熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

帝国の崩壊は突発的に起こってきた

2016年03月28日 | 政治・経済・社会
   ジョン・キャスティの「Xイベント」を読んでいて、再び、日本財政の異常な債務超過が気になってきた。
   「新世界無秩序 グローバリゼーションの崩壊」と言う項で、進化生物学者S・J・グールドとN・エルドリッチの「断続平衡説」を、社会プロセスの領域に拡大したニーアル・ファーガソンのアメリカ経済の崩壊について論じている。
   進化のプロセスはゆっくりと漸進的に起こるのではなく、突発的に起こると言う説で、ローマ帝国が、徐々に没落したのではなく、二世代で崩壊したように、どの帝国も、殆どほぼ一夜にして崖っぷちから転げ落ちたと、歴史上の事例を挙げて、実証しているのである。

   キャスティは、ファーガソンの指摘を引用して、
   帝国の崩壊は事実上一夜にして起こるので、衰退の段階について論じ、今日のアメリカはその変化のどの段階にいるかと考えるのは、いわば時間の無駄。そのうえ、殆どの大国は、最終的には財政運営の失敗とそれに付随する危機によって崩壊する。つまり、収入と支出のギャップが急激に拡大し、帝国は最後にこの債務(もう一つの複雑性ギャップ)を埋める資金を調達できなくなる。として、
   場合によっては、銀行の倒産や小国の国債の格下げのような無害に見えるような金融の蝶が羽ばたいただけでも、パニックに陥った投資家や一般市民が出口に向かって走り始めて、バタフライ効果で、トランプの家は一気に崩れ落ちる恐れがある、と言うのである。

   システムは、「その構成要素がシステムの存続能力に対する信頼を失ったら、大きな混乱に陥るので、「帝国は、いつまでか予測不可能ながら、ある程度の期間は、見かけ上安定した状態で機能するが、しかし、いきなり崩壊する。崩壊が訪れるとしたら、それは瞬く間に起こり、その時には手遅れになっている。と言うことである。

   さて、このファーガソンのオリジナル記事であるフォーリン・アフェアーズの
   ”Complexity and Collapse Empires on the Edge of Chaos By Niall Ferguson”を読んでみた。
   ローマ帝国のみならず、中国の明王朝やフランスのブルボン王朝や大英帝国の突然の凋落についても論じており、最も典型的なのはソ連の崩壊で、
   1985年、ゴルバチョフが共産党第一書記になった当時、ソ連の経済規模はアメリカの60%程度、それも、過大評価で、であったにも拘らず、核兵器保有量はアメリカを凌駕しており、ヴェトナムからニカラグアなどの第三世界への影響力強化に入れ込み過ぎて、結局、彼が政権について5年以内に、東欧共産圏、続いて、ソ連が、崩壊してしまった。レーニンの帝国は、徐々に衰退したのではなくて、他の帝国がそうであったように、崖から崩れ落ちて崩壊したのである。と論じている。
   ソ連の崩壊については、色々言われているが、結局、膨大な軍事支出と第三世界支援による覇権維持のための国家支出が、身の程知らずに肥大化して、国家経済を破綻させてしまったと言うことであろう。

   その記述の直後に、アメリカの国家債務の赤字に言及して、アメリカの崩壊がどの段階にあるのかと言った議論は時間の浪費だとして、 そして、大抵の帝国の崩壊は、財政危機に由来している(Second, most imperial falls are associated with fiscal crises.)と、 どんどん深刻さを増している財政危機に警鐘を鳴らしている。

   このアメリカ経済が、国家債務の増大によって、何時破綻の危機に瀕するのか、突然襲ってくるので(?)、議論するのは、時間の無駄だと言うのなら、GDPの2倍も越えて、もっともっと深刻な状態にある日本は、どうなるのであろうか。

   アベノミクスについては批判もあろうが、金融政策と財政政策と成長戦略がよろしきを得れば経済が前に進んで行くので、多少の明るさは見えてきたことは事実であろうが、如何せん、デフレ経済の脱却には、まだ、道半ばである。
   それに、財政健全化と直間比率のバランスなどの税制改正を意図した数%の消費税増税が、経済の腰折れを招くなど、日本経済の成熟化が、かっての活力と成長を奪ってしまって、先の見通しを暗くしている。
   日本の政治経済社会の、複雑系のバランスの乖離が、どんどん、広がって行き、国家財政の再建が、不可能だとするならば、ファーガソンの説く如く、財政破綻が、突然の国家崩壊を引き起こすのは、時間の問題だと言うことであろうか。

   日本の経済、ことに、国家債務赤字の深刻さは、異常な高さであり、何時、経済危機の予兆となる蝶が羽ばたくかも知れない。
   茹でガエルではなくて、突然死の恐怖が、足音を忍ばせて近づきつつある予感。
   政局のみに汲々として、消費税増税論議に、うつつをぬかしている時ではないと言うことである。

   
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