ひつじ草の挑戦状

色んな思いを綴ってます。

ケロッとして、パッと

2011-08-03 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
掴まれた胸倉で息が詰まる、というより、彼女の涙に胸が詰まって…、
与一「あの…こういう場合、どうしたらいいですか?」と、巴さんの黒髪に訊いてみた。
強い…そう信じて疑わなかった女性が、今こうして泣いている。
弱い…そう感じているにも関わらず、能子さんは、あれ以来、泣かない。
壇ノ浦で、沈む平家の女たちを見て“代わりに”死なせろ…すがって泣いた。あれ以来、涙を、俺には見せない。分かっている。源氏の俺の前で泣けない事くらい、分かっていた。
巴「…馬鹿ね。こういう時…黙って、抱けばいいのよ」
与一「はい…」背中に手を回し、両手で包み込むように、優しく抱き締めた。
意外に華奢で、心、か細い。彼女はこんなにも弱いんだ、と分かった。
誰が、彼女を強いと判断したんだ?そんな噂を流した奴を恨んだ。だが、そういう人の噂話を真に受けたのは自分だ。だから、申し訳なく、義仲さんにも「すみません」小さく謝った。
小耳に挟んだ事や噂、腕っ節の強さだけで、人の心の強さを判断していた自分を恥じた。
“見えない事を言い訳に、彼女の心も見えません…とでもいうのか?”
俺は、彼女の心を分かっていない…見ようとしていないんだ。
“青いな…”
未熟な心が、彼女の本音から目を背けさせていた。
池田さんに見透かされた心が、あまりに未熟で…悔しくて、自然と力が籠もって、グッと強く抱き締めたら、パッと、突き放された。
巴「スッとしたわ」ケロッとして、パッと素早く涙を拭いた。
与一「あ…」っけに取られて「お払い箱ですか…」ちょっと残念。
巴「そうそう借りるもんじゃないわ」フンと鼻をかんだ。
与一「そうそう貸すもんじゃないって事ですか?」涙に濡れた着物を手で触れた。
随分泣いたな、と。
巴「アンタ、フリーでしょ」女の扱いが不器用で「それじゃ…ダ、」
与一「いえ」
巴「メ…よ?」だって、さっき…、
与一「結婚しました」
その言葉にカッと来て、巴「ハッ!」もう一発ッ!殴って、
同時に、身をヒョイと後ろに引いて、与一「打たれる理由にはなりません」ビンタを避けた。
巴「その目で、よく避けられたわね」


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