hiyamizu's blog

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加賀乙彦「悪魔のささやき」を読む

2010年03月06日 | 読書2

加賀乙彦著「悪魔のささやき」集英社新書0354C、2006年8月集英社発行を読んだ。

表紙裏にはこうある。
人は意識と無意識の間の、ふわふわとした心理状態にあるときに、犯罪を犯したり、自殺をしようとしたり、扇動されて一斉に同じ行動に走ってしまったりする。その実行への後押しをするのが、「自分ではない者の意志」のような力、すなわち「悪魔のささやき」である―。精神科医、心理学者、そして作家として半世紀以上にわたり日本人の心を見つめてきた著者が、戦前の軍国主義、六〇年代の学園闘争、オウム真理教事件、世間を震撼させた殺人事件など数々の実例をもとに、その正体を分析。拝金主義に翻弄され、想像を超えた凶悪な犯罪が次々と起きる現代日本の危うい状況に、警鐘を鳴らす。


精神科医、作家である著者は、東京拘置所医務技官のとき、多くの犯罪者が幾度となく「どうしてあんなことをしたのか、・・・本当に悪魔にささやかれたとしか思えません」と言うのを聞いた。

ならばどうすれば内なる「悪魔のささやき」に押し出されずにすむのか。著者が勧めるのは以下だ。
和を重んじ個を育てない日本人は流されやすい。自分の頭で考え確固とした人生に対する考え方を持つ。
狭い世界にしか興味を持たない人は悪魔につけこまれやすい。視野を広げる努力をする。世界の代表的な宗教について理解を深める。
死のむごさ、醜さをさけずに向き合う。
著者は、そのためにまず読書を勧めている。


はじめに 二十一世紀の日本を蝕む悪魔のささやき
第1章 悪魔はいかにして人を惑わすか
第2章 日本人はなぜ悪魔のささやかに弱いのか
第3章 人間を嘲笑い破滅させる、ささやきの正体
第4章 豊かさを餌に太り続ける現代の悪魔
第5章 いかにして悪魔のささやきを避けるか



私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで)

この本は、著者が自由連想風に日本人の心性の特徴について語ったのをライターがまとめてできたそうで、寄り道が多く、話の流れがまっすぐでない。個別の話には納得できることが多いし、興味あるエピソードも豊富なのだが。

例えば、麻原彰晃こと松本智津夫と接見したときの様子は興味深い。著者は、彼の目の前でいきなり両手をおもいっきり打ち鳴らしたがまったく反応がないことなどから、強制的に自由を奪われた状態で生ずる拘禁反応で混迷状態にあると結論づけている。



加賀乙彦は、1929年東京生れ。東京大学医学部卒。東京拘置所医務技官、フランス留学。東京医科歯科大学助教授、上智大学教授。
1968年『フランドルの冬』芸術選奨文部大臣新人賞、1973年『帰らざる夏』 谷崎潤一郎賞、1979年『宣告』日本文学大賞、1986年『湿原』大佛次郎賞、1998年『永遠の都』芸術選奨文部大臣賞受賞。





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