熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

映画:「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」

2024年08月12日 | 映画
   NHK BSで録画していた「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」を見た。
   人気のあるアニメの作品とは知らず、ルーヴル美術館が舞台らしいと興味を感じて録画していたのである。
   案の定、現実と幻想、リアルとヴァーチャルの世界が錯綜した異次元の物語で、辻褄の合ったアナログ形式のストーリーでない作品には馴染みが薄い私にとっては、納得するのに時間がかかった。

   ウィキペディアを参考にして、私なりに理解した筋はこんなところであろうか。
   アニメ作家の露伴(高橋一生)は、美術オークションで、フランスの画家モリス・ルグランの黒い絵に興味を抱き、その絵を落札するが、その絵の裏にはフランス語でモリス・ルグランによる「これはルーヴルで見た黒。後悔」という言葉が書かれていた。 
    黒い絵と言えば、露伴は青年期に出会った祖母が運営する下宿に暮らしていた奈々瀬(木村文乃)を思い出した。露伴の描く漫画に興味を示した彼女をモデルとして漫画に描くが、その絵を見た奈々瀬は突然取り乱して漫画を切り裂き去ってゆく。彼女は、露伴に「この世で最も黒く、邪悪な絵」「最も黒い絵」がルーヴル美術館にあると示唆していた。露伴は、その絵を見るため同美術館へ取材に行く決意をする。
   ルーヴルを訪ねた露伴は、問題の絵である日本の画家・山村仁左右衛門(高橋一生)の作品が、Z-13倉庫にあることを突き止めて、東洋美術のキュレーター・辰巳隆之介(安藤政信)、消防士たちを伴う条件で絵の見学を許可される。そこで、ヨハネス・フェルメールの作とみられる絵画を発見する。辰巳はその絵を贋作と断言するが、真作であると見抜いた露伴は、辰巳らに抱いていた不信感とともに、青年期に祖母宅に絵を引き取りに来たフランス人男性の記憶を思い出し、彼や辰巳、消防士らが美術館の所蔵品をモリスが描いた贋作にすりかえる犯罪グループであると判断する。露伴は辰巳らと格闘する最中に、倉庫奥にある仁左右衛門の絵 の怨念が奇怪事件を起こして、関係者はすべて次々と幻覚を見て怯え、銃撃や火災などの怪異現象によって死亡してゆく。 彼らの見る幻覚と怪異がそれぞれの「後悔」や血縁者の罪に基づくものだったのである。   倉庫の火災でその絵も消失する。
   帰国した露伴は、 湖畔の奈々瀬と仁左右衛門夫妻の墓を見つけ出し、そこで奈々瀬の霊に会って、江戸時代に生きていた夫妻の悲劇を知る。
   仁左衛門は、愛妻の黒髪の美を再現する絵に執着していた。奈々瀬が神社の御神木から黒の樹液を発見し、理想の画材を得たと仁左右衛門は喜ぶ。神聖な木を傷つけたと告発され、捕縛されようとする夫をかばった奈々瀬は役人たちに打ち据えられて死亡し、逆上した彼が絶筆として、恨みを込めて描いた妻の肖像が呪われた黒い絵であった。絵の呪いを解くため、自分の子孫にあたる露伴を巻き込んでしまったと奈々瀬は詫びて微笑んで彼の前から消える。

   話としては面白いが、有り得ない奇想天外なストーリー展開で、岸部露伴シリーズを知っておれば、もっと楽しく見れたのであろう。
   私が興味を感じたのは、画家に巧妙に贋作を作成させて、フェルメールの絵のように、その贋作を真作とすり替えてルーブルの収蔵品として収めるという詐欺グループの存在である。そんなに簡単にできるとは思えないが、どこかの公立美術館の贋作事件を思えば、面白い発想である。
   あの「モナ・リザ」さえ、イタリア人に盗まれたことがあるのだから、何でもありであろう。

   この映画でもう一つ面白かったのは、モリスの作品の額縁の絵の裏に真作を埋め込んでおいて、オークションで安く落札して本物を手にする手法である。
   この映画の冒頭で、フランスの画家モリス・ルグランによる黒い絵を落札するが、競売相手だった男らに絵を強奪される。その時、このカラクリを知っていた犯人は額縁を開いて中身を見るが、本物の収蔵はなく、黒い顔料の塊だけで失望する。尤も、この映画の重要なテーマである、その絵の裏にはフランス語でモリス・ルグランによる「これはルーヴルで見た黒。後悔」という言葉が表れるという、粋な導入部ではある。 

   戦争で最大の戦利品は、絵画や高価な芸術美術品、
   ヒトラーとスターリンのその争奪戦は凄まじかった。

   さて、最近のルーヴルの状況だが、モナ・リザの展示は随分変わっていて今昔の感である。 
   最初に見たのは1973年だが、個室に簡単な額縁に収められていて、前に2メートル弱の綱が張られているだけであった。確かに、見る客も殆どいなくて寂しいくらいであった。
   
コメント
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