ひつじ草の挑戦状

色んな思いを綴ってます。

散華の如く~不可解な最期~

2012-09-20 | 散華の如く~天下出世の蝶~
帰蝶「可笑しい…」
殿の援軍撤退後、義兄は美濃内乱の収束を宣言。
事実上、美濃斎藤家二代目当主は義龍となった。
殿も今川討伐を急務とし、美濃から手を引いた。
しかし、不可解。
一旦敵に回った尾張を攻めぬ兄に、私は疑問を抱いた。
義龍の家督相続と尾張の美濃撤退…和睦協定が続行中、そう結論を下して良いものか?
家臣らに尋ねようにも、その真相は語られる事無く、重臣の重い口は閉ざされたまま。
私の耳から美濃を遠ざけ、殿も黙して語らず。次なる戦、今川戦に集中しておられた。
それで、この私が、納得出来るはずも無い。だから…、
帰蝶「輝…輝…、信輝。ちょっと、」
義弟をこっそり裏に呼び出し、
池田「…何ですか?」
帰蝶「戦は…、父上は、どうなった?」
長良川の合戦から、即時撤退。援軍が間に合わなかったという事は、父の身に“何か” 遭ったとしか考えられない。捕縛か、それとも…、
池田「ん…」空を眺め、考えを巡らせ、言葉を選んで「…立派な最期にございました」
私に頭を下げて、ずず…と数歩下がり、一目散に退却しようとしたから、
帰蝶「立派な最期とは?」
さっさと下がろうとする信輝の袖を、
ムズンと掴んで捕え、
池田「あ、…と」
帰蝶「詳しく説明せよ」
池田「私は…、見届けておりません」
帰蝶「そなたらしくないいい訳だな」
池田「…」
帰蝶「立派な最期を、見届けておらぬと?」
池田「…。申し訳ございませんでした」
目を伏せ、頑に口を結び、私の詰問を黙秘で通した。
帰蝶「何に対する謝罪か、分からぬ」

散華の如く~即時撤退、収束~

2012-09-19 | 散華の如く~天下出世の蝶~
「おーッ」
天に拳を突き出し、意気揚々と敵に向かって駆け出した。
身長の低い者、俊敏な動きの者は上に座り、長身、または馬力のある者は騎馬となる。
いわゆる、騎馬戦。
養徳院「彼、ヤスケ…と申しましたね」
帰蝶「はぁ?」
きゃぁ、きゃぁ、
女中たちの黄色い声援で、義母様の声が聞き取り難い。
養徳院「…まるで、殿の黒馬さながら…」
独り言のように、ため息に心配を混ぜて、そう漏らされた。
帰蝶「…目立って良かろう…と」
殿が“他の誰も、召し抱えておらんぞ”と、そう仰せになりました。
誰もが為し得ない異と思しき偉業を成し遂げられるので、見ている我らは肝を冷やす。
ヤスケは、まさに殿好みに成長した。名馬の如く、光る汗が漆喰に大地を駆け抜けて、
濡烏(ぬれがらす)、漆黒が金色の間を縫うように走る姿は、目を引く美しさであった。
殿は、ヤスケの成長を大層お喜びに成られたが、我らにとっては悩みの種。と、そこへ、
早馬伝令隊が到着し、我らに「御屋形様が、お戻りに成ります」と、告げた。
養徳院「殿は、ご無事なのですね」
長良川の合戦…その終結は、思いの外早かった。
義龍侵攻が1556年四月十八日、その二日後、二十日には道三軍と合流したが、
帰蝶「援軍が、間に合わなかった…?」
義龍軍は織田軍を追撃し、殿は鉄砲隊で応戦。しかし、その直後、義龍は終結宣言を出し、織田軍は撤退…美濃内乱は収束した。殿が清州に戻って来られた。
帰蝶「ご無事で、何よりにございます。皆みな、よく無事で…、」
殿はお怪我もなく、義弟 信輝も無事だった。
しかし、可成様の御姿が、見えない。
「あの…可成様は?」
信長「…あぁ…」
殿はそれ以上、仰せに成らず、じ…と少年たちの金色の鉢巻を見つめて、
ひょいと不意にヤスケの鉢巻を取り上げ、スタスタ…行かれてしまった。

