやめどき
・自主定年の設定
・84歳で調理定年
・食べ収めは永遠にしない
・最期まで自己決定するために
・「ありがとう」が出てきたらそろそろ……etc.
私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め、 最大は五つ星)
散漫になりやすい対談集だが、テーマを決めて、その範囲内で話し合っているので、わかりやすい。
樋口さんと、上野さん、実績があり、互いに尊敬しあっている二人で、16歳の年代差と、明るく伸びやかな樋口さんと、厳しい言い方ですぐ反発する上野さんの対比が、面白く、有益な対談集を作っている。
以下、文中から一部だけを抜き書きしたものです。全体の文意とは無関係になっている場合があります。
上野:一人になっても住み慣れた自宅介護が絶対良い。
樋口:老人ホームも良い。
上野:母親は息子におむつ交換をされたくないという。
樋口:昔の女としてはその感覚は普通だと思う。
上野:羞恥心も学習されたもので、ご都合主義的なもの、つまり、感覚はいくらだって変わっていく。
樋口:高校のクラス会に参加した。87歳ともなると、120人中40人の参加だった。
上野:クラス会って、いったい何が面白いんですか? 私はいっさい行きません。一緒だったという人が近づいてきても、その人は長らくわたしとかかわりがなかった人ですから、今さら寄ってこられても……。
樋口:「死にたい」という人の権利はやはり無視されて当然なんでしょうか。
上野:「死にたい」人に、生きていける選択肢を示さない/示せない社会のほうが問題だと思います。
樋口:「つまずいて転ぶのが70代、何もないところで転ぶのが80代」
樋口恵子(ひぐち・けいこ)
1932年、東京都生まれ。東京大学文学部卒業。時事通信社、学習研究社、キヤノン株式会社を経て、評論活動に入る。東京家政大学名誉教授。NPO法人「高齢社会をよくする女性の会」理事長。
著書に『人生100年時代の船出』『その介護離職、お待ちなさい』『老~い、どん! あなたにも「ヨタヘロ期」がやってくる』『老いの福袋――あっぱれ! ころばぬ先の知恵88』『老いの玉手箱―痛快! 心地よく生きるヒント100』などがある。
医者の一人娘と同居している。
メモ
樋口コラム(p195) ACPは繰り返してこそ意味がある。
ACP(人生会議):自分が希望する医療・ケアを受けるために、大切にしていることや望み、どのような医療やケアを望んでいるかについて自分自身で前もって考え、家族や医療関係者とあらかじめ話しあい、共有しておく取り組みのこと。環境や体調の変化によって変わるので繰り返して話し合うことが大切。
事前指示書:将来、体の具合が悪くなったときに、受けたい、あるいは受けたくない医療行為の希望を表明しておく文書。ACPはさらに家族や医療・ケアの担当者と話しあって確認する。