しいかのブックトーク

毎月読んだ本や日常の諸々を記録します。

そうかもしれない

2007-03-03 17:24:38 | こんな本読みました

Soukamo  耕 治人 著    晶文社

 この本の出版は、2007年2月であるが、作品は1986年から1988年に書かれたものである。

 「耕 治人」という名前も、聞いた事ある人の方が少ないだろう。

 1988年、この「そうかもしれない」を書いた後、口腔底ガンで亡くなっている。

 老妻と2人のつつましい暮らし、その老妻は、脳軟化症でもの忘れがひどくなっていく。

 誰にでも訪れる「老い」、決してひとごとでない、そう思うと、とてもせつなくなる。

 淡々と綴られる日常、妻の様子。 

 素晴らしいのは、愚痴や恨み事、泣き事がいっさいなく、妻が呆けたのも、「50年間、自分のためにつくしてくれたからだ」として、感謝の念を持って、看病している姿である。

 知り合った頃の妻のこと、今まで生活を支えてくれたことを思い出しながら、優しい目でみつめている。 

 しみじみとした小説である。


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