散華の如く~獲るか、獲られるか~

2012-09-18 | 散華の如く~天下出世の蝶~
染めは、水と風が命。
青に澄み渡る空、流れる雲はさらに白く、金色の鉢巻は大地に映えた。
帰蝶「今日の風は、特に良好…」
すぅ…と、久しぶりに深呼吸した。
殿が戦に行かれて、風を味わう余裕すら無かった。
戦の不安を風に乗せて飛ばし、つわりを和らげた。
「天下大吉…」
今日は、大吉。染めにも最良にして最適な日だった。
雪解けの清らかな水と初夏の風は、鉢巻を極上の風合いに仕上げてくれた。
これぞ、私の求めた、結束の旗。
同じ色で心結ばせる、仲間の証。
そろ…、鉢巻の渇きを確認して、
「さぁ、皆、付けてみよ」
ギュッと後頭部で硬く結ぶ鉢巻で、
キリッと彼らの心に変化が現れた。
少年から青年へ、戦人に変化した。
「皆、一層男らしゅうなったぞ」
皆それぞれに、良い面構えとなった。
さらに際立ったのは、ヤスケだった。
くるくるとした天然巻き毛から覗く金色は、端正な顔立ちを強調し、彼の、その黒肌は黄金と、よく合う。誰もがその美しさに、ほぅ…と吐息を漏らすほど。
頭一つ飛び出たその存在は、何処へ行っても…戦においても…目立つ。
まさに、標的。
「いいか。次の戦は、そなたたちも出陣する。己が命、自分で守りなされ」
男子、そのほとんどが十五で初陣。
次の戦が、彼らの初舞台であろう。
敵の首を獲るか、首を獲られるか。
その足で故郷の地を、再び踏めるか否か、
この子たちに天の御加護がありますよう、我ら女は金色に祈るしかなかった。
「その金色の鉢巻。誰にも、取られる出ないぞ」

散華の如く~改革の象徴 金色旗~

2012-09-17 | 散華の如く~天下出世の蝶~
それと、冷水に、
侍女「布…に、ございますか?」
白い布で、少年たちの鉢巻を作らせた。
養徳院「薬を取り寄せましたが、どこか具合でも…」
義母様にお願いしたのは、鬱金(ウコン)。
これは二日酔いに利く薬であり、染め粉としても使われる。
子供たちに鬱金を摩り下ろさせ、ずりずり…、ずりずり…、
帰蝶「確か…琉球王朝の、」
皇帝歓迎舞踊(琉舞)衣装は鬱金染め。
鮮やかな黄土色は、肥えた大地の色。
豊かな大地を、改革の象徴を、子供たちの手で作らせたかった。
ヤスケ「Yeah,Golden-Powder(すげぇ、砂金だ)」
アフリカ出身のヤスケ。どこかで砂金を目にした事があるのだろう。
砂より細かな粒子を掌に乗せ、さらさら、さらさらと金を滑らせる。
次は俺だ、俺だと一攫千金をその手で確かめ、ゴールドラッシュに湧き上がる子供たち。
子供たちの手は金色に染まり、黄土を見つめるその瞳は、キラキラキラキラ輝いていた。
帰蝶「舐めてみよ」
ペロ…
子供たちは「う゛え゛…」その苦さに顔をゆがめた。
帰蝶「良薬、口に苦し…」
酒は控えめに…と。
さて、
全ての鬱金が砂金に変わった頃、侍女らお手製の鉢巻も出来上がったようだ。
ゴールドラッシュに水を差すようだが、
帰蝶「はい」皆に鉢巻を配り…「それを水によく溶かし、布を浸してみよ」
真っ白な鉢巻が黄土色に変わり、全てを染め終えたら、竿に吊るして干す。
最初は黄土、
ハタハタ…、
風に靡(なび)く黄土は、黄金に変化した。
養徳院「まるで、黄巾の再現…」

