両口屋是清は名古屋市の老舗和菓子屋だ。何しろ創業は1634(寛永11)年で、388年前というからすごい。失礼ながら、まさに「越後屋、おぬしも悪よのう」の世界だ。
その両口屋是清を代表する名菓が「二人静」だ。
今からおそらく50年程前だったろうか、友人から「二人静」をもらった。なんて美しく上品な箱なのだろうと思い、友人の姿とのアンバランスにも驚いた。
先日、吉祥寺アトレの両口屋是清を覗いていて、ショーケースの中の「二人静」を見ているうちに懐かしくなり、一つ購入した。
蓋を開けると、かすかに透けて見える和紙風のおひねりが並んでいて、薄紅と白の半球が合わさる一対の干菓子が現れる。口に含めば、徳島県産の和三盆糖を使った干菓子が口の中で静に溶けていく。
姿かたち、味も、すべてが上品。私には無いものねだりの世界だ。
和三盆糖は、「竹糖(ちくとう)」と呼ばれるサトウキビを原材料に徳島県、香川県の一部で生産される、日本独特の砂糖で、さらりとした口どけと上品な風味が特徴です。(とらやのHPから)
外箱の中には下のような小さな紙が入っていた。
さすが中村汀女、紹介の文も芸術的。私の文とは大違い。当たり前田のクラッカー。
文中の「二人静(ふたりしずか)」とは、絵にあるような2本の花穂の先に米粒のような白い花をつかるセンリョウ属の草花で、静御前とその亡霊の舞姿にたとえた名だという。
商品名の「二人静」の読み方は、「ふたりしずか」だと長年思いこんでいたが、店員さんは「ににんしずか」と言った。
草花の名も「ふたりしずか」だし、能の二人静も「ふたりしずか」なのだが、商品名は「ににんしずか」と読む。尾張地方では、この茶花のことを「ににんしずか」と呼ぶことが多いらしい。
私は、二人羽織(ににんばおり)を思い出すので。「ふたりしずか」の方が良いのだが。
ともかく、上品な和菓子で、ながく生き残って欲しい。