熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

映画:「戦争と平和(1956年版)」

2023年08月13日 | 映画
   ウクライナ戦争の最中、何となくロシアの戦争に関心を持って、トルストイの「戦争と平和」の映画1956年版を、NHKBSPで録画していたので見た。
   1967年の映画「戦争と平和 」もあるようだが、私が映画館やTVで観たのは、オードリー・ヘップバーンのナターシャやヘンリー・フォンダのピエールが登場する1956年版である。
   特に、壮大なロシアとナポレオンの戦争シーンは強烈な印象が残っていて、今日のウクライナ戦争という暴挙に、何故、プーチンがのめり込んでしまったのか、考えさせられるのである。

   トルストイの大作「戦争と平和」は、大学時代に人並みに読もうとしてチャレンジしたのだが、読み通せなかったという記憶がある。
   映画の概要を纏めるのも何なので、ウィキペデイアの説明をそのまま引用させて貰うと、
   19世紀前半のナポレオン戦争の時代を舞台に、アウステルリッツの戦いや、ボロディノの戦いを経てモスクワを制圧するもフランス軍が退却に追い込まれたロシア遠征[などの歴史的背景を精緻に描写しながら、1805年から1813年にかけてあるロシア貴族の3つの一族(ボルコンスキー公爵家、ベズーホフ伯爵家、ロストフ伯爵家)の興亡を中心に描き、ピエール・ベズーホフとナターシャの恋と新しい時代への目覚めを点描しながら綴った群像小説である。

   恋に目覚め始めたロストフ伯爵の令嬢ナターシャが、クトゥーゾフ将軍の副官であるアンドレイ・ボルコンスキーに初恋に落ち、従軍中に、ドンファンで節操のないナトリーと駆け落ち騒動を起すなど幼くて激しい恋を経て、ピエール・ベズーホフとのハッピーエンドの余韻を残して終るだが、オードリー・ヘップバーンのナターシャの初々しい恋の遍歴がサブメインテーマで、その妖精のように清楚な美しさが鮮烈なインパクトで魅了する。
   ピエールは、トルストイの分身と見られ、没落していくロシア貴族から、大地の上で強く生き続けるロシアの農民の生き様への傾倒へと続くピエールの魂の遍歴は、トルストイの心の動きの反映とも言われるのだが、この映画では、思想や世相などはフリーで、そこまで踏み込んではいない。、しかし、フォンダは、やはり希有な名優で、実に感動的にピエールを演じている。
   この映画で、興味深いのは、当時のロシア貴族の豪華絢爛たる豊かな生活を克明に描いていて、国民の殆どが極貧の農奴生活で呻吟していたことを思うと、ロシアの文化文明度の高さを認めて良いのかどうか、むしろ疑問に思っていて、ヨーロッパ文化の仮の単なる模倣移転であって、ロシアの歴史の闇を感じた。

   1812年、ナポレオンがロシアに侵攻し、フランス軍とクトゥーゾフ将軍率いるロシア軍とのボロジノの激しい戦争シーンは圧巻である。
   フランス軍がモスクワに迫り、クトゥーゾフは、モスクワを死守するか、退却するかの決断を迫られる。戦っても勝ち目がなく国土を疲弊させて征服されるだけなので、将軍たちの作戦会議での反対を押し切って、クトゥーゾフはモスクワを放棄することを決意する。モスクワの市民たちは先を争って避難を開始した。フランス軍がモスクワ入城後、市内は略奪の限りを尽くして暴徒の街と化す。クトゥーゾフはナポレオンの降伏勧告を無視し続けて、市街が放火から大火に見舞われて、フランス軍の士気が乱れ、ナポレオンの焦燥と危機感は増すばかりで、ついにナポレオンは何の成果を得ることなくモスクワからの退却を決断する。ナポレオン撤退の報せを受けたクトゥーゾフは、神にひれ伏して感謝。退却するナポレオン軍を追って、ロシア軍は反撃を開始する。
   ナポレオン軍は、冬将軍の訪れとともに寒さと飢えに耐えきれず、執拗なロシア軍の追撃に雪崩をうって敗走する。
   このスケールの大きな退却シーンの凄さは特筆もので、特に、ロシア軍の爆撃を受けて狭い橋を逃げ惑うフランス兵の惨劇の凄まじさは、息を飲む。

   冬将軍に窮地に追い詰められたフランス軍の阿鼻叫喚とも言うべき想像を絶する死の退却行軍の厳しさが、いかばかりであったか、
   常軌を逸したリーダーに導かれた国民の悲惨さを思えば胸が潰れるが、いまだに、性懲りもなく、ウクライナ戦争など、この文明世界で繰り返されているこの悲劇。
   冬将軍の助けにすべてを掛けたクトゥーゾフ将軍の叡智の片鱗でも、今のロシアのリーダーにあれば、
   と思っている。
   私がロシア語で、一番最初に覚えたのは、「ウミレニエ」、
   「自然は美しい、素晴しい」という感動や畏敬の念を表す言葉だと、うろ覚えだが記憶にあって、これがロシア人の国民性だと知って感動したのを覚えている。
   
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