散華の如く~天下大吉~

2012-09-16 | 散華の如く~天下出世の蝶~
私は、三国志の始まりの、始まりを子供たちに話して聞かせた。
『天に変わりて、民救うべし』
老子に授かりし知恵を働かせ、人々の病を癒し、民の暮らしを考えた、その名は張角(ちょうかく)。彼は医師であり、学者であり、宗教者だった。
貧しき民を救おうと奮闘するも、暮らしぶりに変化は無く…我らの声は天に届かない。
届かに思いに、ついに張角は筆を置き、代わりに刀を持ち、
「天子すでに死す、黄天まさに立つべし。歳は甲子にて、天下大吉」
(国に指導者はいない。今まさに我らが黄土のため立つべし。時は満ちた)
黄色い頭巾を巻き、戦おう、祖国のため…天に向かうは今しかないと、刀を掲げた。
彼に賛同する貧しき民も、彼を模して黄巾を巻いた。
黄巾は改革の象徴となり、農民反乱軍の証となった。
民は鍬から刀に持ち替え、悪国の立て直しに戦った。
これがいわゆる、“黄巾(こうきん)の乱”
しかし、張角は志半ばで死去。
指導者を失った黄巾軍は独り歩き、賊と変す。
その後、三つに勢力が分かれ、戦乱三国志へ。
帰蝶「今日は、ここまで…明日は劉備元徳と、その仲間 張飛、関羽を語りましょう」
この時代、三国志を通して兵法を学ぶ者が多かった。
書中で戦術・戦略を学び、実戦に備える。
一時の迷い、しくじりで、人命を落とす。
死を無駄にしないためにも、知恵がいる。
損傷を最低に、兵数を最小にして最大の功績を上げる手立てや、
敵の意を逆手に、天と地の利を味方に戦で生きる術を学ばせた。
しかし、知恵ばかりでは講釈上手、鳴かず飛ばずのうわべの将。
いかなる時も動じず、下手に動かず。好機に備え、好転を待つ。
それが文武を両道にして学ぶ理由で、しかし、それだけでは…。
もう一つ…、
帰蝶「義母様、お願いがございます」
町から、あるモノを取り寄せてもらった。
養徳院「薬?」

散華の如く~うつけ道~

2012-09-15 | 散華の如く~天下出世の蝶~
“ガキの頃…”
殿の元服前の、お話を思い出した。
こっそり城を抜け出し、町に繰り出した。そこへ、
「おいッ」
町の破落戸(ごろつき)が、見慣れぬ顔に声を掛ける。
「誰の許しで、歩くのか」と問われ、
殿はこう答える。
“己が道、天許す限り、歩くのみ”
それを聞き、
「面白いヤツだ」と破落戸の仲間入り。
出は違えども、同じ心を持つ仲間。
殿は異国の言葉で、こう表現した。
“Brother”
城壁の内と外で繋がる兄弟…、
“同志”
彼らは殿の大戦を聞き付け、馳せ参じ、
「この命、お前に預ける」と殿に仕官。
父子の意地の張り合いに、命投げ出す若武者に取らせる褒美など、何一つ無く…。
申し訳なさと同時に、心底有り難く思った。
忝(かたじけ)い…、そう頭を下げる私に、破落戸は言った。
「うつけに我(が)を通さすが、我ら也」
なんという我の張った仕官かと、彼らを頼もしく思い、
また、改めて、殿の御心深さを知った。
主を決めたら、己貫き、男を通し、命を投げ出す。
殿は如何にして、この硬い絆を結んだのか。
私は、斯様な家臣を、如何に育てるべきか。
主従を超えた結束は、如何に培われるのか。
殿不在の今、我らのすべき事…、
帰蝶「皆、集まりなさい」
それは、子供たちに、己の進むべき道を示す事。

