hiyamizu's blog

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若竹千佐子『おらおらでひとりいぐも』を読む

2018年12月20日 | 読書2

 

若竹千佐子著『おらおらでひとりいぐも』(2017年11月30日河出書房新社発行)を読んだ。

 

裏表紙にはこうある。

結婚を3日後に控えた24歳の秋、東京オリンピックのファンファーレに押し出されるように、故郷を飛び出した桃子さん。身ひとつで上野駅に降り立ってから50年――住み込みのアルバイト、周造との出会いと結婚、二児の誕生と成長、そして、夫の死。
「この先一人でどやって暮らす。こまったぁどうすんべぇ」
40年来住み慣れた都市近郊の新興住宅地で、ひとり茶をすすり、ねずみの音に耳をすませるうちに、桃子さんの内から外から、声がジャズのセッションのように湧き上がる。捨てた故郷、疎遠な息子と娘、そして亡き夫への愛。震えるような悲しみの果てに、桃子さんが辿り着いた、圧倒的自由と賑やかな孤独。

 

河出書房新社の特設サイトはこちら。  

 

 

基本的に桃子さんの独白で進む。したがって、登場人物は、桃子さんの回想の中で登場する。亡き夫や、ばあちゃなど死者の声も混じる。

桃子さん

75歳ほど。60歳前に夫に先立たれ、息子と娘を育て上げたが、疎遠となり、一人暮らし。頭の中で、色々な人の声が聞こえ、50年標準語だったのに心の中で誰かが東北弁で語る。混乱の後、夫のため、子供のために生きてきたことが間違っていたと思うようになり、自分がしたいことをして自分のために生きるという心持になる。他人のために生きる、それはどこか間違っていると。

 

周造

亡くなった旦那。同じ東北出身。美男子。心筋梗塞で突然に60歳直前で亡くなる。

 

直美

桃子さんの娘。40代。疎遠だったが、最近、孫娘さやかを連れてきて、桃子さんの買い物などをするようになった。桃子さんの母は娘が年相応に女らしくなることを異常に恐れ、禁じられたので、桃子さんは娘の直美には可愛い服を強引に着せたりして嫌われた。お兄ちゃんばっかしと恨んでもいる。

 

正司

桃子さんの息子。「俺にのしかからないで」と、母の桃子さんを避け、音信不通だった。最近、連絡はしてくるが、ほとんど帰ってこない。

 

ばあちゃ

桃子さんの祖母。何かにつけて桃子さんをさがしいの、めんこいのと言って可愛がった。

  

 

若竹千佐子 (わかたけ・ちさこ)

1954年、岩手県遠野市生まれ。岩手大学教育学部卒。現在、専業主婦。第54回文藝賞受賞。

55歳の時に、ご主人が突然脳梗塞で亡くなった。長男の勧めで、嘆き悲しむ千佐子さんも小説講座に通うようになり、8年後の2017年、63歳で「おらおらでひとりいぐも」を執筆した。

本作で、第54回文藝賞を史上最年長で受賞し、デビューし、2018年、同作で第158回芥川賞を受賞

 

 

私の評価としては、★★★★★(五つ星:読むべき)(最大は五つ星)

 

最初、どうなるかと思った。幻覚、幻聴が続き、部屋はごみの山。認知症の人の話がこれからも続くのかと思うと、萎えた。しかし、守旧派の柔毛突起など複数の自分が頭の中でいい争い、だんだん話に引き込まれる。小道具もそろっていて、地球46億年の歴史なる話にも「ほほう!」と思う。

 

東北弁の迫力、悲惨な状況なのにあくまで明るい、表現が自由闊達で自在。新人がこんな小説を書けるとは!

 

 

メモ

桃子さん、自分の老いはさんざ見慣れている。だども娘の老いは見たくない。娘まではせめて娘だけは勘弁してけでがんせというような手すり足すり何かに頼む気持ちが生じ、……。

 

自分と同じ年恰好の婦人が足元おぼつかなくなって杖などを突いてよろよろ歩いているのを見れば内心ほくそえみ、シャカシャカ歩いているのを見れば、スカートの下の両腿をきっと揃え、背筋を伸ばすなんてことをほぼ反射的にしているのだった。

コメント
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