hiyamizu's blog

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米原万里『オリガ・モリソヴナの反語法』を読む

2016年12月12日 | 読書2

 

 米原万里著『オリガ・モリソヴナの反語法』(集英社文庫よ-18-1、2005年10月25日発行)を読んだ。

 

 裏表紙にはこうある。

1960年、チェコのプラハ・ソビエト学校に入った志摩は、舞踊教師オリガ・モリソヴナに魅了された。老女だが踊りは天才的。彼女が濁声で「美の極致!」と叫んだら、それは強烈な罵倒。だが、その行動には謎も多かった。あれから30数年、翻訳者となった志摩はモスクワに赴きオリガの半生を辿る。苛酷なスターリン時代を、伝説の踊子はどう生き抜いたのか。感動の長編小説。待望の文庫化。

 

 優れたエッセイストである米原万里の初めての小説。Bunkamuraドゥマゴ文学賞を受賞。

 

 シーマチカと呼ばれる志摩はソ連崩壊直後のロシアを訪ね、かって在籍した学校の天下一品の舞踏教師、強烈な個性の持ち主、過去を決して語らなかったオリガの謎に迫る。調査を重ねてようやく音信不通だった旧友カーチャと再会し、彼女と共にスターリンの強権時代の暗闇、残虐な粛清の実態、そしてその時代を生き抜いたオリガの過去にたどり着く。

 

 70歳にも80歳にも見えるのに苛烈な教え方をするオリガ・モリソヴナの反語法はすさまじい。

「あらまあ震えが止まらなくなるような神童!」

「これぞ想像を絶する美の極み!」

「思案のあげく結局スープの出汁になってしまった七面鳥」

「去勢豚はメス豚の上にまたがってから考える」

 

初出:2002年10月集英社より刊行に「『反語法』の豊かな世界から」を追加

 

 

私の評価としては、★★★★★(五つ星:是非読みたい)(最大は五つ星)

 

 まず教師オリガ・モリソヴナの個性が強烈、そして彼女の過去を徐々に暴いていく過程がリアルで一緒に調べている気分になってしまう。ミステリー小説でもある。さらに、スターリン時代の粛清、強制収容所の残酷さが具体例で語られ、どんどん引き込まれていく。このあたりは実にスケールの大きな話で、膨大な参考資料をもとに描かれている。 

 

 それにしても、最初の長編小説が最後のものになってしまったのは残念無念。

 

 

米原万里(よねはら・まり)
1950年東京生まれ。父親は共産党幹部の米原昶。少女時代(59~64年)、プラハのソビエト学校で学ぶ。東京外国語大学ロシア語学科卒業、東京大学大学院露語露文学修士課程修了。
ロシア語の会議同時通訳を20年、約4千の会議に立会う。
著書に、『不実な美女か貞淑な醜女(ブス)か』(読売文学賞)、『魔女の1ダース』、『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』(大宅壮一ノンフィクション賞)、『オリガ・モリソヴナの反語法』(Bunkamuraドゥマゴ文学賞)、『米原万里の「愛の法則」』、『マイナス50℃の世界』『ガセネッタ&シモネッタ
2006年5月ガンで歿。

 

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