hiyamizu's blog

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『佐野洋子対談集 人生の基本』を読む

2011年11月14日 | 読書2
佐野洋子、西原理恵子、リリー・フランキー『佐野洋子対談集 人生の基本』2011年2月講談社発行、を読んだ。
2010年11月に死去した佐野洋子と西原理恵子、そしてもう一つリリー・フランキーとの対談集。いずれも武蔵野美術大学の卒業生。

佐野と西原の「人生のきほん」とはとても言えない凄まじい生き様の語り合いに圧倒される。

西原さんはアル中の夫と6年暮らすが、ひどくなって暴れだし、幼い子供が2人いたので夫を離婚する。病院でアルコールと戦う元夫に「治ったら一緒に暮らそうね」と励ますが、治っちゃったので子供と4人で4年間暮らす。アル中の父親に殴られて育ったという元夫は“負のスパイラル”を自分の手で断ち切って子供に手を上げることもなく、ガンになり最後は“いい奴”になって心安らかに亡くなる。

佐野さんが3,4歳のとき、生まれたばかりの弟が血を吐いて目の前で亡くなる。毎日世話していた弟も一晩で急死する。翌年兄が死ぬ。
「人間も動物だから、一生なんて、息して、ごはん食べて、うんこして、子ども産んで、死ぬっていうだけなんだよね。」


リリー・フランキーさんとの対談時は2009年で、すでにガンで医師から余命2年と言われる中で行われたが、タバコを吸いながら豪快に笑う佐野さんの写真が良い。
リリーさんとの対談は佐野さんの体調から2回に分けて行う予定だったが、1回しか実現しなかった。この本の最後には、リリーさんから亡くなった佐野さんへの手紙で終わる。



私の評価としては、★★★★(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

まったく普通ではない生涯の中で、達観する佐野さんと、依然欲まみれの西原さんの話がかみ合って面白い。三人による挿絵、イラストも三者三様で楽しい。

人生に達観したような佐野さんの言が痛快だ。
「余命を聞いたときに、死ぬまでいくらくらい病院に払わなきゃなんないかもきいたの。そうしたらいちおう見通しが立ったの。だからその日にジャガーを買った。」


そんな佐野さんも、70歳を過ぎても4歳の頃に母に舌打ちして手を振り払われた苦い記憶から逃れられない。
私も4,5歳の頃、母に連れられてデパートを歩いているとき、知らない所で何か不安だったのだろう、母の着物の袖をしっかり掴んでいた。急ぎ足の母が急に振り向いて、「そんなところ持ったら歩きにくいでしょう」と私の手を振り払った。びっくりして、悲しくて、60年以上経った今でも頭にこびりついている。高齢出産で一人っ子の私は、母に十二分に愛されたことは解っているのだが。



佐野洋子
1938年北京生れ。武蔵野美術大学デザイン科卒。ベルリン造形大学に留学。
主な絵本に『100万回生きたねこ』、エッセイ集『神も仏もありませぬ』で小林秀雄賞受賞。
2010年11月ガンで死去。
谷川俊太郎は二度目の元夫。

西原理恵子
1964年高知県生れ。武蔵野美術大学卒業。
在学中に漫画家デビュー。数々の賞を受賞。

リリー・フランキー
1963年福岡県生れ。武蔵野美術大学卒業。
イラスト、文筆、写真、俳優業など。
『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』は220万部を超すベストセラー。







「100万回生きたねこ」のあらすじ(以下、ウィキペディアによる)
ja.wikipedia.org/wiki/100%E4%B8%87%E5%9B%9E%E7%94%9F%E3%81%8D%E3%81%9F%E3%81%AD%E3%81%93
主人公の猫は、ある時は一国の王の猫となり、ある時は船乗りの猫となり、その他、サーカスの手品つかいの猫、どろぼうの猫、ひとりぼっちのお婆さんの猫、小さな女の子の猫…と100万回生まれかわっては、様々な飼い主のもとで死んでゆく。その時、100万人の飼い主は猫の死にひどく悲しんでいたが、当の猫はまったく悲しまなかった。主人公の猫は、飼い主のことが大嫌いだったのだ。
ある時、主人公の猫は誰の猫でもない野良猫となっていた。「自分だけの事が好き」な主人公の猫は、100万回生きたことを自慢し、周囲のメス猫たちも何とか友達や恋人になろうと、プレゼントを持ってきたりして周囲に寄ってくる。
しかし、唯一 自分に関心を示さなかった一匹の白猫の興味をなんとか引こうとするうちに、いつのまにか主人公の猫は、白猫と一緒にいたいと思うようになる。そして、白猫にプロポーズをするのであった。白猫は主人公の猫の思いを受け入れた。
そして時がたつと、白猫はたくさん子供を産み、年老いてゆき、やがて猫の隣で動かなくなった。そこで猫は初めて悲しんだ。朝になっても昼になっても夜になっても、100万回泣き続けた。
そして猫も、とうとう白猫の隣で動かなくなり、それ以後生き返ることはなかった。


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