熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

英国の政変:問題は経済だ

2024年07月08日 | 政治・経済・社会
   英総選挙の全議席が確定して、 労働党412議席で圧勝 保守党は121議席で大幅な後退である。投票率は59・9%で、01年総選挙に次ぐ第二次世界大戦後2番目の低さで、当初から労働党の圧勝が見込まれたことや、国民の政治不信が背景にあるとみられるという。

   大統領選挙で、ビル・クリントンが、「It's the economy, stupid! (経済こそが問題なのだ、愚か者!)」とブッシュを揶揄したように、今回の英国選挙は、すべからく国民生活を窮地に追い詰めた経済が問題であった。

   詳しく分析する余裕がないので、大和総研の「英国民の生活危機は去ったのか?  」を引用させてもらって問題を論じたい。
   インフレの現状について論じているが、国民生活の窮乏について、
英国FCA(金融行動監視機構)の報告書によれば、英国民の8割弱の人々は生活費高騰に対してなんらかの対応を取っていると回答しており、日々の消費の節約・先送り、省エネによる節約を行っていると回答した人は全体の半数を上回る。しかし、それでも3割弱の人が生活費の高騰に財政的に対処できていないという。
さらに興味深い内容として、物価高騰が人々のメンタルヘルスにも悪影響を及ぼしていることにも触れられている。物価高騰に対しストレス・不安を感じている人は全体の4割超おり、さらに「お金の心配で眠れない」「メンタルヘルスに悪影響が出ている」と回答した人は、それぞれおよそ2割に上る。英国では長期疾病を理由とした労働市場からの退出者が増加しているが、物価高騰による生活苦を背景としたメンタルヘルスの悪化が、人々の労働参加に影響している可能性が示唆される。
こうした報告書の内容を踏まえると、これまでの物価高騰による英国経済への悪影響は想定以上に長引くかもしれない。インフレ率は今後も低下し、統計上は実質賃金の増加傾向は続くと見込まれるが、人々の気持ちが前向きにならない中では、個人消費の本格的な回復は期待し難い。

    先日、NHKの英国の国民医療制度の崩壊危機報道について触れたが、大規模な鉄道ストも起こっているのだが、この大和総研の報道だけでも、一般英国市民の経済状態の窮状悪化ぶりは明白であろう。
   まさに、(経済こそが問題なのだ、愚か者!)」であって、こんな状態では、政変は必定である。

   私が、英国経済というよりも、英国国家そのものが、危機的な状態になっていて、政治経済社会全体が機能不全に陥っていた時代、サッチャー政権への移行時期、をよく知っている。
   ゆりかごから墓場までの福祉政策を推進していたはずの労働党政権の失政で、まさに、国家体制崩壊の危機に瀕していたのである。

   私の経験だが、ヒースロー空港の通関では、殆ど間違いなくスーツケースが全部開けられて中身を盗まれるのは毎度のことであった。
   シティでは、ストでごみ収集をやらないので、ごみが金融街に舞って散乱しており、ロンドン全体が戦後のような混乱状態であった。
   労働組合の横暴サボタージュは極に達していて、
   たとえば、自宅の塀の補修を依頼すれば、仕事引き延ばしのために、職人が1日にごく少数のレンガを積んだだけで帰って翌日に回して、2~3日で終わる作業が、延々と1か月以上掛る状態で、こんな現象が全英に蔓延していて、国家はマヒ寸前。
   踊り出たサッチャーが、業を煮やして蛮勇をふるって、労働組合を叩き潰して政治経済社会改革を実施し、
   その後、次から次へと荒業を遂行して、ビッグバンへ突き進んでいった。

   私が、ロンドンを含めて、ヨーロッパに在住して、イギリスの国情を具に見ていたのは、1979年から1993年、
   マーガレット・サッチャーとジョン・メージャーの保守党時代である。
   したがって、英国社会の混乱から金融ビッグバンでのシティの活況への道程は、ベルリンの壁とソ連の崩壊、そして、歴史の終わりともいうべき民主主義のグローバルベースでの大変革などとともに、ロンドンで体験している。
   弱肉強食の競争優位の市場原理主義を強行して資本主義を軌道修正したサッチャリズムやレーガノミクスには功罪あい半ば、批判も多いが、英国にとっては、必然の道程だったのであろう。
   その後、トニー・ブレア政権に移って、やや、左旋回して中道左派の国家体制に移るのだが、ブレクジットで危機に直面する。

   賢い筈のイギリスが、信じられないような愚かな道に陥る。
   今回の総選挙は、奇しくも、このケースであろうか。
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