中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

産業医はコストか

2013年04月25日 | 情報
先日の当ブログにおいても、安衛法違反で強制捜査の事案を紹介しました。繰り返しますと、

大阪労働局は2日午前、従業員ら17人が胆管がんを発症しうち8人が死亡した大阪市の印刷会社
「SANYO(サンヨー)―CYP(シーワィピー)」について、
労働安全衛生法違反(事業者の安全衛生措置義務違反など)の疑いで家宅捜索を始めた(朝日新聞 4月2日(火))。

しかし、本命の有機溶剤の取り扱いではなく、(1)定期健康診断結果の報告をしていない
(2)衛生管理者や産業医、安全管理者を置いていない
(3)衛生委員会もなく、作業リーダーの「職長教育」もしていない――など、の理由での強制捜査でした。
なぜなら、91~03年当時、ジクロロメタンは厚労省規則で測定や発生源対策が求められていましたが、
1、2ジクロロプロパンは規制されていませんでしたし、胆管癌の発生原因が1、2ジクロロプロパンであることは、
まだ特定できていないからです。

(1)定期健康診断結果の報告をしていない
(2)衛生管理者や産業医、安全管理者を置いていない
(3)衛生委員会もなく、作業リーダーの「職長教育」もしていない――など、の理由での強制捜査は、普通ないですよね。
同様な企業・組織は、たくさんあるのが現状ですから。

特に産業医は、安衛法で、常時50人以上の労働者を使用する事業場では、産業医を選任しなければならない(法13条)となっています。
こんなことは、皆さん百も承知なのですが、なかなか実行しません。
なぜなら、産業医を委嘱すると、地域差や企業規模、委嘱内容で大きな差がありますが、
最低でも年間100万円は必要でしょう。

中小企業にとって、乾いた雑巾をさらに絞って経営のスリム化をしているのが実情なのに、
さらに100万円のコスト削減なんて考えられないでしょう。
また、100万円のコストアップなんて受け入れらないし、倒産の危機さえ考えなければなりません。
そこで、できれば、「小規模事業場のための産業医共同選任助成金」を復活してもらいたいですね。
一昨年、民主党の事業仕訳作業で、廃止になった助成金です。

いくら法令で規定されていても、「産業医」の報酬は、企業努力で解決できないコストなのですから。


コメント
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