改革の象徴 黄巾の旗印

2012-09-14 | 日記
ドン、ドーンと花火が上がり、
「あ…今日は、運動会か」
耳を澄まし、至る所で上がる開戦合図を聞く。
懐かしいな。
毎年恒例、運動会の前日だけは、天に祈った。
「雨よ、降れッ」
テルテル坊主を作って、独自流派で祈祷した。
そんな私の祈祷術を見て、天が、カカカッ、と高笑い。
運動会当日は、快晴だった。
照り付ける太陽と、燦々と降り注ぐ愛なら美空ひばりだが、実際に降るのは紫外線。
容赦なく、カンカンと照り付ける太陽で、夏らしい肌の色 小麦色となる…なら良いが、
何分、肌が白く弱く、一度焼くとかなり赤い。
さらに悪化すると皮膚科へ直行しなければならない、火傷の類だ。
それだけは避けねば…と、
「う…、せんせ…お腹が…」
体をくの字に曲げて、激痛に顔をゆがませ、
「なら、休まれ…」
と、温かい言葉を掛けて抱けるような顔面蒼白が功を奏し、運動会の練習はよくサボった。
※良い子は真似するな♪
有り難い。これで。とにかく、紫外線を避けて通れる。
昔からの性分で、ヤじゃッと思うと、とことんまで避ける傾向がある。
一度イヤになったら、なかなか好きに成れないものだ。
が…、嫌いと思しき苦手なモノは、笑顔でやってくる。
「皆さんの日頃の行いが良く、快晴に恵まれ…」
校長の御挨拶通り、運動会開催。私もしぶしぶ参加させられた。
そんな時代もあったよね、と時代を回想し、現代に戻る。
四神獣 青龍、朱雀、玄武、白虎の四方の神を旗印にそれぞれ色分けして戦…
「げ?」げげげげげ玄武様が…いな~いッ。なななななな…何たることかッ。
少子化問題が、玄武様にまで及んでいたとは…。
黄色のテント及び、旗が撤収されて、
「なななな…」無かった。
何も織田様の旗色を削除せんでもよかろうがッ!
一人で憤慨していたが、子供たちは何のその。
ドンドン、パッパッ、ドンパッパッ
応援合戦でクライマックス。色別対抗リレーが行われ…、
私は一人、戦国時代に取り残された。
あの燃え盛る本能寺…
改革の旗印、鬱金(うこん)染め金色の“永楽通宝”の旗がなぎ倒され、踏み付けられ…

大切な嫡男 信忠、それを守る斎藤道三 最後の子 利治とヤスケ。
さらに、小姓 蘭丸とその弟たちが打ち取られ…、
む…無念ッ。

ま、時代の流れには、あがなえないわな…。

散華の如く~戦国版 三国志~

2012-09-13 | 散華の如く~天下出世の蝶~
しかも、ヤスケは、端正な顔立ちだった。
帰蝶「ただの、やっかみではないか」
嘆かわしい…。
誰一人として、ヤスケに話し掛ける者が居らず、
話せない。話す相手…友、仲間が、いなかった。
しかし、ヤスケを追い込んでしまったのは私だ。
…すまぬ。
ヤスケ「…bustu、bustu…」
彼は指でイロハなぞり、文字の練習をしていた。
数年後には、彼も戦に駆り出されるであろうが、
仲間とのやり取りが出来ず、危険信号が出せず、
犬死…。かといって、
“仲良くなさい”と、
友として仲を強要し、絆が生まれるか?
命のやり取りの中で、仲間を助けるか?
答えは見ていた。
そんな三国志…現代に有り得ない。
“友になってくれ…”と、
懇願して出来た友など、親友には成れず、
友情の情すら湧き得ぬ、名しか知らぬ仲、
それ以上には成り得ぬ、ただの顔見知り。
この現状を、どう思われましょう?
画一化された大人の身分制度が、そのまま子供社会に映し出された。
浅はかな、思慮の欠けた大人が意図的に作り上げた、薄っぺらい鑑。
その鑑には、うわべだけの絆しか、もやは、映りはしない。これでは、
火急の時、誰も、何も、手立ても、術すらも映らぬまま、終わる生涯。
援助の手を差し伸べられる事無く、優しい声を聞ける事無く、ひとり。
孤独…あまりにも淋しい生き方と、死に方。
殿なら、如何にして、打破致しましょう?
この子たちに良き鑑(模範)は無いモノか…。

