中山七里著『ヒポクラテスの試練』(祥伝社文庫、な21-3、2021年12月20日祥伝社発行)を読んだ。
裏表紙にはこうある。
死因はMRIにも映らない、急激に悪化した肝臓がん?――浦和医大法医学教室の光崎(みつざき)藤次郎教授のもとに、急死した前都議会議員の司法解剖の依頼がきた。埼玉県警の古手川が捜査すると、毒殺の疑いが浮上。だが光崎は、別の死因をつきとめる。法医学の権威の動揺ぶりに、得体の知れない恐怖を感じた助教の栂野(つがの)真琴たち。さらに、都議会関係者から第二の犠牲者が!
「ヒポクラテス シリーズ」(~の誓い、~の憂鬱、~の試練、~の悔恨)の第三弾。第一弾はWOWOWで連続ドラマ化された。
「ヒポクラテスの誓い」とは、医師の倫理・任務などについての、ギリシア神への宣誓文。
ヒポクラテスは、紀元前4世紀のギリシャの医師で、医学の父と呼ばれる。
初出:四六判で祥伝社より2020年6月に刊行
私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで、最大は五つ星)
まあまあ面白かったのだが、四つ星にしてしまうと、やたら四つ星ばかりになるので(実際にそう言われたこともある)、あえて三つ星に振り分けた。
感染症やがんなどの医療知識、警察と病院の解剖医の関係、日本とアメリカの感染症対策の組織の差など私が興味を持つ事柄が話の筋を追う中で、自然にわかりやすく説明されていた。
個性がとがった人たちが登場するので、会話も面白く、ミステリーとしても良く出来ている。ただし、そもそもの発生原因があさましい話なのは、秘密のしておかなければいけないためとはいえ、気分が悪い。
2020年6月に刊行されているので、コロナに便乗作品ではないだろう。
光崎(みつざき)藤次郎:浦和医大・法医学教室の教授。斯界の権威で、解剖の腕は超一流だが、傲岸不遜で口が悪く、頑固。短躯で歩くのが遅い。
栂野(つがの)真琴:浦和医大の研修医。内科教授の勧めで単位と広範な知識の修得のため、法医学教室にやってきた。気が強く感情的な面がある。
キャシー・ペンドルトン:アメリカ生まれの准教授。光崎を崇拝する。
南条:城都大教授。
古出川和也:埼玉県警捜査一課の刑事。熱血で猪突猛進なところがある。
渡瀬:古手川の上司。凶暴な顔つきで仕事に厳しく、口が悪い。課長は栗栖(くりす)、刑事部長は所田。
ペギョン・アンダーソン:ニューヨーク市検死局副局長。キャシーの医大での同級生。亡くなったリドラー局長の代理。
クレッグ:CDC本部担当者
権藤要一:都議会議員。資産家。68歳。自覚症状が無かったのに突然肝臓がんになり死去。解剖すると‥‥。親族は甥の出雲誠一のみ。
箕輪義純:都職員から独立行政法人へ。60歳。
エキノコックス:主に牧羊地帯に生息し、犬、猫、キタキツネなどの糞に混入したエキノコックスの卵胞が、水分や食料補給の過程で人体に侵入すると、体内で幼虫となり、主に肝臓に寄生して発育する。
中山七里(なかやま・しちり)
1961年生まれ、岐阜県出身。
『さよならドビュッシー』で第8回「このミステリーがすごい!」大賞受賞し、2010年に作家デビュー。
著書
ヒポクラテス・シリーズ(『ヒポクラテスの誓い』、『ヒポクラテスの憂鬱』、『ヒポクラテスの試練』、『ヒポクラテスの悔恨』)
岬洋介シリーズ(クラシック関連),『合唱 岬洋介の帰還』など
御子柴礼司シリーズ、『贖罪の奏鳴曲』『復讐の協奏曲』など。
『護られなかった者たちへ』『総理にされた男』『連続殺人鬼カエル男』『騒がしい楽園』『帝都地下迷宮』『夜がどれほど暗くても』『カインの傲慢』『毒島刑事最後の事件』『テロリストの家』『隣はシリアルキラー』『銀鈴探偵社 静おばあちゃんと要介護探偵2』『境界線』ほか多数。