島本理生著『リトル・バイ・リトル』(角川文庫し36-7、2018年5月25日新潮社発行)を読んだ。
裏表紙にはこうある。
ふみは高校を卒業してから、アルバイトをして過ごす日々。家族は、母、小学校2年生の異父妹の女3人。静かで平穏で、一見何の変哲もない生活だが、そこに時折暗い影を落とすのは、家族の複雑な過去だった。習字の先生の柳さん、母に紹介されたボーイフレンドの周、2番目の父――。「家族」を軸にした人々とのふれあいのなかで、ふみは少しずつ、光の射す外の世界へ踏み出してゆく。第25回野間文芸新人賞受賞作。
橘ふみ:主人公。母の酒と虐待でどうしようもなかった最初の夫との子供。しかし、ふみは6年前に待ち合わせに現れなかった実の父に思いを残している。母が二度目の夫と離婚したので、大学へ進まずバイトしている。
ふみの母:整骨院『野崎治療院』で働く。二度目の夫とは、ユウと共に、時にふみとも、ときどき食事などする。
ユウ:母の二度目の夫との子供で、ふみの異父妹。小学2年生。
柳:ふみが1年前から通っている習字教室の先生
市倉周:キックボクシングのなりたてのプロ。ふみと付き合う。背の高いお姉さんがいる。
本書は2003年講談社より刊行され、2006年1月講談社文庫となった。
「あとがき」で著者は書いている。高校生のとき、
当時は、家族小説を書きたい、と思って書いた小説でした。
だけど復刊にあたって読み返したとき、これは恵まれた境遇とは言いがたい主人公が、他者を通じて、家の中から外の世界へと踏み出していく小説だったのだと気付きました。
解説は、なんとアイドルの松井玲奈が書いている。
私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)
ドラマチックな出来事もなく、淡々と日常が過ぎていく。確かに家庭は複雑だし、母親のキャラも多少変わっているが、びっくりするほどのものではない。高校卒業したばかりの少女がいろいろな経験をしてちょっとおおきくなっていく小説で、芥川賞候補になるほどのものだろうか。
母は夫を、ふみは父を、ユウは飼っていたモルモットを、柳さんは妻を亡くすが、それでも淡々と生きてゆく。
でも、20歳でこんな小説を書く女性って、その後の活躍が証明しているが、すごい。