hiyamizu's blog

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大沢在昌『売れる作家の全技術』を読む

2019年03月31日 | 読書2

 

大沢在昌著『小説講座 売れる作家の全技術 デビューだけで満足してはいけない』を読む

 

宣伝文句は以下。

200以上ある文学新人賞から毎日多くの作家が誕生しているが、数年後に残るのはわずか数パーセントにすぎない。30年以上にわたりトップを走り続ける著者が、作家になるために必要な技術と生き方のすべてを惜しげもなく公開する小説講座の決定版。

 

 

第一部は「講義」で、第1回~第9回あり、各回とも生徒との質疑応答がある。

第二部は「受講生作品講評」で、課題A~Dへの7~10名の生徒への講評

 

第一回 作家で食うとはどういうことか
偏差値の高い新人賞(ミステリー系なら「江戸川乱歩賞」「日本ホラー小説大賞」、時代小説なら「松本清張賞」)を狙え

第二回 一人称の書き方を習得する
「ザ・惨め」を書くには、惨めな人の周辺をどんどん黒く塗りつぶしていって浮かび上がらせるほうが、読者には惨めさがより良く伝わるはず。


第三回 強いキャラクターの作り方
・スタニスラフスキー・システム:役のキャラクターを台本に書かれていない部分まで、より具体的に、リアルに、細部まで細かく作り上げていく。例:お茶?コーヒー?砂糖?など。

・キャラクター表を作って、一人一人の登場人物について思いついたことをどんどんメモしていく方法もある。

・その人の視線の先を見てください。その人が何に興味を持っているか、それがわかるのが視線です。


第四回 会話文の秘密
登場人物の会話は、どちらかと言えば保守的であったほうがいい場合が多いのですが、男性は女性を保守的に書きすぎがち。


第五回 プロットの作り方
「謎」というものをどうゆうふうに物語の中に置いていくがが、プロット作りのカギになる。


第六回 小説には「トゲ」が必要だ

もう一ひねり必要と言われたら、物語の後半でひねっては遅い。ひねるには、主人公を残酷な目に遭わせることが必要。


第七回 文章と描写を磨け
第八回 長編に挑む

強いキャラクターを複数つくる/中だるみを防ぐには一つめの謎を解き、新たな謎を作る


第九回 強い感情を描く

第一〇回 デビュー後にどう生き残るか
新人作家の単行本例:1800円で初版4000部、印税10%で72万円。

定価の65%が出版社の取り分で、35%が取次と書店。

 

 

初出:「小説 野性時代」2011年7月号~42012年8月号

 

 

私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

 

小説を書くための覚悟、根性、力を入れるポイントが、生徒の作品を題材にして教え込まれる。小説を書くつもりが無くても、本を書く人の側の事情が良くわかり、読む立場からも面白い。ただし、大沢さんの話は、当然ミステリーに限られている。

 

それにしても、大沢さんの後輩をそだてようとする労苦にはおそれいる。

 

 

大沢在昌(おおさわ・ありまさ)
1956年名古屋市出身。慶応大学中退。

1979年『感傷の街角』で小説推理新人賞受賞しデビュー

1986年『深夜曲馬団』で日本冒険小説大賞最優秀短編賞、

1991年『新宿鮫』で吉川英治文学新人賞、日本推理作家協会賞長編部門、

1994年『無間人形 新宿鮫Ⅳ』で直木賞、

2004年『バンドラ・アイランド』で柴田錬三郎賞を受賞。

2010年日本ミステリー文学大賞

2012年『絆回廊 新宿鮫X』で日本冒険小説協会大賞を受賞。

共著に、林真理子、大沢在昌、山本一力、中園ミホ「売れる小説の書き方。

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