久しぶりにマイカーについて書く。夏に「クルマのはなし」として以前にもマーチについて書いているのだが、購入してからちょうど1年を経過したこともあり、もう一度現在の愛車を掘り下げてみたいと思う。
一昨年購入したときにはまだ「現行」と言えたのだが、昨年マイナーチェンジがあり、フロントマスクがリニューアルされて早くも前期型と呼ばざるを得なくなった。まあ、中古で買うものの宿命。型遅れを気にしていたら乗ってられないし。
2012年12月に購入したマーチは、色はシャンパーニュゴールド、グレードは12G。走行距離は5000kmちょっと。当時は12Gグレードの出回りが少なく、とにかく掘り出し物がでるまでかなり粘って購入している。現行のマーチはこのグレード以外、後席のバックレストが一体可倒式になってしまい、スペースユーティリティが極端に悪くなる。3人家族である我が家では後席の片方を倒して荷物を詰め込むケースが多いので、買うならこのグレードしかなかったのだ。家族会議でマイカー購入を決めてからも3カ月以上、中古車サイトを毎日検索し続けて、ようやく見つけ出した。すぐに実車をディーラーに見に行ったところ、ボディや内装のキズが非常に少なく、ホイール周りもきれいなまさに掘り出し物で、カーナビもメモリータイプ且つDVD、CD、ワンセグテレビにiPod接続ケーブル付き、オートライト、フルオートエアコン、そしてバックドアモニタを特別につけてもらい、高年式なのに諸経費込で100万円を切った価格にすぐさま飛びついた(笑)。
マーチにこだわったのは、自宅の駐車場が狭く、本来なら軽自動車推奨レベルなのだが、全長4m以下ならなんとか道路にはみださずに止められる為。また接続する道路も幅5m弱と決して広くない為、小回り性能の良さも重要だった。じゃあ軽でいいのにとも思ったが、中古車市場では、軽も普通車コンパクトも価格相場は対して変わらない。もちろん維持費の差は大きいが、ボディ強度はどうしても軽に不安が残る。軽自動車も衝突テストなどでは普通車と変わらない性能に底上げされてきており、ある意味盲信といわれてもしかたないのだが、今まで目撃した交通事故現場での軽自動車の壊れかたがやはり普通車より激しい印象をもっているからだ。
だけど、普通車だからといってそんな大きいサイズは買えない。駐車場の問題もあれば、カミさんも運転することも大きい。買い替えの検討をはじめたとき、候補として、スズキのスイフト、ホンダのフィット、マツダのデミオがマーチの対抗馬となった。「走り」ではスイフト、室内の広さでフィット、デザインでデミオ、運転のしやすさでマーチという評価になり、最後の最後で運転のしやすさという点でマーチを選択したのだ。
色については、正直、ナイトベールパープル(濃紫)かバーニングレッドが希望だったのだが、ゴールドも自宅周辺ではあまりみかけず、ご近所でも同系の色のクルマを見ないので、今はこの色で良かったと思っている。
愛車だからこそ、まずはネガな部分から、書いていく。
機能面ではライバル車がそれぞれ一芸に秀でているのに対して、マーチはすべてが中庸または中庸より少々下回っているという印象。
足回りは、1年間街乗り限定で使ってきた限りにおいてだが、先代マーチよりもしっかりしてはいる。先代はちょっとしたタイトコーナーでは重心がかかる外側の前輪が踏ん張らず、タイヤごと底付きするんじゃないかというくらい、柔らかかった。現行は新興国の荒れた路面で簡単に壊れないよう堅牢性は考えているんだろう。でも、しっかりしているというだけで、スバルのインプレッサに感じたような品質の高い乗り心地をのぞむべくもない。しっかりはしている、でもしなやかさに欠け、つっぱらかっているだけ、みたいな印象がある。まだ高速道路でのロングドライブをする機会がないので、高速走行性能についてはまた後日記すが、ライバルの中でスイフトには大きく離されているだろう。
キャビンやラゲッジスペースは、先代マーチに比べてルーフが水平方向に伸びて、バックドアの角度が立ち上がったことから、後席の頭上空間が広がり、ラゲッジスペースも空間が長方形になったことで荷物の収まりが非常に良くなった。しかし、全長ホイールベースとも上回るフィットはマーチに比べたら広大と云って良い。
