hiyamizu's blog

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村田沙耶香『コンビニ人間』を読む

2017年01月06日 | 読書2

 

村田沙耶香著『コンビニ人間』(2016年7月30日文藝春秋発行)を読んだ。

 

宣伝文句は以下。

36歳未婚女性、古倉恵子。大学卒業後も就職せず、コンビニのバイトは18年目。これまで彼氏なし。日々食べるのはコンビニ食、夢の中でもコンビニのレジを打ち、清潔なコンビニの風景と「いらっしゃいませ!」の掛け声が、毎日の安らかな眠りをもたらしてくれる。ある日、婚活目的の新入り男性、白羽がやってきて、そんなコンビニ的生き方は恥ずかしいと突きつけられるが…。「普通」とは何か? 現代の実存を軽やかに問う衝撃作。第155回芥川賞受賞。

 

子どものころから、普通ではない考え方と行動の古倉恵子36歳未婚。喜怒哀楽に乏しく、他人の心の理解も苦手。自分のどこが変なのか分からないが、親に迷惑をかけないため、無口を通す。

 

大学生の時、コンビニアルバイトを始め、気がつくと18年、15万7800時間が経過し、店長は8人目だ。周囲からの就職や結婚をしないことへの質問にも、無感情で受け流していた。そして、「僕に言わせれば、ここは機能不全世界なんだ。世界が不完全なせいで、僕は不当な扱いをうけている」と語る新人バイト白羽が登場する。

 

 朝昼晩の食事、水もほとんどがこのコンビニの食料だ。

自分が、雑貨に棚やコーヒーマシーンと同じ、この店の一部であるかのように感じられる。

 

店長がムカつくとか、夜勤の誰それがサボってるとか、怒りが持ち上がった時に協調すると、不思議な連帯が生まれて、皆が私の怒りを喜んでくれる。

 泉さんと菅原さんの表情を見て、ああ、私は今、上手に「人間」ができているんだ、と安堵する。

 

赤ん坊が泣き始めている。妹が慌ててあやして静かにさせようとしている。

テーブルの上の、ケーキを半分にする時に使った小さなナイフを見ながら、静かにさせるだけでいいならとても簡単なのに、大変だなあと思った。

 

初出:「文學界」2016年6月号

 

村田沙耶香(むらた・さやか)

1979年千葉県印西市生。 

玉川大学文学部芸術学科芸術文化コース卒業

2003年、「授乳」で第46回群像新人文学賞優秀賞受賞しデビュー

2009年、「ギンイロノウタ」で第22回三島由紀夫賞候補、第31回野間文芸新人賞受賞。

2013年、『しろいろの街の、その骨の体温の』で第26回三島由紀夫賞受賞。

2016年、本書『コンビニ人間』で第155回芥川賞受賞。

 

 

私の評価としては、★★★★(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

 

 主人公の変わった性格には多少の違和感があるが、コンビニと一体化してしまった女性の話で、いかにもと説得力がある。自分が落ちこぼれのくせにコンビニ店員を底辺扱いして上から目線でバカにする白羽も、そこらに居そうな男だ。

 

そうか。叱るのは「こちら側」の人間だと思っているからなんだ。だから何も問題が起きていないのに「あちら側」にいる姉より、問題だらけでも「こちら側」に姉がいるほうが、妹はずって嬉しいのだ。

 現実は、これほど明確に「こちら側」と「あちら側」に分かれているわけではないが、自分にとっても「あちら側」にはときどき出会う。

 

 中編のせいもあるが、脇道にもよらず、終始一貫してまっすぐに話をテーマが貫いている。幅や深味には欠けるが、完成している。

 

コメント
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