ひつじ草の挑戦状

色んな思いを綴ってます。

散華の如く~獲るか、獲られるか~

2012-09-18 | 散華の如く~天下出世の蝶~
染めは、水と風が命。
青に澄み渡る空、流れる雲はさらに白く、金色の鉢巻は大地に映えた。
帰蝶「今日の風は、特に良好…」
すぅ…と、久しぶりに深呼吸した。
殿が戦に行かれて、風を味わう余裕すら無かった。
戦の不安を風に乗せて飛ばし、つわりを和らげた。
「天下大吉…」
今日は、大吉。染めにも最良にして最適な日だった。
雪解けの清らかな水と初夏の風は、鉢巻を極上の風合いに仕上げてくれた。
これぞ、私の求めた、結束の旗。
同じ色で心結ばせる、仲間の証。
そろ…、鉢巻の渇きを確認して、
「さぁ、皆、付けてみよ」
ギュッと後頭部で硬く結ぶ鉢巻で、
キリッと彼らの心に変化が現れた。
少年から青年へ、戦人に変化した。
「皆、一層男らしゅうなったぞ」
皆それぞれに、良い面構えとなった。
さらに際立ったのは、ヤスケだった。
くるくるとした天然巻き毛から覗く金色は、端正な顔立ちを強調し、彼の、その黒肌は黄金と、よく合う。誰もがその美しさに、ほぅ…と吐息を漏らすほど。
頭一つ飛び出たその存在は、何処へ行っても…戦においても…目立つ。
まさに、標的。
「いいか。次の戦は、そなたたちも出陣する。己が命、自分で守りなされ」
男子、そのほとんどが十五で初陣。
次の戦が、彼らの初舞台であろう。
敵の首を獲るか、首を獲られるか。
その足で故郷の地を、再び踏めるか否か、
この子たちに天の御加護がありますよう、我ら女は金色に祈るしかなかった。
「その金色の鉢巻。誰にも、取られる出ないぞ」


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