hiyamizu's blog

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かねこたかし『昭和のあの頃ぼくたちは小学生だった』を読む

2016年12月31日 | 読書2

 

 

かねこたかし著『昭和のあの頃ぼくたちは小学生だった』(2016年9月10日ディスカヴァー・ツゥエンティワン発行)を読んだ。

 

かねこたかし(金子隆・昭和17年生)が自費で作った「昭和郷愁かるた」の反響が大きく、この本が書かれた。昭和20年代の小学生(現在 70-80歳前半)の周辺を文章と絵で描いている。

 

黒川由紀子・上智大学教授は、昔を懐かしみ、思い出を語り合うこと(回想法)は、認知症の予防にもなると語っている。

 

 本文では右のページに柴慶忠の絵があり、左のページに文がある。

 

 

著者は「おわりに」でこう語る。

ぼくたちは、昔はみんな子どもだった。子ども時代は楽しかった。あの場面、この場面。『郷愁の宝箱』には、過ぎし日の幾多の感動が詰まっている。ところが、残念ながら感動の中身を忘れてしまい、『宝箱』を開けずにいるお年寄りが多い。
 ぼくは、宝箱の中身を連想によって引き出すことを考えた。それがこの本。

『郷愁の宝箱』を開けていただけただろうか? あなたの少年少女期が、じんわりと、しみじみと、うふふふ……と、芋づるのように出て来ただろうか?
宝箱の感動が少しでも取り出せたなら、本書の狙いはそこにあり、ぼくの願いも成就となる。

 

 

かねこたかし(金子隆)
昭和17年東京生まれ。フジテレビ専任局次長/フジテレビフラワーセンター専務取締役/サンケイ出版プロデューサー/武蔵大学非常勤講師/日本児童文芸家協会会員・理事/埼玉文芸賞選考委員などを歴任。

 

 

私の評価としては、★★★★(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

 

著者は私と同年生まれで、昭和24年~30年に小学校時代を東京で過ごした。したがって、どの項目を見ても、懐かしく当時の思い出が湧き出してくる。今はなく、忘れかけていたあの物や、あの時の家族が浮かんできて、すぐにあの頃の自分の世界に入り込んでしまう。

 

ちゃぶ台:我が家は掘りごたつだったが、かすかな記憶ではその前は丸いちゃぶ台だった。上板に四角い枠がついていて、四隅に足があり、内側にたたみこめて、食事後は部屋の隅にかたずけた。

 

蒸気機関車:中学の修学旅行で京都へ行ったときに東海道は蒸気機関車だった。トンネルに入ると煙が窓から入ってくるので、キャアキャア騒ぎながら窓を閉めた。翌年から修学旅行専用車になった。

 

そば屋の出前:高々と積んだかけぞばを右手で支え、左手のハンドルで自転車を内側に倒しながら角を勢いよく曲がる粋な若い衆。

 

蚊帳:大きくなると蚊帳を自分でたたまされた。きちんとたたむのは難しかったが、面白くもあった。

 

アイスキャンディー:芯の木の棒を舐めると疫痢(えきり)になるとの噂があった。

 

張り板:よく庭に着物の生地をぴったり張り付けた板があった。竹ひごでピンと張られた布がハンモックのように木と木の間に張られていた。昔の女性は大変だったなと思う。

 

御用聞き:御用聞きは台所の勝手口から顔を出し、ゴム紐などの押し売りは玄関から入ってきた。

 

蠅捕りリボン:魚屋さんにぶら下がるハエ取りリボンには黒く見えるほどハエがついていた。親兄弟の嘆きが聞こえた。

 

オブラート:缶に入ったオブラートをおままごとの食事の時に何枚も食べた。食べ過ぎて気持ちが悪くなった。

 

街頭テレビ:電器屋さんの店先で大人たちに押されて汗だくになりながら声を上げて力道山を応援した。シャープ兄弟も強かった。あれ以降、あんなに興奮したことはない。

 

紙芝居:お小遣いのない私はいつも坂上の遠くから眺めていた。一度だけ、飴を買って近くで見たが、飴を上手く舐めて、人形を崩さずに残すことに熱中して、紙芝居の内容に記憶はない。

 

焚き火:火の番をしながら、一人で火を眺めるのが好きだった。やりすぎて放火魔にならなくてよかった。

 

 

目次

はじめに
回想法を通じて貴重な記憶を未来へ/黒川由紀子
ちゃぶ台/蒸気機関車/ねんねこ半纏/火吹き竹/そば屋の出前/蚊帳/割烹着/配置薬/蚊遣り/徳用マッチ
かねこたかしの郷愁譚1 三本立て映画
アイスキャンディー/経木/張り板/行水/御用聞き/足踏みミシン/赤チン/金魚売り/銭湯/ままごと
かねこたかしの郷愁譚2 ラジオ歌謡
火の用心/BCG/君の名は/あやとり/学校給食/五徳/蠅捕りリボン/旅芸人/DDT/オブラート
かねこたかしの郷愁譚3 遊び場
七輪/街頭テレビ/置炬燵/紙芝居/竹とんぼ/ラムネ/焚き火/姉さんかぶり/赤電話/氷冷蔵庫
かねこたかしの郷愁譚4 煙突
めんこ/越中ふんどし/縁台将棋/お手玉/真空管ラジオ/自転車の三角乗り/バナナの叩き売り/買い物かご/手押しポンプ井戸/アルマイト弁当箱
かねこたかしの郷愁譚5 女の立ちション
おわりに

 

 

メモ

経木:スギやヒノキの板を薄く削ったもので、古くは経文を書き込むなど、仏教儀式に使われていた。三角に包まれた納豆、遠足のおにぎり、肉屋で買ったコロッケ、大福やみたらし団子。

張り板:春になると縫い目の解きが始まり、洗濯するのは夏。その洗濯物を乾かすのに使うのが張り板だ。

木綿類はふのりを煮て糊をつくり、それを使って張り板に張る。絹物類は伸子(しんし)針という竹ひごに針のついたものを使って干した。

オブラート:苦い薬を包み込んで飲むためと、菓子類のべたつき防止用という二通りの目的で利用された。

 

コメント
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