散華の如く~大人の鑑の、大きな亀裂~

2012-09-12 | 散華の如く~天下出世の蝶~
道があるなら、進むしかない。
軍師不在の今、
帰蝶「我らの手で、軍師を育てるしかなかろう」と、
殿のお好きな書物を持って来た。
『三国志』
諸葛孔明のような軍師を目指す子が育てば、勝機逸する。
「これを読ませれば、」
養徳院「難しいでしょう」
帰蝶「しかし、殿はこのくらいの歳には、」
養徳院「殿は、殿…」
ちらりと、ひとり大きな体を小さく、小さく丸めた男子を見た。
視線の先には、ヤスケがいた。
帰蝶「ヤスケは、ヤスケ…」読解力に差が有り過ぎる。
養徳院「話す内容は、辛うじて理解出来るようですが、」
書物を読み、書きするは困難。
大きな図体で風貌から年齢よりも上に見えるが、新吾と同じく十二、三歳位。
しかし、未だ言葉もままならず、周囲と馴染めず、孤立していた。
子は子供なりに、身分階級制度が意識下で形成されているようで、
上は同格以上と遊び、下は下で戯れる。そして、
異成る者を徹底的排除、居ない事にする…無視。
帰蝶「なんという事か…」
大人の作り上げた鑑(かがみ)には、大きな亀裂が出来ていた。
差別…。
私は、間違っていた。
ヤスケの素性を哀れに思うが故に、
「ヤスケを子供たちの中にお入れ下さい」と殿に進言した。
言葉の習得も子供たちと遊ぶ事で早くなると、他の子供たちと同じ扱いをすれば…。
しかし、現実はそんなに甘くはなかった。
養徳院「何処かで、聞いたのでございましょう…」
元 奴隷が殿にその才を買われ、今や奥方のお気に入り。

散華の如く~尾張天下への道~

2012-09-11 | 散華の如く~天下出世の蝶~
道場に集められた子供たちも事態の把握が出来ていないようで、
取っ組み合いケンカする者、一人書物の活字を追う者、チャンバラをする者、将棋を指す者、
一様に、そわそわと落ち着きが無い。
それも致し方ない事…我ら大人が落ち着いてはいられない状態にある。
戦で、主君が、父が、明日には帰らぬ方と成るやも知れないのだから、
「落ち着け」と子らに言い聞かせる前に、
冷静な判断しろと己を叱責せねばならぬ。
帰蝶「義母様、すみませんでした」
身勝手な振る舞いを恥じ、義母に謝罪した。
義母は戦の先を見据えておいでで、
養徳院「この子たちを如何すべきか、考えあぐねております」
秀でた才が芽を出せば、他国へ行っても花開く。
しかし、それを見出す教育係が、尾張にいない。
遡る事二年前、平手様の諌死…これは、我らにとってかなりの痛手だった。
一つ、目付役、教育係の不在。
一つ、協定、和睦交渉人不在。
一つ、朝廷、勅使饗応役不在。
平手様の後継がいない今、子供たちを教育する者がいない。
帰蝶「平手様のご…」
子息様も、戦に行かれてしまった。
城に残されたのは、女子供に老いぼれと、気難しい坊主…
「沢彦様はいずこに?」
最近、お顔を拝見していないと思ったら、
養徳院「宗恩禅師でしたら、駿府に行かれました」
帰蝶「駿府…?」今川氏が、いつ尾張を攻めるか…「斯様な時に、危のうございます」
養徳院「雪斎様が、御倒れに成ったとの一報が入りましてございます」
帰蝶「え?」
今川軍師が、倒れた?
養徳院「今川氏が尾張を攻めぬは、その為にございましょう」
今川の動きが止まった今、見えた。尾張天下への道。