板橋悟著『新版 なぜ分数の割り算はひっくり返すのか?』(2016年12月31日主婦の友社発行)を読んだ。
主婦の友社の内容説明は以下。
数学ギライの人・数学が苦手な人に贈る、義務教育の算数・数学やりなおし講座。
「分数の割り算はひっくり返してかける」のはなぜ? 「マイナス×マイナスがプラスになる」理由は? 今まで疑問を持たずに(あるいは持っても)通り過ぎてきたところにこそ、数学ギライの原因がありました!
本書が提唱するのは「実生活にあてはめて説明する」「図に描いて表現する」こと。公式の暗記は必要ありません。だから、今までの数学の本に挫折した人も、無理なく読めて、実感を持って理解できます。
また一見数学と関係なさそうな「ダイエットする」「料理を作る」「部屋を片づける」といった実生活の問題を、数学の考え方を使ってすっきり解決する方法も紹介します。これで「わかる!」「役に立つ!」数学があなたのものになります。
「分数の割り算はひっくり返してかける」というその理由が理解できず数学嫌いになった人がいるという話は聞いていた。私自身は分子に割られる分数、分母に割る分数を置くと、ひっくり返してかけることになるので、疑問も持たなかった。しかし、この理屈を数式でなく具体的もので説明しようとしてできなかった覚えがあるので、この本を読んでみた。
「はじめに」
本書では、「抽象」と「具体」を行ったり来たりできる思考方法に重点を置いてトレーニングしていきます。…具体的事例から、一般的な法則(本質)を抽出(発見)することを、一般化、すなわち抽象化というのです。抽象化ができると、ひとつの具体例から学んだことを、ほかの事例に応用できるようになります。…数学嫌いな人は、抽象化が苦手な人が多いのです。
私が算数のおもしろさに目覚めたのは、…「自分がそういうやり方で問題を解いたのか、計算のプロセスをしっかり書くこと。書いたら消さずに残しておくこと」でした。
第1章 なぜ分数のわり算は、ひっくりかえすのか?
「そもそもわり算とは何か?」
(1) 分ける
りんご6個を2個ずつ分けると、3人。
(2) 何倍か
A君がりんごを6個持っていて、B君は2個持っている。A君はB君の何倍のりんごを持っているか?
(2/3)÷(5/7)
「シーンを思い浮かべて、実感をつかむ」
- 式の意味を言葉にする 2/3は5/7の何倍か
- 生活シーンに置き換える ①2/3枚のピザと、②5/7枚のピザをイメージする。
- 図や記号に書く 比べ安くするために①を7等分、②を3等分し、どちらも21ピースにする。
①は14個のピース、②は15ピースになる。 - 直感的に答えを出す。 2/3枚のピザは、5/7枚のピザの14/15倍。
「実際に、計算してみましょう」
- (2/3)÷(5/7)=(2/3×7/5)÷(5/7×7/5) 同じ数(7/5)を書けても答えは変わらない
- =(2/3×7/5)÷(5×7/7×5)
- =(2/3×7/5)÷1
- =2/3×7/5
- =14/15
「分数の割り算はひっくり返してかける」のは、(1)から(4)へショートカットしていたのだ。
「分数の割り算はひっくり返してかける」というのは、分数同士のわり算が複雑なので、「わる数を1にする」という目的に向かって進めたプロセスを、ショートカットした結果でした。
第二章 なぜマイナス×マイナスは、答えがプラスになるのか?
「そもそもマイナスとは何か?」
基準値からのマイナス:基準値からの不足数
《この化粧品を使えば、肌年齢がマイナス5歳に!》、《ロンドンとの時差は、東京からマイナス9時間です》
0からのマイナス:0より小さい数
《東京の最低気温は、マイナス2度でした》
マイナスは「反対の向き」を表している!
《浴槽の水が、1分間に2㎝ずつ減っていきます。3分前には何㎝上まで水が入っていたでしょうか》
マイナス同士のかけ算はごく一部の人を除いては日常生活にはあまり登場しないので、具体例を出してすっきりすることは難しいのです。(p60)
第3章~第6章 略
私の評価としては、★★☆☆☆(二つ星:読むの? 最大は五つ星)
分数同士のわり算や、マイナス同士のかけ算を、具体的もので説明する部分はややこしいだけで、ピンと来ない。やはり抽象化を受け入れて、数式で考えるようにしないと、小学高学年の算数や、中学の数学は理解できないと思った。この本のように、なんとか具体的なイメージで算数を考えようとするのは無理で、間違っていると思った。抽象化、数式化を避けてはだめだと私は冷たく言い切る。
お母さんが数学は嫌いだと思っていると、それが子どもに伝わって子どもも数学嫌いになりやすい。
小学校3年までは身の周りの具体的なものに関連して算数を説明しているが、4年生になると抽象的になり始め、算数が難しくなると言われる。この時期に頑張らないと、あなたの子どもはIT時代に取り残されると、偉そうに私は冷たく断定する。
板橋悟(いたばし・さとる)
1963年東京都生まれ。PICTO ZUAKI Design Lab 代表。ビジネスプロデューサー。ピクト図解®メソッド考案者。
東京工業大学理学部物理学科卒後、リクルートに入社。米国マサチューセッツ工科大学に社費留学。
帰国後、KIDS向け教育事業を立ち上げ、メディアファクトリーに事業部長として出向。
子どもが直感的に楽しく発想する教育メソッドを研究。
現在はビジネスプロデューサーとして、企業の新商品開発・新規事業開発などに従事。