しいかのブックトーク

毎月読んだ本や日常の諸々を記録します。

残虐記

2005-06-24 12:26:30 | こんな本読みました
zangyakuki


桐野夏生/著  新潮社

 新潟の女児監禁事件、これをどうしても連想する内容です。
ヒントは、もちろんそこから出ているはずで、けれど、あくまでもフィクション。

 バレエ教室の帰りに、誘拐されてしまった、10歳の景子。
ケンジという男に、1年1ヶ月閉じ込められて、なぜか「みっちゃん」と呼ばれて暮らすのだが・・・。

 この本のすごいのは、監禁生活よりも、その後に多くページを割いている。
解放後、自分も変わり、両親も変わり、まわりの人々の見る目も変わり、現実感をもてなくなった景子は、性的人間となり、夜の夢を紡いでいく。

 だれもが、「監禁中になにをされたのか」を知りたがり、それについては固く口を閉ざす景子。
この事件がきっかけで、景子は小説家となるのだけれど、書いた小説は、事実なのか、単なる物語なのか。

 ぐんぐん引き込まれて、一気に読んでしまったが、最後がちょっとがっかり、というか疑問が残った。
桐野さんの想像力は、なるほどこんな事件にあったら、こういう展開になるだろうなと、かなり現実的ではあるのだけれど、私の中の望む結末とは、ちょっと違うのだ。
 いやあな気分になる。
ケンジの部屋の描写も、リアルで、不潔感がわさわさと体にまとわりつく。
それだけ、筆力があるのでしょうね。

 大体、この本を手にとる事自体が、監禁事件に興味をもつ証拠であり、桐野さんは、素材から、見事にストーリーを構築している。

 それにしても、小説家になった景子さんは、家を出て、どこへ行ったんでしょうね。

 


最新の画像もっと見る

コメントを投稿