Afternoon Avenue 25 (by hide_boo)

Perfumeと乃木坂46、IZ*ONEなどのアイドルやクルマやバイク、好きなものついて、だらだら綴ります。

ショーン・タンの世界展 / そごう美術館(そごう横浜)

2020-12-11 17:45:36 | Weblog
ショーン・タン。

正直、奇妙な世界を描く絵本作家、という認識しかなく、その作品も扉絵などをネットや新聞広告などでしか見たことがなかったし、その著作を読んだこともなかったレベルでこの展覧会を見に行った。

展覧会で流されていたビハインド動画では、写真のアルバムから言葉が無くても、写真や絵を並べることで、見る側がストーリーを想像することに着目し、セリフやト書きの少ない作品を想像していく。

その絵は非常に精緻で、見たことがあるようで無いような奇妙なのに懐かしさを覚える独特の世界観を作り出している。

彼の描くクリーチャーは一種独特である。人の感情を察することができる、両生類とも爬虫類ともつかない頭の大きなサンショウウオのような生物、タコとヤドカリが合体して、工場の大型のボイラーのような機械の殻をかぶった巨大生物、楓のは葉っぱのような体で、コーヒーカップに寄宿する奇妙で小さな「留学生」等々。

又、物語の舞台となる世界も、巨大な鳥のようなモニュメントが立ち、蒸気船が空を飛ぶサイバーパンクなデザインの都市、巨大なウサギが徘徊し、潜水服のような姿の巨人たちが人を攫いにきたり、それぞれ違う作品の設定でありながら、その世界観は統一されていて、ひとつの映画作品のようだ。

鉛筆やアクリル絵の具、油絵などの原画も展示されていたが、その中で葉っぱのような体の留学生「エリック」が住まいとする食器棚のいろいろな食器や銃器に小さな花が飾られている(植えられている?)「エリックガーデン」という作品があった。

エリック自身は描かれておらず、エリックが自分の楽しみと寄宿していた家主への感謝の気持ちをこめたその庭は、エリックの真っ黒な薄っぺらくて小さな外見からは想像できない、豊かな心の在り方がその戸棚の庭の植物たちに具現化されていて、とても大きなメッセージが隠されているように感じたのだ。まだ「エリック」という作品を読んでもいなかったのに、その1枚の絵に大きな感動を覚えて思わず涙腺が緩んでしまった。

地域の図書館にショーン・タンの絵本が所蔵されていることがわかり、どんどん貸し出し予約を入れている。エリックを読めた時、同じ感動を味わえることができるだろうか、今から楽しみだ。