熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

米国の政治:少数派が多数派を支配

2023年12月17日 | 政治・経済・社会
   スティグリッツ教授の「プログレッシブ キャピタリズム」を読んでいて、気になったのは、米国は、多数派が少数派に支配されている政治経済社会であると言う記述である。常識的には、多数派の横暴を阻止し、数的弱者の少数派の権利や生存を無視することなく大切にするのが民主主義の建前だと思っていたので意外だったのである。
   しかし、よく考えてみれば、米国のみならず世界全体が、少数者に支配されていると言うことが歴然としているのに気付いた。
   例えば、国連の常任理事国の拒否権、欧州議会の全会一致によるハンガリーの反逆、そして、プーチンなどの専制主義的為政者等々枚挙にいとまがない。

   この本は、トランプ政権時代に著されたので、徹頭徹尾トラン糾弾、トランプ批判に徹していて凄まじいのだが、経済学の専門書なので、表立って、トランプがクレームしたり反論していないようなのが面白い。

   アメリカの政治が時代に追い付けず、行き詰ってしまっているのみならず、少数派から多数派を守るために設計された制度が機能しなくなった。いまや少数派が権力を手に入れ、それを使って支配を続けようとしている。問題は、この少数派ばかりがルールを作成している点にあり、その少数派とは、超富裕層、宗教的保守派、不満を抱く労働者階級の寄せ合集めでありながら、経済的政策は主に超富裕層が決めており、必ずしも3者の利害が一致しないのだが、超富裕層は、集団の利益を図るために、危険な保護主義を主張したり、貧困者の妊娠中絶を妨害したりする。
   これらの酷さに加えて、もっと深刻なのは、意識の問題で、彼らの運動によって惹起した、例えば、公的機関に対する攻撃、良い社会を実現してゆくために必要な考え方の変化、所得や資産の格差の拡大に伴う価値観や信念の違いの拡大、多様な社会を機能させるために必要な信頼の喪失などの問題である。と言う。

   スティグリッツは、崩壊しつつある市民社会を再生するために、これらの問題を詳細に論じているが、特に、ゆがんだ価値観が、ゆがんだ経済やゆがんだ政治を生み出し、ますます悪化中で、金融産業に蔓延していたモラル崩壊が、ほかの産業にも広がり、もはや、反倫理の手本とも言うべき人間を大統領に選ぶほどモラルを失ってしまった。とまで言う。
   より高い価値観とは、知識や真実、民主主義や法の支配、自由で民主的な制度や知識機関を尊重する価値観であり、それらがなければ、過去250年にわたる進歩をこれからも維持してゆくことはできない。と説く。
   利己主義で行き当たりばったりで、哲学も思想もなければ高邁な理想もない、嘘八百の指導者には、この高い価値観の片鱗も見いだせなかった。
   この怪物が、次期大統領の呼び声が高いという。アメリカは何処へ行くのであろうか。

   トランプやプーチンのように、根っからのトラブルメーカーが居る。善と悪の闘いの中で、残念ながら一時的に悪辣な指導者によって社会が多大の損害を被ることがある。だが、少なくともこれまでは、大多数の良識が最終的に勝利を収めてきた。と言う。
   一抹の救いである。

   さて、ウクライナ戦争はプーチンの戦争であり、イスラエル・ハマス戦争はネタニヤフの戦争である。
   まさに、一握りの権力者が、戦場をハイジャックして、世界中を恐怖に陥れている。
   それを制止しえず囃しさえしている国民の不甲斐なさ、毎日、断末魔のような地獄絵を見ていて、80億の人類が何の手の施しようがないのが悲しい。
   アメリカの民主主義は、国内のみならず、国際舞台においても、地に落ちてしまった。
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