山田敏弘著「日本語のしくみ(CD付)」2009年6月、白水社発行を読んだ。
ふだん使っている日本語も、日本人には当たり前すぎて、なぜそうなのか外国人に説明しようとすると、なかなか難しい。英語、フランス語、韓国・朝鮮語など諸外国語に堪能な著者が、例文から日本語の特徴をつかみ出して説明する。
今、日本語の本がブームらしいが、日本語の書き言葉や話し言葉を外国語のように分析した解説を読むと、日本語をきちんと教えるのが大変なことがわかる。
2例だけ挙げる。
「サンタが短歌で寒波を詠んだ」という文章の中で、「ん」で唇をとじているのは「寒波」だけで、残り3つの「ん」も舌が上あごにつく位置が各々違うという。言われてみればそうかなとも思うが、外国人に日本人のような発音をさせるには、各々の違いを明確にする必要があるのだろう。
「この」や「この(服)」のような話し手が用いる「コ系」、「それ」や「その(服)」のような聞き手が用いる「ソ系」や、「あれ」や「あの(服)」のような両方の領域外の「ア系」があるという。これも言われてそうだが、普段意識しないで使い分けている。
また、日本語には単数、複数の区別がないとか、現在完了形などの時制がないなどとの印象があるが、細かく見ると限定された形でそれらの規則が存在するという。
地域による方言などの違い、時代の変遷による変化などにも触れている。
日本人は普段なにげなく正しく日本語を使っているが、どのような場合に何を使うのか法則を説明しろと言われると困る。たまには、このような種類の本を読んで、あらためて日本語を外側から眺めてみることも、文章を書く人には有効だし、外国人に日本語を教える人には必須だろう。
目次
1、1章文字と発音のしくみ、2章書き方と語のしくみ、3章文のしくみ)
2、1章区別のしくみ、2章「てにをは」のしくみ、3章ニュアンスのしくみ、4章数のしくみ、5章実際のしくみ
山田敏弘は、1965年岐阜県生まれ、1988年名古屋大学文学部卒、1990年名古屋大学大学院博士課程前期課程(言語学専攻)終了。1990年から1993年まで国際交流基金派遣日本語教育専門家としてローマ日本文化会館に勤務、1997年大阪大学大学院博士課程後期課程単位取得満期退学、2000年大阪大学博士(文学)、2001年より岐阜大学准教授。
著書は、「初級を教える人のための日本語文法ハンドブック」、「国語教師が知っておきたい日本語文法」など。
私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで)
一つの項目について、2ページで説明し、コラムも入れて140ページほどだから、約70項目がただずらりと並んでいる。題名は「日本語のしくみ」だが、仕組みは後ろにいってしまって、個別の例文が次々登場する。仕組み(文法)が系統的に説明されているわけでないので、ただただ文例を積み重ねていくのに付いていくのは辛い。