熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

豪華絢爛妍を競う醍醐の枝垂桜

2007年03月28日 | 花鳥風月・日本の文化風物・日本の旅紀行
   今までに、何度も訪れているのだが、醍醐の桜には巡りあえなかった。
   しかし、とうとう春爛漫と咲き誇る満開の枝垂桜の素晴らしさに始めて出会うことが出来たのである。
   偶然に、一日だけ京都で時間が取れたので、迷うことなく宇治に向かった。
   宇治は私が、京大の一回生の時に一年だけ下宿をした思い出の土地なので、あの頃楽しんでいた平等院横の宇治川の畔を散歩したくて良く出かけるのだが、今回は、六地蔵から昔なかった地下鉄で醍醐まで出かけて、田舎道を三宝院に向かった。
   
   醍醐寺との最初の出会いは、丁度宇治に下宿をしていた頃、自転車で、吉田の学部に行っての帰りに中書島辺りで道を間違って北東に向かったようで、前方に忽然と素晴らしい五重塔が現われ、それが醍醐寺の国宝の五重塔であったのである。
   もう40年も昔になるのだが、あの頃は、宇治の平等院も醍醐寺も、観光シーズンを外せば、訪れる人も少なく閑散としていて寂しいほどであった。
   私はあの辺りの雰囲気が好きで、醍醐寺に行く時には、時間があると、小野小町縁の随心院や平等院の阿弥陀様と兄弟のように良く似た国宝の仏像のある日野の法界寺を一緒に訪れるのだが、今回は、残念ながら三宝院近くを歩いただけで東京に帰えらざるを得なかった。

   秀吉の醍醐の花見は、あまりにも有名だが、その当時の風情はどのようであったのか、文献や歴史資料などから推し量る以外にはなさそうである。
   しかし、今、妍を競って豪華絢爛と咲き乱れている三宝院の桜の豪華さは淡いピンクの枝垂桜で、門をくぐった中庭もそうだが、特に、隣の霊宝館の裏庭の何本かの古木の巨大さとその美しさは格別で、月光を浴びた美しさは如何ならんと想像をかき立てられる。
   この霊宝館では、今、春の特別展が開かれていて、秀吉が詠んだ歌を自筆した醍醐花見短籍が3点展示されている。
   秀忠や利家のモノ等もあるが、秀吉のには松と言う署名がなされていて、かなり達筆で、茶の湯もそうだが、やはり天下人だけあってただの猿で終わっていない。
   どの程度、秀吉の意向かは分からないが、三宝院の豪壮な日本庭園を見ても秀吉の可なり確かな審美眼を感じることが出来る。
   やはり関西人なので、どうしても秀吉ビイキになるのだが、聚楽第や大阪城の遺構などを見ていても、秀吉の残した文化遺産に一つのエポックメイキングな文化の頂点を感じており、そんな目で見ながら秀吉の醍醐の花見を想像していた。

   建物の一室が休憩室になっていて、その部屋からは、この豪華な枝垂桜が一枚の巨大なガラス窓からパノラマのように展望出来、庭園からの風情とはまた違った美しさがあって素晴らしい。
   入り口に、休憩室と書かれた小さなプレートが付いているだけなの奥まった部屋なので、展示場に入った人の大半は知らずに素通りして見ずに出てしまっていた。

   私が、桜鑑賞は関西に限ると思っているのは、東京近辺の桜が殆ど染井吉野で、花は豪華で素晴らしいが、何処も一本調子で面白くないからである。
   上野の森の桜も、千鳥が淵の桜も満開で美しいが、殆ど何処も同じ感じで、殆ど風情が感じられないのである。
   それに、気象庁の桜開花宣言も、染井吉野主体のようだが、桜を十把一絡げにしているようで、誤解を招いているような気がしていてしっくりしない。
   もっとも、阪急沿線の駅頭の桜情報も気象庁に合わせていて、知る人ぞ知る桜情報は、直接、調べる以外に方法はなさそうであるが。

   ところで、京都の桜だが、一挙に咲くことは少ないのだが、桜の種類が多いので、3月のはじめから4月の終わり頃まで、姿や色形の違った桜が何処かで咲き続けていておもしろい。
   京や奈良の里山を歩いていると、人知れず、山桜が咲いて散っていく風情を感じることがあるが、私はそんな桜が好きで、学生の頃、良く春になると田舎を歩いたのだが、そんな所為もあって、桜の下で、宴を張って酒食を楽しむ気持ちはさらさらない。
   三味線程度ならイザ知らず、大音量でカラオケをがなりたてて悦に入っている人々の心境は分からない。
   桜の下で、歌を詠む、秀吉の頃の花見の情景や、浮世絵の花見風景を見ていると、随分、現在の人々の文化度が落ちたものだと思っている。

   しかし、春が来ると、そわそわして、美しい桜花を見たくてあっちこっちを歩いているのだから、桜や紅葉のシーズンには、たまらなく気分が高揚するのは花好きの証拠でもあると言うことである。
   
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