熟年の文化徒然雑記帳

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トランプよりバイデン、米国経済にとってどちらがよいか議論の余地なし There’s No Debating Who Would Be Better for the US Economy

2024年07月09日 | 政治・経済・社会時事評論
プロジェクト・シンジケートのジョセフ・E・スティグリッツ教授の論文There’s No Debating Who Would Be Better for the US Economy
   先に、「ノーベル賞受賞の経済学者16人がトランプ再選に警鐘」で、
「われわれは多様な経済政策の細部についてそれぞれ異なる見解を持っているが、バイデン氏の経済議題がトランプ氏よりはるかに優れているということに全員が同意する」と発表したのと同趣旨だが、採録する。

   トランプが富裕層への減税、新たなインフレ圧力の導入、COVID-19パンデミックへの対応ミスを行った後、バイデンは悪い状況を最大限に活用し、最終的に米国経済をはるかに強固な基盤に置いた。米国の有権者が経済の将来を気にしているなら、11月の選択は明らかで、トランプなら悪化でバイデンの方がはるかに良い。というのである。

   バイデンとトランプの討論会では、候補者の性格や個人的な強みに関する有権者の判断は重要だが、誰もが有名な格言「経済だ、バカ “It’s the economy, stupid.”」を覚えておくべきである。多くの展開は前任者によって開始されているから、大統領の経済運営を評価するのは常に難しい仕事である。オバマ前大統領は、前政権が金融規制緩和を進め、2008年秋に勃発した危機を阻止できなかったため、深刻な不況に対処しなければならなかった。経済がようやく回復に向かったころには、オバマは退任し、トランプが就任した。
   トランプが新型コロナの責任を問われることはないが、米国の死者数が他の先進国をはるかに上回る事態を招いた不適切な対応については、トランプに責任がある。ウイルスは多くの高齢者の命のみならず、労働力に打撃を与え、その損失がバイデンが引き継いだ労働力不足とインフレの一因となった。


   バイデン自身の経済実績は素晴らしい。就任直後に米国救済計画の成立を確保し、これにより米国のパンデミックからの回復は他のどの先進国よりも強力になった。その後、超党派インフラ法が成立し、半世紀に渡る放置の後、米国経済の重要な要素の修復を開始するための資金が提供された。
   翌年、バイデンは2022年CHIPSおよび科学法に署名し、経済の将来の回復力と競争力を確保する産業政策の新時代を開始した。そして、2022年インフレ削減法により、米国はついに国際社会に加わり、気候変動と戦い、未来の技術に投資した。アメリカ救済計画は、頑固で進化し続けるウイルスの可能性に対する経済的保険を提供しただけでなく、1年の間に子供の貧困率をほぼ半減させた。その後のインフレの原因にもなったといわれるが、アメリカ救済計画による過剰な総需要はなく、責任の大部分は、パンデミックと戦争によって引き起こされた供給側の中断と需要の変化にある。

   今回の選挙にさらに関係があるのは、将来に何が起こるかである。慎重な経済モデル化により、トランプの提案は、成長率の低下にもかかわらず、インフレ率の上昇と格差の拡大を引き起こすことが分かった。
   まず、トランプは関税を引き上げ、そのコストは主に米国の消費者に転嫁される。さらに、トランプは移民を制限し、労働市場が逼迫し、一部の部門で労働力不足のリスクが高まる。そして、財政赤字が拡大し、その影響で、心配するFRBが金利を引き上げ、住宅投資が減少し、家賃と住宅費がさらに上昇する可能性がある。もちろん、これらの影響をモデル化するのはかなり複雑である。関税によって引き起こされたインフレにFRBがどれだけ迅速かつ強力に対応するかは不明だが、経済学者たちは明らかに問題が起こることを予見している。彼らは早期に金利を引き上げることで、問題を未然に防ごうとするであ ろうか?
   トランプはその後、FRB議長を解任しようとすることで制度規範に違反するだろうか?市場は(国内外を問わず)この新たな不確実性と混乱の時代にどう反応するだろうか?

   長期的な予測はより明確で、しかも悪化している。近年のアメリカの経済的成功の多くは、確固たる科学的基盤に支えられた技術力によるものだが、トランプは引き続き大学を攻撃し、研究開発費の大幅な削減を要求している。前任期中にこうした削減が行われなかった唯一の理由は、彼が党の支持を完全に得ていなかったからだが、しかし、今は支持を得ている。
   同様に、米国の人口は高齢化しているが、トランプは移民の制限によって労働力の減少を容認するだろう。
   したがって、トランプとバイデン(または彼が離脱した場合に代わる民主党員)のどちらが経済にとって良いかという問題に関しては、議論の余地はまったくない。

   以上が、スティグリッツ教授の結論だが、非常に明確である。
   しかし、経済は生き物であるので、もしトラが実現して、トランプ経済が始動しても、すぐにアメリカ経済が悪化するとは限らず、確たる思想も哲学もない行き当たりばったりのトランプであるから、後先考えずに、ドラスティックな政策転換も考え得るので、何がどうなるか分からない。
   現状では、米中の深刻な対立や戦争経済下の東西の分断などで、国際経済は縮小し弱体化の危機に直面しているので、アメリカ経済の躓きはそれほど大きな影響はないであろう。それに、たとえ、アメリカ経済が衰退に向かっても、世界経済の発展成長は止められそうにない。
   もしトラなら、民主主義に背を向けて叩き潰そうとしているトランピズムの更なる台頭が国際秩序を攪乱し、二度の大戦を経て営々と築き上げられてきた西欧型の先進民主主義が退潮に向かう方が恐ろしいと思う。

   私は、トランプの第二次政権はないと思っている。
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