hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

高野秀行『またやぶけの夕焼け』を読む

2012年11月04日 | 読書2


高野秀行著『またやぶけの夕焼け』2012年7月集英社発行、を読んだ。

小学4年生ら5人が、70年代、自然豊かな東京・八王子の田園を駆け回る。野球、虫捕り、火遊び、秘密基地、探検。5年生の団長カッチャンは「遊びじゃねぇんだ」が口癖の変人。小学生の日常の場所をほんの一歩踏み出しただけで、まったく違う風景に出会い、少年の心は震える、へんな所ばかり探検する高野秀行の原点ともいえる12の少年短編小説。

最初の1つ(表題作)だけ、あらすじをご紹介。

またやぶけの冒険
小4の主人公の阪野ヒデユキは、弟のユーリン、ひねくれ者のシゲオで、「またやぶけ」の土管(足をすべらせると、半ズボンの股が破け)に行くと、五年生で「すごく変なやつ」として知られるカッチャンが弟のミンミンと現れ、ドブ川の土管の先の探検に引き込まれる。コンクリートの用水路をさかのぼり、エロ本を見つけ、蟻地獄の沼を渡たり、新興住宅地の源流を探し当てる。そして、5人はカッチャン軍団となる。

以下の話は、最後に。

初出:「青春と読書」2011年5月号~2012年4月号を加筆、修正



私の評価としては、★★★★(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

ファミコンなどなかった時代に育った男の子なら懐かしさでニヤニヤしてしまうだろう。女の子には「バカね」で終わりだが。

主人公は、地味でおとなしい小4の阪野ヒデユキ。いたずら好きだが、心配性のお母さんの必殺のため息「はあっ」に一発でダウンする。
どこにでもついてくる小1の弟のユーリン。ひねくれ者で頑固なシゲオ。運動神経抜群でなんでも無茶なこと大好きで、興奮すると耳がバタバタするカッチャン。何かというと中国人の真似をするカッチャンの弟ミンミン。
個性豊かな少年たちがまだ野原があった八王子郊外でメチャをやる。



高野秀行 略歴と既読本リスト




以下、ネタバレぎみ。

復しゅうの鉄橋
軍団は、以前ストライキの時に横浜線の鉄橋を渡り、警官に捕まった。この復讐をするため、犬釘で鉄橋のレンガに穴を開ける。しかし、警官が現れ、線 k路の下に逃れたが、ちょうど通過した列車の轟音に体がビリビリする。

八幡様のクワガタ
1日1匹しか取れないノコギリクワガタを捕まえに、転校してきたばかりのマサトを誘い、午前3時に自転車で家を出る。パワフルなマサトがやさしい。

弟をスパルタする
僕はいつも弟のユーリンをプロレスなどで鍛えて(いじめて)いた。しかし、魚採りに行ったとき、ユーリンは魚採り名人のシゲオの方に付いて行ってしまう。夕方にようやく戻ってきたユーリンは、シゲオに魚の採り方を習ったが、秘密だと言って、得意気だ。

マタンキ野球場
軍団は僕の家の裏の空地でいつも野球していた。ある日、カンチャンの打った球が事僕の家のガラスを割る。そして、立派なフェンスができる。

幽霊とウソ
学校では「不思議な話」が流行し、僕も夕暮れ時にガード下で幽霊を見た気になる。学校で話すと、誰も信用しなかったが、幼馴染みの長谷川真理が味方になってくれ・・・。

結婚したい
カッチャンは僕だけを秘密基地に案内した。彼はこっそり少女マンガを読んでいたのだ。そして、僕は、恐れられているオトコンナンズの一人古田から告白されてしまうが、秘かに長谷川との結婚を夢見る。怪しんだカッチャンは、必殺技マウスクローで口を割ろうとするがこれだけはと、口に出さなかった。

サルになりたい
僕はゴルフボールを見つける。「プロゴルファー猿」に夢中だった僕らは、カッチャンの家の庭にゴルフコースを作り、クラブやコースの改善を重ねる。

ボニーの失踪
年末恒例の親戚同士の餅搗きに僕は犬のボニーを連れていく。遊びに夢中でボニーは行方不明になり、暗くなって・・・。

地底戦車をつくる
カマドで焚き火をしているうちに、解けているのが、鉛だとわかる。僕は鉛で地底戦車を作り、氷の上に置くと、静かに沈んでいくことを発見する。

僕らの縄文時代
城跡で見つけた縄文式土器を自分たちで作ることに挑戦する。できた土器をゴルフカップにすると、追い求めていたあの音がする。

カッチャン軍団、最後の冒険
カッチャンが来年中学生という6年生になったある日、いつものように遊びに行くと、彼の同級生がいて、もう軍団とは遊ばないと言われる。
僕だって、中学になったら部活や勉強でこんなことはやっていられないことはわかっていた。しかし、カッチャンと最後の冒険をしたいと作戦を練る。
僕らはドラコンができる距離のあるゴルフコースを探し出し、ドラコンでカッチャンが負けたら軍団は解散しないと約束する。しかし、練習を重ね自信満々の僕はOBを叩いてしまう。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする