しいかのブックトーク

毎月読んだ本や日常の諸々を記録します。

ヴェルレーヌ詩集

2007-09-23 23:48:55 | インポート

Vurure_2  堀口大學  訳    新潮文庫

 なんといっても有名なのが

 『秋の日の ヴィオロンの ためいきの 身にしみて 
  ひたぶるに うら悲し。  
  鐘のおとに 胸ふたぎ  色かへて  涙ぐむ 

 過ぎし日の おもひでや。  げにわれは うらぶれて こゝかしこ 
 さだめなく とび散らふ 落ち葉かな。』

 これは、上田敏『海潮音』にある有名な名訳。

 すばらしい訳で、胸にぐぐっとせまるものがあります。

 けれど、堀口氏の訳はこうです。

『秋風の ヴィオロンの 節ながき 啜り泣き もの憂きかなしみに

わがこころ 傷つくる。

時の鐘 鳴りも出れば せつなくも胸せまり 思いぞ出づる 来し方に 涙は湧く

落ち葉ならぬ 身をばやる われも

かなたこなた 吹きまくれ 逆風よ』

 訳者によって、こんなに違うなんてね。

 この頃の訳し方って、美文調で、とてもゴロがいいのだけれど、翻訳者の個性が強烈に出ている感があります。

 それはともかく、ヴェルレーヌ詩集、初期の「土星の子の詩」から彼の人生の折々に心の内側を反映するような詩の数々、解説と共に読んでいくととても興味深い。

 ランボーとの事件、美少年好き、飲酒、不幸な晩年だけど、詩から湧き立つイメージは、心の叫び、ストレートな言葉で、これが読む人の心を揺さぶるのかなあと思う。