熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

日本の風神とヨーロッパのアイオロス

2020年07月30日 | 展覧会・展示会
   原田マハの「風神雷神」を読んだ後、東西の絵画の関係で、何かの記事がないかと思って、平山郁夫と高階秀爾の「世界の中の日本絵画」を開いてみた。
   現れたのは、口絵写真のページである。
   しかし、風神を描いた東西の繪が併記されているだけで、他の繪と同様に、同じようなテーマを主題にした繪の説明程度の叙述である。
   日本の繪は、宗達の「風神雷神図」だが、ヨーロッパの繪は、15世紀後半のリベラーレ・ダ・ヴェローナのシエナのミサ聖歌集の「風神アイオロス」である。
   Oの字の中にアイオロスを描いた絵で、隆々とした筋肉を緊張させながら勢いよく海上の船の上を走っている風神は、頬を膨らませて風を吹き出している。
   アイオロスは、ホメーロスの叙事詩『オデュッセイア』出てくるのだが、さまざまな風を袋につめ,時季にかなった風を送る神で、西風を吹いてオデュッセウスを帰国させようとしたという。
   
   

   私が、一番印象に残っている風神の繪は、サンドロ・ボッティチェッリの「ヴィーナスの誕生」に描かれている絵である。
   この「ヴィーナスの誕生」の絵を見たのは、1973年クリスマス休暇の時に、フィレンツェのウフィツィ美術館に行ったときで、横に並んでいた「プリマヴェーラ 春」と共に、その美しさ凄さに圧倒された。
   左上の中空から頬を膨らませて、ヴィーナスの乗った貝の舟を吹いている姿が、妙に印象に残っているのだが、
   水中から誕生して、貝殻のうえに立つ女神ヴィーナスに風を送っているこの風神は、アイオロスかと思っていたら、霊的情熱の象徴であるゼピュロス(西風)で、岸へと吹き寄せているのだという。
   この絵では、風を吹くと言うよりは、花を吹き散らして、ヴィーナスの誕生を荘厳しているような感じであるのが面白い。
   
   

   私にとっては、どっちでもよいことで、いずれにしろ、西欧の風神は、ギリシャ神話の世界の神で、非常に人間くさいキャラクターで、親しみが湧く。
   日本の風神は、千手観音の眷属で、怨霊神として図像化されてきたという。
   ところが、宗達の風神は、忿怒尊としてしての恐ろしさは薄れ、諧謔味をおびた姿で描かれていて、顔の表情は怒っているのか笑っているのか判別しがたく、たるんだ腹に臍も滑稽。
   しかし、緊密な構図、のびのびとした描線、金地に施した墨と銀泥によるたらしこみの効果などこの作品の構成要素の総てが動かしがたい完成度を示している。と言う。
   
   
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