デザインは先代マーチがフォルムはフォルクスワーゲン・ビートルに近いものながら、バックドアを丸く、特徴的な形に仕上げ、フロントマスクもカエルっぽいファニーな意匠で、個性があり、デザインで選んだと堂々と云える車だった。それに対して現行はキャビンスペースを少しでも広げようとした結果、凡庸なデザインになってしまい、自動車専門誌各誌でも評価は低い。これに対して、マツダ・デミオはカッコ良い。13スカイアクティブのディーラー試乗と13Cのレンタカーを借りたことがあるのだが、まあ、国産のコンパクトカーの中では一番デザインが良いと思う。以前はプジョーの206がコンパクトカーでは1番とおもっていたが、207で肥大化したのに対して、デミオはダウンサイジングして全高を低くして、スポーティーなデザインになっている。当然、後席はウインドウも小さく、Cピラーが寝ているので、開放感はないのだが、それでも実用性に欠けるというほではないし、ラゲッジも奥行きが結構あって、いままでマーチで詰め込めた量ならまったく問題が無い。
そして品質面。現行マーチが発表された時は、タイ工場製の逆輸入車になったことが話題となった。品質が国内生産であった先代マーチよりも劣るのではないか、そんな懸念があったのは確かで、実際現物を見ると、たとえばホイールハウスの内側やガソリンタンクキャップの内側の仕上げなどは、あきらかに先代のK12マーチよりもコストダウンされていたし、ボディの各部品の見切り線の合わせの精密さに欠けるなど、タイ工場製となった面の影響は出ているように感じた。だが、そのあたりはよく考えるとタイ工場のレベルの問題ではなく、日産の商品企画が「その程度」で良いとしてしまったことの影響が大きい気がしている。価格を下げるためのコストカットが”おざなり”というか、わかりやすすぎるのだ。先代のK12マーチと比べてでさえ、ここをコストカットしてるのだなと素人でもわかってしまう。いまや軽自動車の品質も強烈に上がってきているというのに、普通車クラスのマーチがそれで良いのか、と。
ここまでネガなことを書いておいて、なんでマーチなのか、ということになるのだが、逆に平凡かつ中庸であること、運転席周りがシンプルで先代マーチから乗り換えても、操作に迷いが生じない、細いタイヤのおかげで小回りが利き、駐車場の入れやすい、といった運転のしやすさ、インターフェイスの良さが私やカミさんに合っているのが一番大きな理由だろう。
スイフトはタイヤサイズが太いために、最小回転半径がマーチより50センチ前後大きくなる。ドライバーにとって運転技術が低ければ低いほど、ほんの数センチの長さ、幅の違いは影響が大きい。そこで50センチもの差異は選ぶ理由になる。フィットはマーチよりも全長が20センチ、幅も数センチ大きく、駐車場にはギリギリのサイズ。デミオに比べればデザインが凡庸な分、後席に若干のゆとりがある。走り屋には取るに足らないことが、我が家では非常に重要なファクターになっているのだ。
デザインの面では私の嗜好だが、ヘッドライトやグリル周りが超マイルドなアストンマーチンっぽいところ、またボディサイドドアハンドル部分を丸くもちあげてライトからリヤランプにかけてキャラクターラインを作っている部分など結構好きだったりする。また、フォルムとしてキャビンとエンジンベイ部分の長さのバランスが良く、2ボックス車らしい形が気に入っている。
街乗りでは、アイドリングストップが燃費と静粛性に大きく貢献している。1年間で4リットルのガソリンを節約したし、交差点でエンジンがとまっている時間の静けさは今まで体験したことのないものだった。トランスミッションはCVT。昔、先々代のマーチでCVTを体験したことがあるが、いまやオートマとおなじようなクリープ機能がついて、運転はしやすい。多少、極低速域でギクシャクすることはあるが、普通に操作していれば気になることもない。3気筒1200CCのエンジンは、先代の4気筒1400CCのエンジンと低速トルクに限って言えば、まったく遜色ない力強さがあり、エンジンのダウンサイジングも成功しているように思う。もちろん排気量が違うので高速道路での余裕については、また確認してみたいが、追い越し加速150km/h近く出すというのでなければ、十分なパワーを持っている。
