
郵便やさんは、まだかいな。
母が、軒先に出ている。
娘から、毎日絵手紙が届くのである。
試しに、届いた絵手紙を畳の上に並べてみました。
8畳間がいっぱいに埋め尽くされ、次の間もほぼ埋め尽くされました。
ちょっとした言葉から娘の気持ちがくみ取れるのです。
冒頭の絵は、スイス、ドイツとオーストラリアにまたがったボーデン湖です。
湖の上に国境があります。
スイス側から出た遊覧船は、ドイツ側の岸に近づいています。
楽隊が、ダンスミュージックを奏でています。
どの顔も赤く染まっています。夕日だけのせいではないのです。
家族も招待したある会社の粋なはからいです。
きれいな日本人の娘と結婚した男は、満面笑みでした。
どうしてこいつを選んだのとずっと疑問でした。
娘は身ごもっていました。
こちらも「お久しぶりです」と笑みでした。
解らないものです。大和撫子流出です。
ドイツで医者として働いているとのことでした。
そんな邪推も吹き飛ぶほどの国境の落日です。
絵手紙を描くスピードは、段々早くなりました。
あれこれ悩まずになったのが、一番に得たことです。
自分の能力はこんなものと、楽しんでいます。
20枚くらい貯まったら、仲人さんに送っています。
あんたの絵が好きと言われるのです。
本当は、毎日送ってあげたいのです。
そわそわと 軒先の母 郵便や
2015年8月14日