熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

クリス・アンダーソン・・・21世紀の産業革命の行方

2015年11月03日 | イノベーションと経営
   日立の「SOCIAL INNOVATION FORUM 2015」で、3Dロボティックス社のクリス・アンダーソンCEOが、「21世紀の産業革命の行方 ~オープンイノベーションによる、新たな価値創造~」と言う演題で、貴重な講演を行った。
   アンダーソンは、「ロングテール」「フリー」そして「メイカーズ」の著者であり、その透徹したハイセンスのイノベイティブな発想には定評があり、今回は、メイカーズの概念を更に展開して、Wired誌の編集長を辞めて、設立した3Dロボティックス社の立ち上げから、スマート・ドローンの開発について、正に、メイカーズを地で行く興味深い話を語った。

   「ロングテール」「フリー」は積読で、「メイカーズ」だけは読んで、このブログでもブックレビューしているのだが、ここで、アンダーソンが説こうとしているメーカーズと称する製造会社は、第三次産業革命後の、今現在台頭しつある全くコンセプトの違ったメーカーズなのである。
   私のブログを、そのまま引用すると、
   デジタルツールを利用して画面上でデザインして、デスクトップの工作機械でものづくりを行うメイカーズのことで、ウェブ世代のこのメイカーズは、当たり前に自分の作品をオンラインでシェアする。モノづくりのプロセスにウェブ文化のコラボレーションを持ち込むことで、メイカーズは、これまでのDIY(専門業者に任せず自分でものを作る)に見られなかったほどの大きな規模で、一緒になって何かを創り上げて行く。
   すなわち、メイカーズは、DIYムーブメントをオンライン化することで、オープンソースによってパブリックの場でものづくりを行うことで、巨大な規模のネットワーク効果を生み出す、デジタル・マニュファクチュアリングとパーソナル・マニュファクチュアリングが一体となって起こる第三次産業革命ともうべき、メイカーズムーブメントの産業化であって、これが、次代の製造業の大きな潮流となる。と説くのである。

   驚くべきは、バイオテクノロジーは勿論、DNAの操作など生体分野においても、考えることは、何でも3Dプリンターで作成可能になりつつあると言うアンダーソンの指摘である。

   アンダーソンが強調するのは、クリエイティブな人材は、広く世界中に存在するので、すべてのノウハウや技術をオープンにして、そのオープンソースに立脚したプラットフォームにクリエーションを糾合することが大切であり、創造・クリエーションは、社会が作り出すのだと言う経営姿勢である。
   したがって、かっては、カンパニー対カンパニー、プロダクツ対プロダクツ、の競争であったが、現在は、エコシステム対エコシステムの競争であり、この競争に勝つことが必須だと言う。
   いくら革新的魅力的な企業であっても、どんどん有能でクリエイティブな人材は流出して行く、どのようにして、人材を確保し続けて行くのか、これが最も重要な経営戦略となるのであろう。

   現在、3Dロボティックス社では、最高峰とも言うべきドローンを製造しているのだが、家で子供たちと3Dプリンターで、ドローンを作ったのが始まりで、、DIY Dronesというネット上のコミュニティで知り合った無名のメキシコ青年ジョルディ・ムノスに遭遇したのがきっかけで、、航空工学など専門知識など全くなく、起業したと言う事で、メキシコのティファナとアメリカのサンチャゴに工場を建てて製造を始めた。
   今や、軍事的に製造されたドローンよりも、はるかに性能が高くて安価だと言う。
   何故、そうなのか。
   軍事用にプロが作ったものは、使い勝手が悪く、ユーザーが洗練されていないので、ボタン一つで捜査可能なスマホで実現されているような洗練されたクリエイティブな発想ができないからだと言う。

   「メイカーズ」で、アンダーソンが、一般から出資者を募る「クラウドファンディング」の「キックスター」と言うシステムを使って立ち上げたベンチャー企業が、ソニーが新製品のスマートウォッチを販売しようとした時に、先を越して、デザインでもマーケティングでも価格でも、世界最大手のエレクトロニクス企業の上を行く製品を作って勝利した。と紹介しているのだが、
   このように世界中のファンやユーザーやステークホルダーを糾合したオープンイノベーションやオープンソースのビジネスモデルが、エスタブリッシュメントを駆逐するケースは、枚挙に暇なくなってきており、創造性が如何に大切かを物語っており興味深い。

   3DRのHPを開くと、最先端の機種である口絵写真のSMART DRONE SOLO のデモ映像が映し出されるのだが、BUYのところをクリックすると、その価格が、たったの999.95ドル(12万円)だと言うから驚く。
   

   さて、日本企業の第3次産業革命たるメーカーズへの対応だが、3Dプリンターなどハードの活用はどんどん進むであろうが、IOTやインダストリー4.0に対して、どこまで対応できるかであろうが、しかし、日本の企業文化を考えれば、オープンソースへのビジネスモデルやオープンイノベーションへの変革については、後手後手に回って、世界の趨勢から遅れをとるのではなかろうか。

   2009年創立の3D Roboticsが、今や、世界最高峰のドローン・メイカーになった言うイノベーションの加速化と革命的な企業の躍進は、驚異的だが、須らく、オープンソースのマネジメントによる。
   同社のようなオープンソース・ハードウェアのメイカー企業にとって、オープンにすることは、模倣されるリスクを補って余りあるほど、そこから生まれるイノべーションを取り込めるという利点がある。と言っており、果たして、日本企業が、そのような企業文化を構築できるであろうか。
   他の役員には全く知らされずに、一部のトップしか知らないと言う会社法違反だと思えるような技術のブラックボックス経営をして、窮地に陥ったシャープを考えれば、日本企業が、如何に、オープンソースのビジネスモデルに、拒否反応があるかが、よく分かる。

   この日、IDEOのトム・ケリー共同経営者が、「協創のデザイン・シンキング~組織と個人の創造性のマネジメント~」を語って、非常に啓蒙的であった。
   IDEOの創造的デザイン事業についても、このブログで書いてきたが、世界の最先端を行く企業の革新的なアプローチなり、如何に、未来志向で創造性を追及しているのか、垣間見えて勉強になった。
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