熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

ウクライナ紛争:ドンバスの悲劇

2022年02月21日 | 政治・経済・社会
   国際情勢の最大の関心事は、ウクライナ問題、ロシアが何時ウクライナに侵攻するか。
   その戦争の導火線となると考えられるのが、ウクライナ東部のドネツク,ルガンスク両州のロシアの実質的な支配地域、
   しかし、私が関心があるのは、子供の頃に学んだ、この両州とドネプロペトロフスクの3州,およびロシアのロストフ州にまたがるドネツ大炭田地帯に立地するソ連時代の大工業地帯であったドンバスのことで、ここがどうなっているのかと言うことである。
   

   Britannicaを引用すると、ドンバスは、
   ・・・石炭以外に天然ガス,水銀,岩塩,耐火煉瓦用粘土,石灰岩などの資源がある。ドンバスはまた,旧ソ連有数の工業地帯として知られていた。 1870年代より鉄冶金業が発達しはじめ,第1次世界大戦前はロシアの銑鉄の4分の3を生産していた。革命後,さらに重工業地帯として発展し,第2次世界大戦の戦災にもかかわらず復旧,その後の発達は著しかった。現在,ウクライナの鉄鋼業,重機械工業の中心地で,コークス製造による副製品と岩塩をもとに化学工業,セメント工業もあり,近年工業の一面的な発展を是正するため,食品工業や軽工業も導入されている。ドネツク,ルガンスク,ゴルロフカ,マケエフカ,クラマトルスクなど多数の都市が集中する都市集合地域であり,鉄道路線密度の高さはウクライナ第1である。
   このウクライナの生命線とも言うべき産業の中心をロシアが抑えている。

   ところが、このドンバスだが、在日ウクライナ大使館のHPの「ウクライナに対するロシアの武力侵攻について、10の知っておくべき事実」には、
   現時点では、ロシアはウクライナのクリミア自治共和国(26, 081平方km)、セヴァストポリ市(864平方km)、ドネツクとルガンスクの一部地域(16799平方km)の合計43744平方km、つまりウクライナ領土の7.2%を違法に占領している。
   ドンバスの経済は完全に崩壊した。ドンバスの主要工業施設の設備は解体され、ロシアの領土に輸送された。浸水した鉱山の状況は環境災害を脅かす。ロシア当局は、脅威の評価や状況改善を模索しようとする専門家達のアクセスを許可していない。
   ウクライナ東部のウクライナ国境およびロシア国境にまたがる409.7kmの区間はウクライナ政府の支配が及ばない。
   と記されていて、ウクライナ経済の柱であったはずのドンバスの経済、すなわち産業が、ロシアによって完全に破壊されて崩壊したと言うのである。
   
   これまで、ソ連なりロシアが行ってきた旧ソ連圏や東欧諸国の工業資産や施設の収奪破壊は凄まじいと言われており、第二次世界大戦終結後の占領下の東ドイツからは、工業施設は勿論、鉄道の線路から枕木まで剥がしてソ連に持ち帰ったということであり、科学技術や工業化が進んでいたチェコなどの収奪も酷かったという。
   昔、これとは違うが、ソ連兵が、満州で捕虜になった日本兵の腕時計を取り上げて、腕に時計を何個もつけていたという話を聞いたことがある。

   さて、問題のウクライナであるが、ソ連の軍需産業の拠点でもあったが、ヨーロッパのパン籠(the breadbasket of Europe)と言われるほど恵まれた穀倉地帯を持った農業大国であり、本来なら、最も資源などに恵まれた経済大国であっても不思議はなかったはずである。
   ところが、そのウクライナの経済状態は、今や惨憺たる状態である。
   詳細は省略するが、Wikipediaの英語版から借用して示すIMFなどの下記の表で十分に示されているであろう。
   旧ソ連の他の国家と比べて、GDPベースで、経済成長が殆ど停止状態であり、また、世界的にも最貧国の域を出ておらず、人口は異常に減少している。(世界地図の青い部分はウクライナより豊かな国で、オレンジ色は、それより貧しい国であり、最貧国であることが明瞭である。)
   ソ連の軛から一刻も早く脱出して、EUに即刻加盟して、経済を建て直したいという国民の願いは痛いほど良く分かる。
   
   
   
   

   ところで、問題のロシアだが、
   ロシアのGDPは、アメリカの14分の1,中国の10分の1、日本の3分の1で、桁外れに経済力は弱体である。
   これまでにも、ロシアの経済については、ロシア紀行でも触れたし何度も論じてきたが、ソ連の崩壊以降、壊滅的な状態に陥り、その後プーチン以降も、石油や天然ガスの輸出で経済を維持し、めぼしい工業化や産業の近代化を推進してこなかったので、国際競争力は非常に低く、ロシア経済は惨憺たる状態である。
   軍事大国であることは間違いなかろうが、経済力が国力の根幹なら、ロシアは最早張り子の虎である。

   中国がどう動くか、予測は難しい、
   それに、ロシアには、暴走を抑える国民パワーの炸裂は全く期待出来ない、
   しかし、ロシアが、アメリカとEU相手に戦いを挑むのなら、今度は、クリミアとは事情が全く異なっているので、その帰趨はハッキリと見えている。
   米欧日などの自由主義先進国の空前絶後の厳しい経済制裁の実施で、経済的に孤立すれば、自立能力を欠いたロシアの経済の命運は、火を見るより明らかであろう。
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