熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

映画「ロミオとジュリエット」1996年版

2023年11月07日 | 映画
   レオナルド・ディカプリオ主演の1996年に製作されたアメリカ映画「ロミオとジュリエット」、
   時代設定を現代に置き換えて、モンタギュー家とキャピュレット家両家の争いをマフィア同士の抗争に変換。したがって、舞台はイタリアのヴェローナではなく、アメリカナイズされた架空の都市ヴェローナ・ビーチで、冒頭から、派手なアロハシャツを着たイカレポンチスタイルの若者たちが、高層ビルの谷間で、街を巻き込む銃撃戦を展開する。
   しかし、台詞は、シェイクスピアの戯曲をそのまま使っているようで、流れるような抑揚の効いたシェイクスピア節が心地よく、ダイナミックで畳みかけうようなスピーディな舞台展開に呼応して心地よい。
   時代背景を忠実になぞったフランコ・ゼフィレッリ監督演出のオリビア・ハッセーの旧版と比べれば、印象は違ってくる。この作品があまりにも、シェイクスピアの意図した舞台に近いような感じで、それに、何回か、戯曲の舞台を観ていてシェイクスピアの「ロミオとジュリエット」の舞台のイメージが刷込まれているので、このディカプリオ版には、違和感があった。 
   尤も、オペラの世界でも、舞台の時代を現在に置き換えたバージョンが結構多い、例えば、「リゴレット」をニューヨークのマフィアの世界にした現代版なども観たが、他にも、結構新旧入り交じった舞台を観ているが、それなりに面白かったが、オリジナルのストーリーからイメージが乖離して戸惑ったことの方が多い。
   このディカプリオ版は、何回か観ているのだが、冒頭から馴染めず、バルコニーの場くらいで止めて切り上げていた。今回は、アクロイドのシェイクスピア伝を読んだ所為もあり、思い切って最後まで観たのだが、きめ細かい演出や画像処理にも惹きつけられて結構面白かった。
   一途に恋に突っ走る二人の恋人ロミオのレオナルド・ディカプリオとジュリエットのクレア・デインズの清新な演技が素晴しかった。

   シェイクスピアの戯曲は、ほぼ次の通り。
   14世紀のイタリアの都市ヴェローナ。名門のモンタギュー家とキャピュレット家は代々対立抗争に明け暮れている。
   モンタギュー家の一人息子ロミオは、友人達とキャピュレット家のパーティに忍び込んで、キャピュレット家の一人娘ジュリエットに出会い、互いに一目惚れで恋におちる。二人は修道院に行き、修道僧ロレンスの導きで秘かに結婚式を挙げる。ロレンスは二人の結婚が、両家の争いに終止符を打つきっかけになればと期待する。
   喜び勇んで帰ってきたロミオは、両家の若者たちの街頭での争いに巻き込まれる。運悪く、親友・マキューシオを殺されたことに逆上して、キャピュレット夫人の甥ティボルトを殺してしまう。このことからヴェローナの大公エスカラスは、ロミオを追放の罪に処する。一方、キャピュレットは悲しみにくれるジュリエットに、大公の親戚のパリスと結婚する事を命じる。
   切羽詰まったジュリエットがロレンスに助けを懇願すると、僅かな望みだとして、仮死の毒を使った計略を立てる。しかし、この計画を、追放されていたロミオに伝えるべく便りを送ったが届かず、ジュリエットが死んだと思ったロミオは、彼女の墓参りに来たパリスと決闘し殺してしまい、そして彼女の墓の側で毒薬を飲んで自殺する。その直後に仮死状態から目覚めたジュリエットは、ロミオの死を知って短剣で自殺する。真相を知ったが後の祭り、二人の死に悲嘆に暮れる両家は、ついに和解する。
   
    最後のロレンスのはかりごとから二人の死までのシーンは、舞台とは違った映画の特権、テンポの速い劇的なサスペンス・タッチの行き詰まるような舞台展開で、非常に面白い。
    口頭でジュリエットの死(仮死)を知らされて、決死の覚悟でヴェローナへと車でダッシュした瞬間後に、ロレンスの手紙が到着する間一髪の不運、
    死の床でジュリエットが仮死状態から解放されて動き始めたにもかかわらず、脇目を振らずに一途に死を決行するロミオは気付かず毒薬を煽り、瀕死の状態でジュリエットに対すが絶命、

    一目惚れで恋に落ち、ひたむきに求め合う、全く他の入り込む余地のない一途な純愛、
    絶頂期の幸せの境地であるはずが、冒頭から死の予感が色濃く滲み出た悲劇であるからこそ美しくて感動的、

    意中の人がいながら色香に迷って8歳年上のアンを身ごもらせて結婚を強いられた、色恋に弱かったというシェイクスピアが、どうして、このような純愛物語を描けたのか、
    「ロミオとジュリエット」を観る度に、不思議に思っている。
    
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