ひつじ草の挑戦状

色んな思いを綴ってます。

…つい、とは?

2011-08-10 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
志津「へぇ…あの兄貴がぁ?」意外だね、という顔を向けたから、
能子「あ…」源氏の兄と勘違いされた。その…「別の…、兄です」と誤魔化したら、
志津「なんだぁ、平家のお兄さん、かい」
能子「…」キュッと堅く口を結んで、ぎゅっと櫛を握って、志津さんの次の言葉に身構えた。
志津「そんな顔しなさんなって」私の手から、シャッとすばやく櫛を取り、扇形 風に舞い散る薄桜の櫛を見て「雅なお兄さんだね」と優しく頭を撫で、髪を梳いてくれた。
能子「はい、」どちらの兄も優しくて「ありがとうございます」好き…だから、余計に苦しい。
と、突然、ガッ、ガッシャーン(わぁっ!)、豪快な音を立て、
志津「ッ!?」ガラガラ…ッ、何がぶっ壊れるような音が響いた。
能子「継さんの声だわ」すかさず立とうとしたら、
いいよ、いいよ。座ってな…って制され、志津「ったくッ、次、何仕出かしたんだか。ちょっと見てくる」と櫛を彼女に返して「手の掛かるでっかい子供、託(かこ)っちゃったよ」
肩をすくめて、バーンと戸を開けっ放しに「何やってんだいッ」と、部屋から出てしまった。
能子「くすッ」女将さんってお母上みたいで大変だな…と、志津さんの背中を見送ったら、
私の視線の中に池田さんの着替えが入って来た。その上に置かれた懐刀が目に飛び込んで、
そ…っと近づき、手に取った。譲り受けたのか、形見として持っているのか、確かに、資盛の懐刀 袷丸(こうまる)だった。
「池田さんが持っていたんだ…」
袷丸をそっと指で撫でて、鞘で止めた。ゆっくり指を折り曲げ、鞘をグッと握って、す…っと刃を抜いた。そして、刃を立て月の光にかざした。すぅと光を吸い込み、さらに美しい輝きを放って「きれい…」手入れが行き届いている。几帳面で繊細な、あの人の性格が現れている。スッと斜めに構えたら、キラッ、と瞬いた。
そこへ「何やってんだッ!」と大きな声が響き、開けっ放しの戸から勢いよく入って来て、
能子「え…」驚く私を無視して、強引に刀を奪った。
富樫「まさか!?」血相変えて、私を睨んだ。だから、
能子「あ…」誤解された、違うの「刀を見ていただけで。従兄弟(いとこ)のだから。つい…」
富樫「あ、あぁ…そっか、そっか」安堵してと誤解を解いてくれた。それでも誤解の中に不安があるのか、私の手から鞘を引ったくり、キンッ「すまん、つい…」素早く、鞘に収めた。
能子「…つい、とは?」どういう意味…富樫さん?睨んで、目で問い詰めた。
富樫「参ったな」ポン、頭に手を置き「そういうとこ、兄妹だな」ハハッと、はぐらかした。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。