この本の出版は、2007年2月であるが、作品は1986年から1988年に書かれたものである。
「耕 治人」という名前も、聞いた事ある人の方が少ないだろう。
1988年、この「そうかもしれない」を書いた後、口腔底ガンで亡くなっている。
老妻と2人のつつましい暮らし、その老妻は、脳軟化症でもの忘れがひどくなっていく。
誰にでも訪れる「老い」、決してひとごとでない、そう思うと、とてもせつなくなる。
淡々と綴られる日常、妻の様子。
素晴らしいのは、愚痴や恨み事、泣き事がいっさいなく、妻が呆けたのも、「50年間、自分のためにつくしてくれたからだ」として、感謝の念を持って、看病している姿である。
知り合った頃の妻のこと、今まで生活を支えてくれたことを思い出しながら、優しい目でみつめている。
しみじみとした小説である。
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