◆ちゃんとしゃべれ!治納由気(はるなゆき)◆

変な日本語、敬語もどき、崩れていく日本語、そして、正しい日本語とハムスター。

「儲からなさそうな業界」って?

2010-09-26 08:58:50 | 気になる言葉、具体例
                                    どや顔だよ
 経済がテーマの番組で、画面にでかでかと「儲からなさそうな業界」と出て、さ入れが定着してきたなぁと思っていたら、司会者も「儲からなさそうな業界」、テロップも「儲からなさそうな業界」、しかも、番組内でこれが何度も何度も繰り返されました。さ入れに気づいていないというより、これが正しいと思っていて、わざわざこれで統一しているようなのです。あのね、「儲からなそうな業界」が正しいのですよ。
 そういうふうに見えるということを表す様態の助動詞「そうだ」は、活用語の連用形と、形容詞・形容動詞・助動詞「たい」「ない」の語幹(変化しない部分)に付きます。例えば、「食べる」の連用形「食べ」+「そうだ」で「食べ・そうだ」。「食べない」は、「食べる」の未然形「食べ」+打消の助動詞「ない」で「食べ・ない」、「ない」の変化しない部分の「な」に「そうだ」が付いて「食べ・な・そうだ」。「さ」は入りません。
 「おいしくない」の「ない」は形容詞で、助動詞である「食べない」の「ない」とは違います。「おいしくはない」と言いますが、「食べはない」とは言いませんね。「おいしくない」の「ない」は「ない」なのですよ。「ない」の語幹+「そうだ」で「な・そうだ」ですが、語幹が1文字と短いので「さ」が入って「なさそうだ」となり、それがそのまま「おいしく」の後に続いて「おいしくなさそうだ」となります。
 いってみれば例外的に「さ」が入るのであって、普通は「さ」は入らないというわけです。食べなそうだ、知らなそうだ、行かなそうだ、飛ばなそうだ、言わなそうだ、聞かなそうだ、儲からなそうだ、です。
 ところで、「これる」と「こられる」はどうですか? 会社のコンピューターで「歩いてこれる」と入力すると、誤りだと警告する波線が下に付くのですが、「これる」は「くる」の可能の形として辞書に載っており、ら抜きではありません。でも、ほかの人がこの波線を見れば・・・ら抜きだと思うでしょうね。┐(´д`)г
 今日の気になるワードは「自宅を放火」です。少し前にも紹介したのですが、この記事を書いている最中に「報ステ」の市川さんが「自宅を放火し」と言ったので。「放火」は「火を放つ」ですから「自宅を放火し」だと「自宅を火を放ち」となり、誤りであることがはっきりしますね。正しくは「自宅に放火し」です。市川さん、頑張ってよぉ。
コメント
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