大統領選挙があったのは、11月5日、それ程時を待たずに、トランプの当選が決まった。
私は、6日に、ニューヨークタイムズとワシントンポストの電子版の速報を見ていて、その日の早い午後に、激戦州、すなわち、スイング・ステート( swing state )の速報値がトランプ優勢を示し始めたので、トランプの勝利を確信した。
案の定、すぐに、トランプの勝利宣言が発表された。
私は、これまで、トランプ批判をこのブログで書き続けてきており、徹頭徹尾反トランプ派であり、結果にはいたく失望しており残念である。
トランプは、アメリカ憲法の精神を無視し、民主主義をたたき潰そうとしており、その暴挙が許せない。
ペンシルベニア大学のキャンパスには、独立宣言を起草しアメリカの建国の父と仰がれている、同大学の創立者でもあるベンジャミン・フランクリンの銅像が立っている。
私もそうだったが、同大学のウォートン・スクールに通っていた同窓のトランプも、このフランクリン像を仰ぎ見ながら勉強していたはずである。イーロン・マスクもそうである。
なぜ、フランクリンの建国精神と民主主義を理解できないのか、悲しい限りである。
トリプルレッドを勝ち得て、殆ど白紙委任状を得た独裁者のトランプが、アメリカのみならず世界に君臨して、今後4年間の政治経済社会の舵取りを担う。
どうなるか、既に発表されている閣僚など政府の主要メンバーを見ても、その常軌を逸した布陣にも批判が出始めていて、先が思いやられる。
メディアでは、トランプ政権に対して、激しい論戦が繰り広げられていて、辛口の評論などが多いのだが、いずれにしろ、アメリカの民主主義社会が選択した結論である。
政権スタート直前から、大混乱が予想され、如何なる形でトランプアメリカが動き出すのか、全く予断を許さない。
しかし、例えば、イーロン・マスクの「政府効率化省(DOGE)」の主導など、どんなに強烈なダイナマイトが炸裂して行政を危機に陥れるか、脅威を禁じ得ない。
また、輸入品に高率関税を課せば、自由貿易を阻害して国際市場を縮小し、ひいてはアメリカ企業の革新意欲を削ぎ、生産性や国際競争力の低下を来して経済を弱体化させて、「MAGA」に逆行するのは必定である。
ハリス民主党政権が実現していても、アメリカも世界も、殆ど変化のない状態が続いて大きな期待はできなかったであろう。
エスタブリッシュメントや学歴の高い市民たちに取っては、民主主義や人権、大統領の資質や人格などは大切かもしれないが、多くの一般的なアメリカ人には日々の生活の方が大切であって、とにかく、膠着状態で不満足なこの社会を変えてくれるであろうトランプを選択した。
したがって、保守反動であろうと極端な自国優先主義的なポピュリスト政治であろうと、格差の異常な高まりや温暖化など機能不全に陥って資本主義が窮地に立つなど、二極化が極に達して、アメリカ社会が危機状態にあり、既成秩序を刷新するためには、巨大なカンフル注射が必要な時期に来ていたのである。
トランプの当初の目論見は、膠着状態のエスタブリッシュメント支配のアメリカに風穴を開けることであった。
トランプ新政権は、スタートから大激震を引き起こして、アメリカのみならず世界中を大混乱に陥れるかもしれない。
しかし、私自身は、新たな強烈なインパクトを与えない限り、既存の社会の大変革は不可能であるから、方向性とパワーは未知数だが、トランプ政治が、この役割を果たしてくれるのではないかと言う淡い期待をし始めている。
アメリカや世界の政治経済社会、そしてグローバル秩序の創造的破壊の実現である。
尤も、そのためには、アメリカの良心、英知や良識が、カウンターベイリング・パワーとして作用して、チェック&バランスとして働き、新しい価値あるイノベィティブな世界を生み出すという高いハードルをクリアーする必要がある。
ドラッカーが、会社の経営のみならず、政府や学校や教会などであろうと、どんな組織の運営であろうとマネジメント理論は有効であると言って逝った。
トランプもイーロン・マスクも常軌を逸した経営者だが、彼らの経営哲学が有効かどうかは分からないが、祈るべくは、利益効率優先ではなく、公共価値重視を第一義としたマネジメントに軸足を移すことを期待したい。
アメリカ社会、そして、アメリカの民主主義が生きるか死ぬか、アメリカの良心、アメリカ人の英知と良識にかかっている。