三浦しをん著「天国旅行」2010年3月、新潮社発行、を読んだ。
心中をテーマにした8編の短編集。
宣伝はこうだ。
もう一度、立ち止まり、君と問いたい。そこは楽園なのかと――富士の樹海に現れた男の導き、命を賭けて結ばれた妻への遺言、前世の縁を信じ込む女の黒い夢、死後の彼女と暮らす若者の迷い、一家心中で生き残った男の決意……この世とあの世の境目で浮かび上がる、愛と生の実像。光と望みが射し込む、文句なしの傑作短篇集。
森の奥:富士の樹海をさまようおっさんと、突然現れたサバイバル男
遺言:純愛を貫いた妻への遺言
初盆の客:タバコを吸って肺がんになり、食をたって死んだ祖母には秘められた過去があった。
君は夜:夜は夢のなかで浪人の妻として生々しく暮らし、昼間は高校生の少女は、やがて東京に出て、妻子を持つ男との前世を信じてのめりこむ。
炎:桁違いの秀才高校生の彼女は、屋上に立って死を駆け引きの道具にする。
星くずドライブ:霊が見える青年が死んでしまった彼女と暮らす。
SINK:一家心中の生き残りの彼は最後の母の想いを汲み取れるのか。
初出は、小説新潮の2008年6月号から2009年8月号
私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで)
心中物ではあるが、必ずしも暗いばかりではない。笑いこそないが、最後に到るまでにやさしく温かいものが感じられる話が多い。後味が悪いのは「炎」だけだ。「SINK」には、
ボーイズ・ラブも漂い、著者の密かに愛読しているという成果なのだろう。
三浦しをんの略歴と既読本リスト