熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

SEBR:2036年に、日本が、世界第五位の経済国に凋落

2021年12月30日 | 政治・経済・社会
   毎朝送られてくるBloombergニュースで、「来年は100兆ドル突破へ」というコラムで、
   世界経済は2022年に初めて100兆ドル(約1京1440兆円)規模を超えると、英シンクタンクの経済ビジネス・リサーチ・センター(CEBR)は予想している。従来予想より2年前倒しでの大台突破となる。CEBRは毎年恒例の「世界経済リーグ・テーブル」で、日本経済は2033年にドイツに追い抜かれるとの見方も示した。
   と記されていたのだが、最後の部分が気になった。

   早速、CEBRの「WORLD ECONOMIC LEAGUE TABLE 2022」を開いて、Japanの項目を見ると、バブル崩壊後のデフレ経済に呻吟する失われた30年の日本のお馴染みの分析の最後に、次の説明がなされていた。
   Beyond the pandemic, Cebr expects Japanese growth to lag behind other developed economies.
Annual GDP growth is set to average 1.2% between 2022 and 2026 and just 0.5% between 2027 and 2036. This slowdown is set to induce a fall in the World Economic League Table rankings. Japan is expected to be the world’s fifth largest economy by 2036, being overtaken by India and Germany.
   CEBRは、パンデミック後の日本経済の年率成長率を、2022~2026年は1.2%、2027~2036年は0.5%と見込んでおり、他の先進国経済より成長率が劣っているので、2036年には、インドとドイツに抜かれて、「世界経済リーグ・テーブル」で第5位に凋落すると予測している。と言うのである。

   失われた30年の日本のGDPの推移については、graphotochart.comとユアFXの表をインターネットから借用して表示すると、
   
   
   世銀の資料からのドルベースと、円ベースの日本の名目GDPの推移だと思うのだが、いずれにしろ、これまでの30年間、日本経済は鳴かず飛ばずで、殆ど経済成長から見放されてきたのが良く分かる。

   私が、海外で仕事を始めたのは、1974年にウォートン・スクールを出てからで、直ぐブラジルに赴任し、帰国した1979年に文革後の中国を訪れ、その後海外業務を担当し、アジア各地や中近東や北米などの仕事に出張ベースで参画し、続いて、ヨーロッパに移り、ベルリンの壁崩壊とソ連の陥落を具にロンドンで観察し、中国の台頭とICT革命への胎動を見据えながら日本に帰った。
   何を言いたいかというと、この1970年代から1980年代の日本の躍進が如何に凄かったかと言うことで、
   エズラ・ヴォーゲルが、1979年に"Japan as Number One"を著わして以降、日本経済が飛ぶ鳥を落とす勢いで成長発展を遂げ、アメリカが日本に凌駕されるのを本当に恐れて、MITに日本分析を命じざるを得なかったほどで、Japan as Number Oneは、既定路線のような勢いであった。
   この時代に、私自身は、ヨーロッパにいて、弱肉強食の自由主義経済が沸騰するビッグバン最中の、怒濤のように激動するグローバルビジネス環境下で、沢山の日本人ビジネス戦士と共に、欧米人達と切った張ったの激烈な戦いを繰り広げていた。

   1979年に訪れたときの中国の貧しさ悲惨さは筆舌に尽くしがたく、東南アジアは、香港やシンガポールはともかく、非常に遅れた貧しい発展途上国の域を出ず、中近東は未開発状態であったし、とにかく、日本も経済社会状況はまだまだの状態ではあったが、1980年代の日本は、向かう敵なく、我が世の春を謳歌して光り輝いていた。
   ところが、何がどうなったのか、日本はバブル経済が一気に崩壊して、不況のどん底に突き落とされて、それが、30年も継続し、いまだに、デフレ経済から脱却できずに経済の低成長を託っている。
   この失われた30年の間に、貧しくて未開発状態であった中国や東南アジアの成長と発展には目を見張るものがあって、牛歩や亀どころが、一歩も前に進めなかった日本を尻目に、どんどん近代化して変貌を遂げて、今や、日本を凌駕しつつある。
   更に、失われた40数年後に、成長から見放されたJapan as Number Oneであった日本が、第5位に転落すると言う。半世紀近くも経済大国として存続し続けたのだから、かっての日本が如何に凄かったのかと言う変な慰めにはなっても、悲痛以外の何ものでもない。
   
   この30年間に、日本人全体が、一度でも、明治維新や終戦直後の復興期のように、高度な理想とビジョンを掲げて、天下国家の命運を賭けて、日本の政治経済社会の未来像をを見据えて論じてきたであろうか。
   高邁な理想と哲学を掲げて、確固たる日本の未来像を国民に示して、日本の政治をリードした為政者や政治家が、果たしていたであろうか。30年間も経済成長を策し得ずに、国力の極端な疲弊を惹起したにも拘わらず、一顧だにせずに放置した、国家理念なきリーダーシップの無為無策、無能ぶりは、ここに極まれりである。
   産官学のトライアングルは勿論、総べての上に立つトップ集団の責任も重い。

   今更、渋沢栄一でもないであろうが、この長期に渡る30年の間に、ひとりとして、日本魂に燃えた立派なリーダーを排出し得なかったと言う信じられないような日本の悲劇は、まだまだ尾を引きそうで悲しい。
   大谷翔平や藤井聡太や羽生結弦と言った卓越した若者がいるのに!
   いくら深刻な「先進国の罠」に陥ったとしても、今までの日本の歴史を顧みれば、30年もあれば、どんなにまかり間違っても、真面なリーダーが一人くらいは出て、経済再生を策するチャンスは、必ずあったはずなのに!!
   日本人魂の凋落と日本の前世紀の教育の不毛を感じて、実に寂しい。
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1 コメント

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2022年末に (えぼし)
2022-12-26 12:05:07
今年も終わりに近づくにつれ、去年読んで感銘を受けてブックマークしたこの記事を読み直しました。
今年は7月に安倍元首相が暗殺されて、政界がカルト宗教に汚染されていたこと、東京五輪の失敗、メディアが批判機能を失っていたことが明るみに出て、なぜ日本が30年間も停滞したかの答えが出たように思います。
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