hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

「終の住処を探して」を読む

2009年09月19日 | 読書2
川井龍介著「終(つい)の住処(すみか)を探して」旬報社2009年8月発行を読んだ。

定年後、だれと、どこに、どんな家に住むか?田舎暮らし/海外/便利な都市部/マンション/賃貸/子供と別居などいろいろ言われているが、もちろん人それぞれだ。その答えを得るために、先人の例をいくつか紹介して、何をするかなど自分なりのライフスタイルを考え、それにあった住処を考えるための本だ。

人生の最後の最後は病院ということになる人が大部分だろうし、最後は老人ホームで暮らすと考えている人も多いだろう。いずれにしても、「見捨てられたボロのように年老いていく」しかないのだ。この本の「終の住処」という題名や、「最後の10年」というよく出てくる言葉があるが、これらは、自らが判断し行動できるうちでの最後のまとまった時間という意味だ。したがって、いろいろ挙げられている例は、「定年後」にどこかに移住したという例が多い。たいていの人の人生最後の最後の住処は、希望したとしても、自分で決められない場合が多いのだから。

以下、いくつか拾い出す。
「あと何年生きられるかわからないし、一度は好きなところに住んでみよう」

「・・・石垣島は定住でないという。体が自由に動かなくなったときのことを考えれば、病院へのアクセスを含めてもっと利便性の高いところに移ることを考えてい
る。・・・一つのところにこだわることはない。・・・」

茨木のり子の「四行詩」・・・最後の四行がなんとも含蓄がある。
匿名で女子学生が書いていた
ある国の落書詩集に
「この世にはお客様として来たのだから
まずいものもおいしいと言って食べなくちゃ」


特別養護老人ホーム(特養)は、とくに最近10年ほどで、高齢化が進み、また要介護度の高い人を優先するという方針転換から、お年寄りの住まいというより老人病院化してきた。

以下、目次からいくつか拾う。
好きなまちに住んでみようか (北海道へのあこがれ)/仕事をつづけて、なじみの場所での新生活/定住ではなく移住がいい(楽しみ方を早くから身につけ石垣島へ)/ポルトガルに住み、美術めぐりを /花を楽しむペンションをつくる/還暦からのサーフィン/適度な距離を置く夫婦の住処/老人ホームは終の住処か/二〇年前のフロリダに学ぶ/  



川井龍介は、1956年神奈川県生まれ。慶應義塾大学法学部卒。新聞記者などを経てノンフィクションや音楽コラムを執筆。連想検索機能を使いウェブ上に様々な文化情報を発信、企画するNPO連想出版の立ち上げに関わり、現在同出版理事、編集長。
主な著作は、「『十九の春』を探して」(講談社)や、「122対0の青春」(講談社文庫)。そのほか、住宅・都市・福祉をテーマにした著作には「これでも終の住処を買いますか」(新潮OH文庫)、「身体にいい家、悪い家」(新潮社、前田智幸と共著)などがある。



私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め)

何人かの夫婦の退職後の生き方、住処選択例が紹介されるが、その最後に必ず、著者の考察が付加されていて、この種の本にありがちな単なる事例紹介には終わっていない。著者は新聞記者や、20年以上前に1年ほどフロリダに住んでいて退職者の調査をしていたこともあり、考え方が合理的で、少なくとも私には納得できる点が多かった。

体がほとんど動けなくなったり、ボケてしまったりしたときのことを心配していては何もできない。「好きなことをする、あるいは見つけるために、急いで歩けるところまでは歩いてみる」これが私の考え方だ。そこで、相方が海外旅行好きな点もあって、オーストラリアや、カナダでのロングステイを繰り返して来た。観光旅行+現地での暮らし(1,2か月)+わずかながらも現地の人との交流は、刺激もあり、楽しいことも多かった。

能天気な私は、本来は、オーストラリアあたりに移住しても良いと思っている。しかし、心配性の相方は、自身も、高齢の母親も調子が今ひとつであることから、その気はない。夫婦別々の行動は考えられない私は(相方は?)、近年、短期の海外旅行に留めている。さらに、息子夫婦がときには応援が必要になりそうな情勢もあり、家族全体がハッピイになるために、東京のどこの住むかも含めて、臨機応変に考えていくつもりだ。今でも家族に支えられている私なのだから。まあ、ともかく、場所の問題より、何をするかの方が重要なのだ。

この本によれば、ジャック・ニコルソンとモーガン・フリーマンの映画「最高の人生の見つけ方」は、あと数ヶ月で死ぬとわかったときに何をするかというのがテーマだ。原題は“Buket List”で、「死ぬ前の最後にやりたいことのリスト」という意味だそうだ。
さて、私なら何をリストに挙げようか。

最後に、この本で紹介されていた全米退職者協会について、若干しらべてみた。
AARP(American Association of Retired Persons 全米退職者協会(アープ))は、国民皆保険制度がない米国で、退職者でも安く民間保険に加入できるよう1950年代に発足。中高年の市場に期待する企業の協力で、ホテルやレストランの割引などの特典を次々とつくり、会員を増やした。世界最大のNPOとも言われ、会員は約4000万人もいる。1997年度の年間収入は、総額約600億円。有給職員は1800人以上という。AARPの会員資格は55歳以上。会費は年間たったの8ドルだ。
首都ワシントンDCに壮大な総本部ビルをもち、高齢者関係の施策や社会保障、医療保険、社会福祉関係の諸立法や政策に関してアメリカ議会の動きを監視し、ロビーイストを雇って議会や議員への積極的な働きかけをしている。近年は、そのあまりに巨大で活発な政治力・ロビーイングが議会のひんしゅくをかって、批判されることも多くなった。
日本の団塊の世代が同じようなことをやったら、醜い世代間の争いが顕在化しそうだ。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする