hiyamizu's blog

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デビット・カークパトリック『フェイスブック 若き天才の野望』を読む

2011年11月27日 | 読書2
デビット・カークパトリック著、滑川海彦・高橋信夫訳『フェイスブック 若き天才の野望 5億人をつなぐソーシャルネットワークはこう生まれた』2011年2月日経BP社発行、を読んだ。

マーク・ザッカーバーグ Mark Zuckerberg がハーバード大学の寮の一室でソーシャルネットワークのフェイスブック Facebook を学内だけを対象として立ち上げてから、ユーザー数が5億人を超え、会社価値がグーグルに迫るグローバル企業に成長させるまでが詳しく書かれている。
著者は徹底して取材していて、技術的な記述は少ないが、他社との競争、主導権を渡さずに会社成長の資金を確保するための駆け引きや、社内の人間関係のもつれなど詳細にあからさまに描いている。

著者がザッカーバーグに初めてあったとき、彼はこう言ったに。
われわれの会社はガスや水道と同様の公益事業です。人々が世界を理解する方法をより効果的なものにしようと試みています。われわれの目的はサイトの滞留時間を最大にすることではない。われわれのサイトを訪問している時間を最大限に有意義なものにしようと努力しているんです。


フェイスブックがサーバー容量の範囲内でアイビーリーグの大学に徐々に拡大していくと、様々な企業から買収提案が上がった。しかし、ザッカーバーグは金には興味がなく、ユーザーにとって楽しく役立つサイトという自分の思うようなサイトにフェイスブックを成長させていくことしか考えていなかった。寮仲間のモスコロヴィッツ、クリス・ヒューズや、ナップスターの創業者ショーン・パーカーが加わり、西海岸のパルアルトに移る。
パフォーマンスを確保できる範囲にコントロールしながら規模拡大し、サーバーを増加させ、運用ソフトを開発し続けた。そして、サーバー購入やソフト開発者確保のための資金が必要になり、ベンチャーキャピタルや大企業との駆け引きが始まる。

ザッカーバーグは広告には否定的だったが、規模拡大と共に膨大となる運営費を稼ぐためには広告を載せるようになる。通常のポップアップ広告やグーグルのアドワーズ検索広告は、自分が探しているものが解っているものの広告だ。しかし、フェイスブックの広告は、欲求を生み出す広告なのだ。

今や、フェイスブックのユーザー数は5億人を超え、毎月5%と驚異的なスピードで成長している。ユーザーは平均で毎日1時間弱も利用している。



著者デビット・カークパトリック
フォーチュン誌のIT分野を専門とするベテラン記者だったが、フリーに転身して本書を執筆した。



私の評価としては、★★★★(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

ザッカーバーグや、フェイスブックという会社、あるいはベンチャー企業の成功物語に興味のある人はとくにお勧めだ。極めて優れた頭脳の持ち主で、自分でコードを書くことが好きで、頑固で信念を曲げなが、形式的なことは大嫌いで、身の回りには構わないザッカーバーグに魅せられる。友達としては歓迎できないと思うが。ビル・ゲーツ、スティーブ・ジョブズなどIT企業で成功する男に共通するような気がする。
友人数人で開発していたごく小規模の頃の話が面白い。本文490ページと大部で、出資資金獲得の駆け引きの部分と、広告のあり方の記述が読んでいてもたれる。






【読書メモ】
■実名主義はフェイスブックの最も重要な方針だ。
■「ぼくらは世界にもっと透明性を加えることが必要だと。さまざまな情報へのアクセスを拡大して情報の共有を広げることが、結局、世界に必然的に大きな変化をもたらすと、ぼくらは考えた」(ザッカーバーグ)
■フレンドスターは自らの成功によって押しつぶされていった。
 1ページを読み込むのに20秒もかかるようになった。
 また「フェイクスター」とあだ名を付けられた一部ユーザーとの戦いがブランド・イメージを傷つけていた。
■ポークはおおいに洗練され分別もあるはずのハーバードの学生の間でさえ、むやみに流行した。その秘密は、ポークが公式にはなんら性的意味を含んでいなかったことにあった。
■「ぼくはこのサービスをどうつくっていくかを考えている。出ていくことなんか考えていない。(中略)悪いが、出口戦略なんか考えたことがない」(会社を売って儲けることは全く考えない)(ザッカーバーグ)
■「アイデンティティーはひとつだけ」
 フェイスブックを始めた頃、大人のユーザーには仕事用のプロフィールと「楽しめるソーシャル用プロフィール」の両方を用意すべきだという声があった。ザッカーバーグは常に反対した。
 「仕事上の友達や同僚と、それ以外の知り合いとで異なるイメージを見せる時代は、もうすぐ終わる」
■「ニュースフィールド」
 ニュースフィールドで公開される自分の情報を、ユーザがある程度制御できるようにした。例えば、交際ステータスを既婚から未婚に変えたときには配信しないように。
■フロントページ(新聞の一面)ルール
 プロフィールには詳細で正確な情報を載せ、積極的に会話に参加している。しかし、もし地元の新聞の一面に載ったらショックを受けるようなことは、絶対に書かないようにしている。
■フェイスブック上の近況アップデートだけをとっても、世界中のブログを合わせた10倍の量になる(社内推計)。2010年1月、米国インターネット利用時間の11.6%がフェイスブック上で費やされ、グーグルは4.1%だった。
■グーグルがフェイスブック内の情報にアクセスできなければ、検索サイトとしての地位が危機になる。
■広告用語で言えば、グーグルのアドワーズ検索広告は「要求を満たす」
 対照的に、フェイスブックは要求を生み出す。
■「敵は正面からではなくいつの間にか背後に忍び寄ってくる。だからツイッターはフェイスブックが十分注意すべきタイプの相手なのだ」(マーク・アンドリーセン)
■「ぼくは毎日のようにこう自問している「今ぼくは自分にできる一番大切なことをやっているのだろうか」と」(ザッカーバーグ)


コメント
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