左巻健男著『ウンチのうんちく 大便・おなら・腸内細菌のはなし』(2014年6月6日PHP研究所発行)を読んだ。
宣伝文句は以下。
私たちにとって身近な存在であり、健康のバロメーターでもあるウンチ。
本書は科学の視点からウンチにまつわる蘊蓄を集めた一冊です。
◎本書の3つの特徴◎
■一生お世話になるウンチにまつわる「科学・医学的な知識」を扱う
■とりわけ健康に関わる内容を重視
■読み切り的な記事が多いのでどこからでも読める
「はじめに」
本書の3つの特徴の最後に「(トイレに常備することを推奨します!)」とあるが、ジョークにだろう。
「ウンチは何からできている?」
健康な人のウンチの約80%は水分で、残りの固形分20%のうち、1/3が食べ物の不消化部分、1/3が古くなって剥がれた消化管上皮、残りが腸内細菌とその死骸。
「ウンチの色とにおい」
ウンチの悪臭は、インドール、スカトール、硫化水素、アミン。インドールもスカトールも、薄めると芳香で、香水や香料に使われる。
「宿便ってなに?」
「腸壁にこびりついて取れないヘドロ状のウンチ」といわれる宿便は存在しない。小腸の吸収上皮細胞は寿命が最も短い細胞の一つで、一日~一日半で脱落して死滅し、ウンチがこびりつく状態にはならないし、内視鏡でも確認できない。
「食べたものはどうなる?」
私たちの体には口から肛門まで、大人で約9メートルもの消化管と呼ばれるパイプが通っている。
口で砕かれ唾液と混ぜ合わされて食べ物は、胃に入ると蠕動運動で一分間に3~5回の収縮で酸性の胃液と食べ物が混ぜ合わされる。消化には3~6時間かかる。
小腸での消化・吸収には4~5時間かかり、口から入った食べ物が肛門からウンチとなって出てくるまで24~72時間かかる。
「善玉菌・悪玉菌・日和見菌」
腸内には約1000種、100兆個、1.5キログラムの細菌がある。
離乳食の頃には、食べ物によるさまざまの菌が入り、その人固有の腸内フローラがほぼ決まる。
「多様化する寄生虫症」
第二次世界大戦直後の日本では、寄生虫の寄生率が70~80%もあった。今では1%以下。
人間が排出したサナダムシの最大のものは39メートル。
私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで、最大は五つ星)
ウンチに関する幅広い項目を抑えていて、内容も要領よくまとまっている。個々の話はそれなりに面白く、軽く読めるのだが、ウンチ話が好きな私が特にびっくりしたり、深く納得させられる内容はなかった。いわば事典的だ。著者がウンチの専門家ではなく、ライターのためだろう。
左巻健男(さまき・たけお)
1949年栃木県小山市生まれ。千葉大学教育学部中学理科専攻卒業、東京学芸大学大学院教育学研究科修士課程修了。
東京大学教育学部附属中・高等学校教諭、京都工芸繊維大学教授、同志社女子大学教授などを経て法政大学教職課程センター教授。専門は理科教育(小学校・中学校・高校の理科で何をどのように教えるか)、科学コミュニケーション(科学を一般の人にどう伝えるか)。
著書に、「面白くて眠れなくなる」シリーズの『物理』『化学』『地学』『理科』『人類進化』『元素』『物理パズル』(以上、PHP研究所)、『図解 身近にあふれる「科学」が3時間でわかる本』『図解 身近にあふれる「生き物」が3時間でわかる本』(以上、明日香出版社)など多数。