それから、装備面ではカーテンエアバッグやオートライト(コンライト)、欲しかった外気温表示、フルオートエアコンがつき、カーナビもテレビ、iPod対応、DVD+CD(MP3対応)、SDカードオーディオ対応ともはや後付けで欲しいのは、フォグランプくらいで、丼でいえば全部載せ状態だ。昔はカーナビやオーディオなど後付けを一生懸命付けていたが、まあこれだけついて、100万円もしないのだから、十分お買い得なクルマだ。
足周りに物言いをつけるとなると、まあ、ベーシックカーという性格からそんなに高いダンパーなどは使えないのだろうが、フロントだけでもスタビライザーを入れてほしかった。軽量化の言い訳もあるだろうし、シャシーをシンプルに設計し、ダンパーの取り付けもシンプルにして、しっかり組みつけて強度は出ているという諸誌の解説もあったが、そんなに重量物ではないロッドを追加するだけで、フロントのしっかり感がでるのであれば、スタビは欲しい。先代も軽量化を言い訳に初期モデルはつけなかったが、結局、マイナーチェンジで追加されている。
内装はアイボリー基調で非常に明るく、家族にも好評だ。ただ先代マーチに比べて、運転席まわりにトレイの類がまったくなくなってしまい、コインや携帯置き場がなくなってしまった。センターコンソールに置けばいいというのもあるし、コインについては車上荒らし防止ということもあるかもしれないが、先代にあったものがなくなってしまうというのは、やっぱり改悪と言わざるを得ない。
実用燃費はエアコンをいつもフルに利用し、ほとんど高速に乗ることなく、市街地買い物クルマとして利用しているので、購入して1年間の平均燃費は11.3km/Lほど。距離が伸びていないため、マーチ本来の実力を出せるケースになっていないのは確かで、JC08基準で22.6km/Lの諸元であり、本来は15km/L前後まで伸びるポテンシャルは持っている。先代マーチが1400とはいえ、コンパクトカーなのに10km/Lに届いていなかったことを考えれば、確実に燃費は伸びているので、エコ買い換えにはなっている。同じ使い方で、ガソリンスタンドに行くスパンが確実に広がっているのは結構家計に貢献している。
バッテリーはアイドリングストップ対応の大きいサイズを積んでいるが、距離が伸びない我が家の使い方では早くも電圧低下の危機に陥っている。普段使っていなくても、電子機器の待機電力で使用されているのは家電と一緒らしい。ときどきアイドリングストップオフで、ドライブしてやる必要がありそうだ。
おそらく今後5年から10年は確実に付き合っていく相棒なので、綺麗に大事に使ってやりたい。あんまり金はかけられないが、カミさんの財布のヒモがゆるくなる車検時にバッテリーやボディコーティングはメンテしてやりたいと思う。マーチよよろしく。
蛇足ながら、、、、
クルマというのは、つくづく買った時のライフスタイルを如実に体現している。趣味でクルマを買える方々はともかく、生活に必要な1台を買う身にとっては、その時の環境、収入、家族構成等々がもろにくる。独身のとき、バイクツーリングとスノーボード三昧だったころは、インプレッサスポーツワゴン。結婚してすぐのときは、趣味と生活を両立させようと、フォレスター。子供ができて、カミさんが運転するようになると、ダウンサイジングしてマーチになり、家を買って駐車場が狭いが為にまたマーチになった。
駐車スペースは狭いながら、庭が無い分もう1台止められるので、軽自動車で趣味クルマもいいかもしれない。ホンダS660やコペンの新型、ついこの間出たハスラーなんかも、ミニFJみたいで面白い。でも、まだまだマーチをすべて分かったわけではないので、高速道路や山岳路に連れ出して、そのポテンシャルを測ってみたい。