hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

米原万里『米原万里の「愛の法則」』を読む

2012年02月14日 | 読書2
米原万里著『米原万里の「愛の法則」』集英社新書0406F、2007年8月集英社発行、を読んだ。
1998年から2005年に行った4つの講演禄で、米原さんの死後発刊されている。

第一章 愛の法則
多くの相手から、なぜ「この人」を選ぶのか。生物学、遺伝学(?)、古今の文学を引用し、得意の下ねたを交え、女性は多くの男を競わせて優秀な一人を選ぶことになっている、あるいは「女が本流、男はサンプル」という説を語る。

女は男を次の3つに分類する。
A ぜひ寝てみたい男
B まあ、寝てもいいかなってタイプ
C 絶対寝たくないタイプ
多くの女性はCがほとんど、米原さんはCが90%強。

第二章 国際化とグローバリゼーション
グローバリゼーションとは、イギリスやアメリカが、自分たちの基準で、自分たちの標準で世界を覆いつくそうとすること。国際化とは、世界の基準に自分をあわせようとすること。
日本人の伝統的な習性で、その時々の世界の最強の軍事力と経済力を持つ国が文化も最高だと錯覚してしまう。

日本語では、外来語を"音"だけのカタカナ語として取り入れることができる。意味がわからなくても使える構造だ。中国語では、"意味"を考えないと通訳できない。例えば、日本の「ラブホテル」は中国語では「情人旅館」となる。

第三章 理解と誤解のあいだ
第四章 通訳と翻訳の違い

外国語と日本語と、この両方で小説が楽しめるようになれたら、通訳になることはかなり簡単だと思います。・・・


読書こそが言葉を身につける最もよい方法だ。単語は言葉の部品に過ぎない。まず言いたいこと(概念)があって、それを適する日本語のコードにして、声にして音を出すか、文字にして表現する。単語だけ暗記したり、文法という骸骨の部分だけを、生きた言葉と無関係にいくら勉強しても意味が無い。

初出
「1.愛の法則」と「2.国際化とグローバリゼーションの間」は高校生向けの講演(2005, 2004)、
「3.理解と誤解の間~通訳の限界と可能性」は県の文化講演会(1998)、
「4.通訳と翻訳の違い」は新聞社主催の受賞記念講演(2002)で



米原万里(よねはら・まり)
1950年東京生まれ。父親は共産党幹部の米原昶。少女時代プラハのソビエト学校で学ぶ。
ロシア語の会議同時通訳を20年、約4千の会議に立会う。
著書に、『不実な美女か貞淑な醜女(ブス)か』(読売文学賞)、『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』(大宅壮一ノンフィクション賞)、『オリガ・モリソヴナの反語法』(Bunkamuraドゥマゴ文学賞)など。
2006年5月ガンで歿。
実妹のユリは井上ひさしの後妻。



私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

高校生向けなどの講演録なので分かりやすく、軽く楽しむには良いが、深みは今ひとつ。例えば、「愛の法則」も多少あやしい生物学を強引に引用するなど、娯楽として楽しむのは良いが、真剣に考える内容ではない。
ユーモアたっぷりで、楽しめるし、同時通訳の現場からの発言も、なるほどと思う点も多いのだが、既にエッセイなどに書かれていることも多い。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする