hiyamizu's blog

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今野敏『オフマイク』を読む

2022年09月17日 | 読書2

 

今野敏著『オフマイク』(2020年7月10日集英社発行)を読んだ。

 

集英社文芸ステーションの「担当編集より

警察小説の旗手・今野さんが描く『オフマイク』は、嗅覚の報道記者・布施と執念の敏腕刑事・黒田がタッグを組む“スクープ”シリーズの最新作です。

今回の事件は、二十年前に起こった大学生の自殺が、どうやら現役大物政治家の黒い繋がりと関係しているのではないか、という情報が黒田の同期で捜査二課の多岐川からもたらされるところから転がり出します。
一方、布施が担当する報道番組「ニュースイレブン」にもきな臭い話が。人気キャスター・香山の引き抜き話に加えて、番組打ち切りの噂に、関係者たちはにわかに浮足立ちます。
そんななか布施だけは、いつものようにどこ吹く風で気になる事件を追い続け、それにヒントを得た黒田は捜査線上にある一人の男を見つけ出し──。

夜の街を飲み歩き、面白そうな話に顔を突っ込む飄々としたスタイルの布施と、頑固一徹で未解決事件の解決に突き進む黒田は、実はどちらも今野さんの持つ側面のような気がします。
加えて布施と黒田がよく会う居酒屋「かめ吉」にも、なんとなくモデルがあるような……。
色々と想像をしながら、先の展開を味わっていただきたい一作です。

 

報道記者布施と特命捜査対策室の黒田刑事が活躍する「スクープ」シリーズの第五弾。

 

捜査二課の多岐川が、今ときめくIT長者の藤巻の政治献金違反に迫ろうとして、とりあえず20年前のイベントサークルSSメンバーの自殺について、特命捜査対策室の黒田・谷口に内密に再捜査を依頼した。

当時藤巻が関係していたイベントサークルSSではねずみ講まがいが行われていて、幹部・春日井と恋人の篠田玲子が自殺したのだ。二人はとりあえずの細い糸をたどって調査を進める。

 

一方、TBS局の「ニュースイレブン」の打ち切りの噂が流れてきて、番組メンバーは噂に振り回される。番組の担当記者である情報通の布施の話では、噂のもとは藤巻の一言らしいと分かる。

やがて、人気キャスターで、藤巻もご執心の香山恵理子が……。

 

 

登場人物

警察

黒田:捜査一課・特命捜査対策室(継続捜査を担当する)の刑事。ペアを組むのは若手刑事・谷口

多岐川:捜査二課(汚職(サンズイ)、詐欺(ゴンベン)を担当する)の刑事。黒田の同期。

鯉沼係長:赤坂署強行犯係係長

 

TBN局・夜のニュースショー「ニュースイレブン」

布施:報道記者。飲み歩いてばかりだが人脈豊か。

香山恵理子:人気キャスターで、フリーアナウンサー。もう一人のキャスターは局アナの鳥飼。

栃村:大阪から視聴率テコ入れのため番組に呼ばれた。

鳩村:デスク(二人のうちの一人)。上司は報道局長の油井

 

春日井:イベントサークルSSの幹部。当時23歳。首吊り自殺した。

藤巻清治:IT長者。ネットのカリスマ。フィクサーになりたいと広言。香山のファン。かってSSの主催者?

芦沢:怪しげな会社「渋谷エンタープライズ」を経営。42歳。半グレ。藤巻の古くからの知り合い。

遠藤明子:スナック「ハーフムーン」のママ。元SSメンバー。

篠田麻衣:「ライザ」のホステスでレイを名のる。自殺したSSメンバー・篠田玲子の姪。

真島:有名芸能プロダクション創設者。元半グレ。

 

 

初出:「小説すばる」2019年3月号~2020年2月号

 

 

私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め、 最大は五つ星)

 

当初、匂わせられる政治家の黒い影といった話は全く見えず、結局はしょぼい拉致監禁事件で幕。しかし、TV番組スタッフの動きなど、気楽に楽しく読める。

 

番組記者の布施の、仕事などどこ吹く風と言ったひょうひょうとしたキャラが魅力的。局の打ち合わせに出席せず、夜の六本木などを自由に飲み歩いていて、影響力ある人脈を持ち、貴重な情報通である。

彼が、一見熱血漢の刑事の黒田と互いに信頼し合っていて、巧みな連携プレイを見せるところが、読みどころ。

 

黒田とペアを組んでいる若手刑事谷口は、ほとんど機能せず、単に語り手に留まっている。よけいなお世話だが、ホームズのワトソンのように、わざとらしくない範囲で、少しはドジな考えや行動を見せて、黒田を際立たせれる方が良かったのではと思った。

 

今野敏の略歴と既読本リスト

 

コメント
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