熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

イギリスの公的医療制度NHSが危機的状況

2024年07月02日 | 政治・経済・社会
   昨夜、NHKの国際報道2024で、「公的医療制度とインフレ 英国が直面する課題」を放送した。
   7月4日に行われる総選挙で、最大野党・労働党の政権交代が広く予想されている。その選挙における大きな争点となっているのが、「機能不全に陥っている」とも指摘される公的医療制度、そしてインフレに伴う生活苦への経済対策だ。与野党双方が争点の改善を訴える今回の選挙を通じて、イギリス社会が直面する深刻な課題を伝えている。

   特に深刻なのは、NHS(国民健康サービス)が崩壊寸前だということである。
   子供のころに「ゆりかごから墓場まで」というキャッチフレーズで、福祉国家の見本としてイギリスが称揚されていて羨ましく思ったのを思い出す。
   その一環ともいうべき、「診療・治療・原則無料」というNHSが、財政難で危機に瀕しているという。
   現在、治療を待つ人は750万人で、待つ時間は、平均3か月半だというから、機能不全である。
   財政難による保守党の緊縮財政で、予算・人員の不足、それに二けたのインフレが続いて医師たちの生活がひっ迫してストライキが頻発、待遇の良い国外に去る医療関係者も多くて、公共医療制度は崩壊寸前である。
   若い医師が、「夜勤で300人の患者を一人で担当したが、時給は14ポンド(2800円)だ」と語っており、政府は何もしないので医療の質がどんどん落ちているというのである。


   選挙前の党首討論で、両党首とも改善を公約しているが、財政の裏打ちがないので、から手形だということのようである。
   なぜ、イギリスの経済がかくまで悪化したのか、
後先を考えずに突っ走ったBrexit と保守党の無為無策なのであろうが、考えられないような没落である。


   さて、私も5年間ロンドンに住んでいたので、イギリスの医療サービスのお世話になった。
   しかし、高度な保険からいろいろな私的な健康保険があって、
   我々海外駐在員は、このようなNHSの公的保険には関わりなく、民間の医療保険に加入していたので、至れり尽くせりの医療サービスを受けることができて、問題はなかった。

   このイギリスの例と同じことをブラジルで経験している。
   一般のブラジル人は無料の公的保険に頼っていたので、何か月も待たされていたが、金持ちは私的保険で十分な医療サービスを享受していた。
   アメリカの医療制度は、最悪だが、
   外国では、完備した高価な民間の医療保険に加入するのが必須であって、病気もすべて金次第という世界である。
   アメリカ留学の時は、会社の制度もいい加減で医療費負担ということだったが、入学時に、ペンシルベニア大学医学病院で面倒を見るという通知を受けていたので、まあいいかということで、とにかく、保険を気にせず2年間過ごした。
   若くて元気だったので、家族ともども無事に過ごせたのであろう。

   ところで、イギリスもフランスも、敗北覚悟で選挙に出た。
   自由な民主主義の守り手として天下の御旗を振り続けてきたエスタブリッシュメントに失望した国民は、ドラスティックな変化を求めて動き始めた。
   アメリカの動きは危機的様相を呈していて、民主主義を叩き潰そうという勢いである。
   ガラガラポン、行きつくところまで行って、歴史の軸心を変革しなければならない、ということであろうか。
コメント
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