ひつじ草の挑戦状

色んな思いを綴ってます。

散華の如く~読めぬ男よ~

2014-01-24 | 散華の如く~天下出世の蝶~
同年、北近江との同盟のため、
妹のお市を浅井家に嫁がせた。
この時、お市は二十、長政殿は二十二。
お市、美濃平定を待っての婚儀であり、
14,5で嫁ぐ武将の姫君としては遅い。
しかし、是が非でも結びたい和議、婚儀であったために、
殿直々に調度品や諸々費用を工面して回るほどであった。
北近江と手を結ぶことは上洛の道であり、
天下布武に繋がる道であった、それ故に、
市という尾張一の絶世の美女を嫁がせた。
帰蝶「長政殿も、お市がお気に召したそうで…。ほっと胸を撫で下ろしました」
信長「そなたの従兄殿に、礼をせねばなるまいな」
この婚儀の一番の功労者は、あの明智様であった。
その彼は主不在の、ぶらりぶらり、牢人であった。
帰蝶「あちらこちらと定まらず…。これでは娘らが哀れにございます」
信長「ほぉ。その娘が…」
帰蝶「何を、お考えで?」
信長「その娘らに会ってみたいと思うてな」
帰蝶「…。あの、」
あの時の娘…今、四つになったか。
“珠子”
私も会いたいと思ったから、
「御従弟殿に、美濃に戻って頂く事…叶いませぬか?」
こう願い出た時、
不意に父の言葉が過った。
“あの男、分からぬ”
何が分からないのか、
私には分からないが、
信長「あの男…読めぬぞ」
父と同じ事を言った。