hiyamizu's blog

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吉成真由美『知の逆転』を読む

2013年10月14日 | 読書2
吉成真由美インタビュー編『知の逆転』(NHK出版新書395、2012年12月NHK出版発行)を読んだ。

第1章 文明の崩壊(ジャレド・ダイアモンド):『銃・病原菌・鉄』の著者
現在のように消費量の格差がある限り、世界は不安定なままです。ですから安定した世界が生まれるためには、生活水準がほぼ均一に向かう必要がある。たとえば日本がモザンビークよりも100倍も豊かな国であるということがなくなり、全体の消費量が現在より下がる必要があります.

「人生の意味」というものを問うことに、私自身は全く何の意味も見出だせません。人生というのは、星や岩や炭素原子と同じように、ただそこに存在するというだけのことであって、意味というものは持ち合わせていない。




第2章 帝国主義の終わり(ノーム・チョムスキー):言語学に革命を起こした生成文法理論提唱者

第3章 柔らかな脳(オリバー・サックス)映画化された『レナードの朝』の著者で神経学者
個別の記憶や、エピソード記憶は失われてしまっても、音楽は残っているのですね。一般的に、音楽の力というのは、多かれ少なかれ病気によって浸食されずに長いこと残っています。


第4章 なぜ福島にロボットを送れなかったか(マービン・ミンスキー):人工知能の父
実際歴史を振り返ってみれば、多くの人々が大賛成した場合のほとんどは、大惨事になるか、文化が崩壊するか、大衆をうまく説得するヒットラーのような人物が現れる、といった悲劇に結びついています。


第5章 サイバー戦線異状あり(トム・レイトン):アカマイ創業者・MIT応用数学教授
アカマイ社は、ほぼ全ての最も人気の高いサイトの内容を配信したりスピードアップしている誰も知らないインターネット最大の会社。トム・レイトンは、待合せ理論(?)の研究者でアカマイの創業者。
彼は年収1,000万円に届かない薄給だが大学教授の仕事が気に入っていた。大学院生ダニー・ウィルソンが生活苦のため賞金目当てでMITのビジネスコンクールにレイトン等と参加し優勝した。ぴったりの数学理論はあったが、ビジネス経験は0で、ベンチャービジネスに突き進んで行くことになった。彼は教授に戻るつもりでいたが、ダニーが9・11のAA11便で死亡し、彼はアカマイに残った。それでも彼は好きな教授職を今も続けている。。

n2+n+41は、nが1から39までは素数になる。

第6章 人間はロジックより感情に支配される(ジェームズ・ワトソン):DNA構造発見でノーベル賞受賞
ワトソンとクリックは、ロザリンド・フランクリンが撮影した写真を見てDNAの構造を知ることができた。
吉成:ロザリンドは一体何をしていれば彼女自身がDNA構造を解明できる可能性が高くなったのでしょう。
ワトソン:残念ながら違うDNAを持って生まれてくる必要があったでしょう。・・・ロザリンドの場合、「成功すること」そのものが目的だった。われわれは「答えを知ること」が目的だった。・・・ハッキリ言って、彼女はノーベル賞に値しない。ノーベル賞は敗者には与えられない。誰も彼女から賞を奪ってなどいない。



私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

著者はよく内容を理解して質問し、気後れせずにしにくい質問もしているので、対談としては話が深くなっている。これだけ著名な人を集めた対談集も珍しいのではないだろうか。

しかし、理系の人ばかりからだろう、宗教や教育に関する質問への答えは無味乾燥だ。神を信じず、小説はSFしか読まない人が多い。
真に優れた人だけが文明を発展させるなどとの発言もあり、いったい私をどうしてくれるんだと思う。



吉成真由美(よしなり・まゆみ)
1953年生まれ。津田塾大学英文科卒業、NHK入社
ディレクターとして、子供番組、教育番組、NHK特集などを担当。CGの研究開発にも携わる。
マサチューセッツ工科大学(MIT)(脳および認知科学学部)卒業。
ハーバード大学大学院(心理学部脳科学専攻)修士課程修了。
1985年(32歳)NHKを退職
1987(34歳)利根川進と結婚、第1子出産
1992年(39歳)第3子 智を出産
著書に『カラフル・ライフ―遅咲きのすすめ』『サイエンスとアートの間に』『やわらかな脳のつくり方』などがある。

利根川進(72)と吉成真由美(58)の第3子、MITの一年生利根川智(18)は死亡(2013年7月)




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